うえだ「最初のときは、プレスコのみならず、収録した後に、間を人工的に詰めたり ※4、早送ってみたり、いろいろとセリフ自体にも手が加えられていて、ややこしいことをするんだなって思いました。まさか、ああいう仕上がりになるとは……というところですよね」
矢部「自分のセリフの後に、さらに自分のセリフがかぶってくるというのは画期的ですよね。完成品を観ると、息継ぎがないんですよ(笑)。秋葉原にある東京アニメセンターでは、『ギャグマンガ日和』のアフレコに挑戦できるのですが、いろいろな作品がある中で、難易度が一番上になっていましたね」
内藤「ちゃんとアフレコをやるのは絶対不可能ですからね」
矢部「不可能ですね。初期の作品は特に(笑)」

※4 セリフの間にあるブレス(息継ぎ)の間などを、カットするなどの演出処理のこと。なお、『ギャグマンガ日和』は、アニメ作品としてはまれなことに、大地監督が全話に関しオフライン編集を行っている。


伊藤「私はTVシリーズからの参加なのですが、正直、最初は収録のテンポなどが全然つかめなくて、すごく苦戦したのを覚えています。でも第二弾からは前回の反省点とかを踏まえて……」
矢部「噛んだところとか?」
伊藤「そうなんですよね。第一弾のときに私、たぶんうさみちゃんのナレーションだったと思うのですが、それを本気で噛んだんですよ。本気で噛んだら、それを本気で使っていただいて(笑)」
矢部「あれも画期的ですよね」
伊藤「声優をやっていて、"噛んでいい"というのは初めてだったので、ちょっと戸惑ったのですが、今では楽しくなっています(笑)。実際にマンガを読みながら打ち合わせをするのですが、それについていくのも必死でしたね」
名塚「一発録りだしね」
伊藤「そうそう。一発録って、基本録り直さないよ、みたいな感じで、すごくハードルが高くて、本当に胃が痛かったですね」
矢部「伊藤さんの場合、ナレーションの原稿は当日の直前渡しなんですよ。噛み狙いで(笑)」
伊藤「事前にもらった場合でも目は通さないようにしています。そうじゃないと噛めないので(笑)。噛まないと監督から白い目が……。『お前、何で噛まないんだ』みたいな視線をいただくので、事前には読まないようにしています(笑)」

内藤「僕も第一弾からの参加なのですが、最初の日に演じたのが、芭蕉さんだったんですよ。そのとき僕は風邪をひいていて、けっこう具合が悪い中、芭蕉さんをいきなりやって、すごく大変だった思い出がありますね」
伊藤「すごく個人的な思い出ですね(笑)」
内藤「もちろん、マンガをそのままコピーした台本というのも生まれて初めてだったので、現場に行くまで全然わからなくて、どうなるんだろうと思っていたのですが、(監督の)大地さんも(音響監督の)たなかさんも、キャストの皆さんも、知っている方が多かったので、そのあたりは安心して入れましたね。ただ、キャスト陣、うえださんをはじめ、矢部さんもそうですが、クセ者ぞろいなので、本当にヨーイドンで収録が始めるまでは、誰だがどんな芝居をするのかがまったくわからないんですよ。なので、そこで面食らって、うろたえるということはありましたね。最初はこんなクセ者たちについていけるのかどうかが心配で……」
矢部「内藤君も含めてね(笑)」
内藤「こんな真っ当な内藤玲が、やっていけるのかどうかって思っていました(笑)。ただそれよりも、第二弾があると聞き、またお話をいただいたときが一番緊張したかもしれません」
伊藤「それ、わかります」
内藤「一回目は何とか勢いで乗り切れたんですよ。まさか第二期、第三期と続くとは思っていなかったので、具合の悪い中、とにかく目の前にあることを一所懸命にやって、『何とか終わったよ、やれやれ』って思っていたら、しばらくして『第二弾があります。また松尾芭蕉が出てきます』って(笑)。なので、第二弾のほうが緊張しましたね」

(次ページへ続く)