Symbian Foundationは10月27日と28日、英ロンドンで「Symbian Exchange & Exhibition 2009」を開催した。初日の基調講演では、同Foundationの執行ディレクター Lee Williams氏が登壇し、OSのロードマップやマーケットプレイス戦略について語った。
SEEはこれまで「Smartphone Show」として、Foundatinoの前身である英Symbianが毎年秋に開催してきたイベントだ。Symbianは2008年にフィンランドNokiaにより買収、その後非営利団体となった。今年は、Symbian Foundationとして開催する初めてのイベントとなった。
Williams氏はまず、参加者に向かって、オープンソース化とFoundationの設立/ガバナンスモデルにより、これまでとはまったくエコシステムとなることを強調する。Symbian時代はOSライセンスで収益を上げてきたが、Symbian Foundationは現在、参加企業とともにプラットフォーム技術をオープンソースにするという180度の方向転換を進めている。
「10 - 11年の作業の成果である40万 - 50万行のコードをオープンにする」とWilliams氏。かつてない規模のオープンソースプロジェクトだと続ける。
Foundationの参加企業は165社。すでに、16のパッケージ(コードのコンポーネント)をEPL(Eclipse Public License)で公開した。最も新しいものは、22日に公開したOSのカーネル技術であるマイクロカーネルだ。「高度でパワフルなマルチタスキングカーネルで、Symbian OSの宝石」とWilliams氏。完全にオープンソースのディストリビューションとするために、予定より早く貴重な資産を公開したという。
Symbian Foundationは「Symbian 2」のリリースを完了させており、同リリースを搭載した最初の端末は2010年前半に登場を見込んでいる。次期版「Symbian 3」は現在、キットを提供中でコードは公開している。Symbian 3のリリースは2010年第1四半期、この期間にSymbian 4のキットも公開する計画だ。Williams氏はこの日、Symbian 3とSymbian 4で計画している機能強化について説明した。
Symbian 3とSymbian 4では合わせて466もの新機能を盛り込む。さまざまな部分でプラットフォームを改良するが、中でもUIとグラフィックス、SNSとの連携は大きなフォーカス分野となる。
UIはSymbian 2でも大きく改善しているがこれを継続し、NokiaのクロスプラットフォームUI開発ツール「Qt」のUIフレームワーク機能を統合していく。タッチ、スクロールなどインプットメカニズムを改善し、クリック数を削減する。ビジュアル効果ではミスティング、ゴースティングなどに対応するという。これらの最新機能を中央のフレームワークに統合し、グラフィックライブラリレベルで対応することで、Web Runtime、Python、JVM、ネイティブアプリケーションで活用できるという。一部はすでにSymbian 3でコードを公開しているという。
SNSでは、APIレベルでシステムにアクセスできる「Social API」の開発を進めている。現在、各種ソーシャルアプリはスタンダロンアプリケーションとして別々にやりとりしている状態だが、Social APIにより、APIコールでシステムとつながっている他のアプリケーションにもアクセスできる。マッシュアップやウィジェット、コンタクトデータベースやカレンダーシステムと連携可能となり、エクスペリエンスが大きく改善する。「Facebookなどのソーシャルアプリが単にモバイルで利用できる、という現在の状態とは大きく異なる」とWilliams氏。Social APIは、Symbian 3で一部実装し、Symbian 4では包括的に盛り込まれる予定という。
Willams氏はまた、短距離無線通信規格のNFC(Near Field Communication)機能の対応にも触れた。日本のおサイフケータイなどで利用されている「FeliCa」の上位規格となるものだ。チケットゲート、ポスター、スピーカー、車などに組み込まれたタグにタッチして通信するもので、「モバイルが現実世界とインタラクトする方法をまったく新しいものに変える。ライフスタイルツールとしての携帯電話を一歩進めるものとなる」とWilliams氏は述べる。
Foundationとしてオープンソースモデルを進めていくことになった現在、プラットフォームの進化は参加企業の貢献に依存することになる。Williams氏は、「Symbianは最も高度なモバイルOS」とし、これをさらに前進させるために参加企業に貢献を呼びかけた。Foundationでは企業や開発者がいくつかのレベルで参加や貢献ができるようにしており、同日、新しい取り組みとして「Idea Stream」を発表した。専用サイトで、モバイルプラットフォームに求める機能などのアイディアを募り、他のメンバーがフィードバックをするというものだ。自由にアイディアを提出したり、コラボレーションできるようにする狙いだ。