2008年11月7日に大阪市内で行われた資本・業務提携の会見で握手する大坪社長と佐野社長

パナソニックは、三洋電機の株式の公開買い付け(TOB)を、11月5日から開始する。

両社は、2008年11月7日に三洋電機の子会社化に関する資本・業務提携を発表していたが、米国や中国などの海外の独占禁止法当局の審査が長引き、TOB実施までに1年を要したことになる。

買い付け期間は、12月7日までの22営業日以内で、買い付け価格は普通株式1株につき131円。買い付け金額は4,022億9,900万円で、三洋電機の主要株主であるゴールドマン・サックスグループのオーシャンズ・ホールディングス、三井住友銀行、大和SMBCの子会社であるエボリューション・インベストメンツの金融3社が優先株式の応募を決定しており、50.13%分の取得は確実となっている。

また、今回のTOB開始を前に、米国連邦取引委員会、中国商務部、欧州委員会の指摘を受け、三洋電機は民生用ニッケル水素電池の事業を行っている三洋エナジートワイセルの全株式および、円筒型二酸化マンガンリチウム電池、コイン型二次電池事業を行っている三洋電エナジー鳥取の全株式を富士通グループのFDKに売却するなどの措置を行っている。

両社では、三洋電機の上場維持を共通の認識とし、三洋電機の商号およびブランドを維持。一方で、三洋電機の現任役員が引き続き事業運営にあたるが、パナソニックから取締役、監査役の派遣を含む新役員人事を協議。現在三洋電機が推進中の中期経営計画についてはそれを継続する。また、シナジー実現の加速を目標に1,000億円規模の投資を予定しているとした。

三洋電機とのシナジー効果はエネルギー分野で発揮される

具体的な協業成果として、ソーラー事業においては、三洋電機が持つ高効率のHIT太陽電池のさらなる事業拡大を図るとともに、次世代太陽電池の開発および実用化を加速。パナソニックグループの国内外販売プラットフォームを活用することで、大幅な増販効果があるとしたほか、リチウムイオン二次電池を中心とする二次電池事業においては、リーディングカンパニーの地位を確立。グローバルで事業を展開するとともにパナソニックから高容量技術などを提供することで、商品力を強化する。なかでも、今後の市場急成長が予想されているHEV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)用電池でも積極投資を行い、グループとして、あらゆる完成車メーカーとの連携強化、拡販を期待しているとした。

そのほか、資材購買などの全社調達コストの削減やロジスティクス関連コストの削減効果も想定しており、「イタコナ」や「コストバスターズ」などのパナソニック独自のコスト削減ノウハウを三洋電機に導入することで、さらなる経営体質の強化を実現するという。 パナソニックの大坪文雄社長は、10月30日に行われた同社決算発表の席上で、三洋電機の子会社化について言及。「独禁法当局が、どこまで詳細な調査をするのかをすべて想定していたわけではないが、簡単にいくとは思ってはいなかった」と長期戦となることを覚悟していたことを示し、「創エネ、蓄エネ、省エネへの取り組みが加速する一方、これらを一体化したエネルギーマネジメントシステムにおいてシナジー効果が期待でき、家まるごと、ビルまるごとでの提案が可能になる。総合的なエナジーソリューションを実現できる。競争法に抵触しない範囲で、準備を進めており、TOBが完了すれば一気に進められる準備がある」などと語った。

また三洋電機の佐野精一郎社長は、10月29日の同社決算会見で、新たにエナジーソリューション事業への参入を発表。「創エネ、蓄エネ、省エネの製品、技術を活用し、CO2排出量の削減やランニングコストの削減を提案するソリューションを活エネとし、これにより2015年度までに1,000億円の新事業創出を目指す。エナジーソリューション事業は三洋電機の強みを生かすことができる領域であり、パナソニックとの連携で効果が発揮できる領域ともいえる」と語った。

三洋電機の佐野精一郎社長

パナソニックの大坪文雄社長

三洋電機が打ち出す「活エネ」への取り組み

パナソニックは、2010年度から新たな中期経営計画を策定する計画であり、このなかに三洋電機の子会社化の効果を盛り込むことになる。とくに、ABCD(A=アプライアンスソリューション、B=ブラックボックスデバイス、C=カーエレクトロニクス、D=デジタルAVネットワーク)の中核事業に、三洋電機の子会社化によって、E(=エンジーソリューション)が加わり、ABCDEクインテットを重点事業に掲げることは明らかだ。

新中期経営計画は、2018年度にパナソニックが迎える創業100周年において、世界ナンバーワンの電機メーカーを目指すための基盤づくりの取り組みが中心となる。三洋電機をあわせて、パナソニックグループの連結売上高で9兆円を誇る規模となり、エナジー事業でのシナジー効果を柱にさらなる飛躍を目指すことになる。