イー・モバイルは29日、同社の携帯電話回線を利用できる無線LAN内蔵モバイルルーター「Pocket WiFi」と、新しい新料金プラン「バリューデータプラン」を発表した。同社の社長兼COO、エリック・ガン氏は、国内に無線LAN対応機器が数千万台あり、「Pocket WiFiが利用できるマーケットは広い。PCユーザーだけでなくもっと大きな無線LAN市場をターゲットにしたい」と期待感を表明している。
受信最大7.2Mbps、送信最大5.8Mbpsの3Gに対応した「Pocket WiFi」
Pocket WiFiは、無線LAN対応機器を接続し、イー・モバイルの3G回線でインターネット接続を行えるようにするコンパクトなルーター。バッテリーを内蔵しながら、名刺サイズの小型ボディを実現しているので、いつでも持ち歩いて利用することができる。
無線LAN対応機器は、iPod touchやウォークマンのような音楽プレイヤー、PSPやニンテンドーDSのようなゲーム機、一部のデジタルカメラや無線LAN内蔵SDカード「Eye-Fi」など、さまざまな機器がある。しかし、現状では自宅などで利用するか、店舗や駅構内などにある公衆無線LANサービスを使うしかなく、利用できる場所が限定されている。
そこで、今回発表したPocket WiFiでは、イー・モバイルが利用可能な場所ならどこでも、無線LAN対応機器でインターネット接続ができる環境を提供する。無線LAN対応の音楽プレイヤーやゲーム機などを、無線LANを使ってPocket WiFiと接続することで、イー・モバイルの3G回線でインターネットに接続できる。
同様の製品はほかにもあり、たとえばトリプレットゲートの「クティオ for ワイヤレスゲート」はイー・モバイルのデータ端末を接続して利用する。NEC/NECアクセステクニカの「Aterm WM3300R」はモバイルWiMAX回線を内蔵。NTTブロードバンドプラットフォームも携帯回線を使う「Personal Wireless Router」を提供している。
こうした製品は無線LANのみしか通信機能がない製品を、いつでもどこでも利用可能にすることが目的で、さまざまな無線LAN対応機器を接続できるので応用範囲が広い。Pocket WiFiは1台で5端末まで同時接続が可能なので、1回線の契約で複数の人が一斉に利用することも可能だ。ガン社長は、PC、iPod touch、ニンテンドーDSを持つ30代男性、家や屋外で自分はPCを、子供はゲーム機を利用する父親や母親、兄弟や仲間内で対戦ゲームをしたい若者など、幅広いターゲット層をあげ、「今後必要性がどんどん高まるのではないか」と指摘する。
Pocket WiFiの本体サイズ・重量は約48.6(W)×14.1(H)×95.5(D)mm・約80gと小型で軽量。通信は、下り最大7.2Mbps、上り最大5.8MbpsのHSPAをサポートする。SIMロックはかかっていないため、海外で現地の通信事業者のSIMカードを挿入して利用することもできる。ただし、国内でNTTドコモの回線を利用することはできないという。連続通信時間は約4時間で、ACアダプターやPCへのUSB接続で給電しながらの利用も可能。AC/USBいずれも充電は可能だが、USB接続の場合、3G回線利用中に限って充電されない場合があるそうだ。
また、バッテリーの交換にも対応する。対応OSはWindows XP/Vista、Mac OS X 10.4~10.6で、Windows 7の動作確認も行われている。開発には「1年以上かかった」(ガン社長)というが、コンパクトながら長時間駆動を実現している。
発売は11月18日からで、ベーシックプランを契約契約した場合の価格は39,580円、にねんM契約時は5,980円となっている。
新料金プラン「バリューデータプラン」も発表
Pocket WiFiにあわせて発表された料金プランが「バリューデータプラン」。ガン社長が「Pocket WiFiユーザーには一番おすすめ」というプランだ。料金は2年契約前提の「にねんM」で月額料金は2,980~5,980円、2年契約のない「ベーシック(年とく割2)」で月額2,580~5,580円。月間300MBまでのデータが含まれているため、250万パケット程度の通信量であれば最低料金で収まることになる。
同社ではこれまでも低価格の料金プランも提供してきたが、無料通信分が少なく、すぐに最低料金を上回ってしまうという問題があった。そこで、すぐには無料通信分を使い切らないプランとして、バリューデータプランが追加された。「コストパフォーマンス重視のユーザー向けで、1MBあたりの単価を非常に安くした。1MB単価では大幅値下げ」したプランだという。
イー・モバイルは、Pocket WiFiと新料金プランで、同社回線の利用範囲を拡大、9月末で189万回線の契約者数をさらに拡大させていきたい考え。これまでも、ネットブックとのセット販売で市場拡大に一役買ってきたイー・モバイルだが、今後は無線LAN対応機器もターゲットにしていく意向で、「家電量販店では(PC以外の)無線LAN対応機器とのセット販売もあるだろう」とガン社長は話し、利用拡大に期待を寄せる。
ただ、ガン社長は「これまで(公衆無線LANをのぞいて)無料で使ってきた無線LANに対して、急に料金を払うかどうか」との認識も示し、利用者の急拡大は難しいと指摘。そのため、PCユーザーをメインターゲットとし、「プラスアルファでほかの無線LAN対応機器が追加料金なしで使える」という同時利用のメリットをアピールしていく意向だ。「大ヒットか失敗かやってみないとわからないが期待している」とガン社長は語る。