ソニーのブルーレイレコーダーの秋冬モデルは、8月26日に発表された。最上級モデルのBDZ-EX200は11月上旬発売予定だが、その他のBDZ-RX100 / 50 / 30 / RS10は9月に発売されている。今回、BDZ-RX100を試用する機会に恵まれた。BDZ-RX100は、1TBのHDDを搭載する、BDZ-EX200に次ぐハイスペックモデルだ。とはいえ、同社のレコーダーでは、従来は、ハイクォリティなXシリーズ、ムービーやデジタルカメラとの連携を重視したLシリーズ、携帯やPSPへのおでかけ転送を特徴とするAシリーズ、基本機能のTシリーズといったように、各シリーズごとに機能が分かれていたが、新モデルでは、ラインナップを一新、すべてのモデルに共通の機能を搭載している。つまり、BDZ-RX100/50/30は、HDDの容量以外には機能面での違いはない。デジタルチューナーを2基搭載し(BDZ-RS10のみ1基)、最大8倍までの長時間録画が可能なインテリジェントエンコーダーを搭載、高画質回路にCREAS 2を採用、おでかけ転送、ハンディカム/サイバーショットなどとの接続のためのUSBポート、DLNAサーバー機能のソニールームリンクの搭載、従来は「録画1」にしか使用できなかったマジックチャプターを録画2にも使用できるようにした、といったところが、新モデルの基本的な機能だ。

新モデルの「BDZ-RX100」。シリーズごとの機能面での差がなくなり、選びやすくなった

フロントパネルを開けた中には、USBポートやメモリーカードスロットなどが装備されている。従来モデルでは、フロントパネル内にディスクトレイが収納されていたが、BDZ-RX100はフロントパネルを開けずに、ディスクトレイにアクセスできる

新機能のなかで目立つのが、ユーザーインタフェース(以下UI)の「らくらくスタートメニュー」だ。従来より、同社のブルーレイレコーダーでは、XMB(クロスメディアバー)と呼ばれるUIを採用している。このUIは、横軸に「設定」「ビデオ」「地上デジタル」「BSデジタル」といった大分類が並び、縦軸には、その分の類なかで使用されるだろうと思われる機能やチャンネル、録画済みタイトルなどが並んでいるというものだ。各項目で「オプション」ボタンを押すと、機能の細目や、チャンネルの場合には録画や番組情報、検索関係の項目が表示されるなど、慣れれば、非常に使い勝手はよい。スクロールも高速なため、多くの項目がメニューに存在しても、とくに苦にはならず、むしろ一覧性を高くしているという感じだ。

快適な操作を実現するXMBだが、初めて使う人はとまどうかもしれない

XMBでは、録画したタイトルの選択や、録画予約、本体の設定、ダビングなど、このレコーダーでできるすべての操作をシームレスに行うことが可能だ

ただ、XMBのUIは、一般的なレコーダーに搭載されているものとは異なる。一般的には、リモコンに「番組表」「再生」といったボタンがあり、それを押すことでダイレクトに機能を選択することも可能だが(同社のレコーダーでも同様の操作は可能だ)、それよりも手軽な手順として、「スタート」ボタンを押して、そこから「録画」「再生」「編集」といった項目を選択し、例えば、録画ならば番組表を表示、再生や編集の場合には、録画済みタイトルの一覧を表示するといったUIが用意されているケースが多い。そういったUIに慣れているユーザーがXMBに移行しようとすると多少戸惑うかもしれない。

新しく搭載された「らくらくスタートメニュー」は、一般的なUIを望む声にも対応したのだろう、リモコンに「スタート」ボタンがあり、それを押すと、「タイトルを再生する」「番組を録画予約する」「放送中の番組を見る」「ダビングする」「使い方を知りたい」というメニューが表示されるという、一般的なUIに近いものになっている。

左がBDZ-RX100に付属するリモコンで、右が旧機種のBDZ-T75に付属するリモコン。BDZ-RX100には、「スタート」ボタンが装備されている

リモコンの「スタート」ボタンを押すと、らくらくメニュー画面が表示される

では、そこから先の操作はどうなのだろうか。一つの例として、「番組を予約する」の項目の場合を見てみよう。「らくらくスタートメニュー」でこの項目を選択すると、録画方法などを選択した後に、録画したい番組の日付を選択する画面が表示される。ここで日付を選択すると、その日の番組表が表示され、そこから録画予約を行うという手順になる。

一方、一般的なUIでは、番組を予約するという項目を選択すると、番組表から予約を行うか、日時チャンネルをダイレクトに指定するかといった、予約方法の選択画面が表示され、そこで番組表からの予約を選ぶと、現在の番組表が表示されるというパターンが多いのではないだろうか。しかし、この場合、予約したい番組が当日ではなく、何日か先となると、当日の番組表をスクロール、または番組表を表示してから特定の日時にジャンプすることになり(といった手順が一般的だと思うのだが)、番組表のスクロール速度や表示速度が遅かったりすると、結構めんどうだ。

その点、らくらくスタートメニューの、先に予約する日を指定してから番組表を表示する、というのは実際のところ理にかなっているといえるだろう。

「番組を予約する」を選ぶと予約方法を選択する画面が表示される

続いて予約したい放送の種類を選択

予約したい日付を選択する画面が表示される

このように、らくらくスタートメニューは、他社のレコーダーから乗り換えても違和感の少ないUIといえるだろう。ただ、XMBでの操作も、その体系に慣れてしまえば、スタートメニューから機能を選択して……、という方式よりも、圧倒的に素早く、しかも快適だ、と筆者は感じている。したがって、2、3日ばかり使い込んでみるのが苦にならないという人にはXMBをお勧めする。

UI以外の操作面では、他社のレコーダーだと、フォルダ管理機能が搭載されていて、ユーザーが自由にフォルダを作り、録画時、あるいは、録画済みの番組の管理画面などで、フォルダを指定して移動させることが可能というものが多いと思うが、同社のレコーダーは、他社でいうところのフォルダ機能とは若干異なる。例えば、「グループ表示」の下にある「予約」というアイコンの中は、録画した番組ごとに分類される。つまり、毎回予約録画を行うような番組の場合、これで管理できるわけだ。さらに「マーク」のアイコンを開けると、録画した番組に付けられたマークによってグループ分けされる。マークは、録画時に設定することも可能だし、録画済みのタイトルの場合も、番組が選択されている状態で、「オプションボタン」→「設定/編集」→「マーク設定」で付けることが可能だ。一般的なフォルダ管理のように、自由にフォルダ名を決めることはできないが、これだけの振り分け方法があれば、不便に感じるということは少ないだろう。

さて、操作体系に関しては、だいたい以上のような感じだ。それ以外の注目機能として、VHSビデオや8ミリビデオからのダビングの接続操作を丁寧にガイドする「カンタンVHSダビング」、新開発「インテリジェントエンコーダー」の搭載による、フルハイビジョンでの長時間8倍録画、「スカパー!HD録画」などがある。また、キーワードを入力するだけで好みの番組を自動録画する「x-おまかせ・まる録」などの便利な機能も搭載している。アクトビラビデオへも対応(4月発売のBDZ-A950/750から)している。もちろん、アクトビラ ビデオ・ダウンロードセルにも対応する。アクトビラを使用するには、XMBの一番右側の「ネットワーク」にある「アクトビラ」を選択するか、リモコンにある「アクトビラ」ボタンを押す。この操作はリモコンのボタンのほうが速い。アクトビラボタンは、4色ボタンの上に並ぶ4つのボタンのうち、黄色の上にある。以前のリモコンでは、4つのボタンは、左から「地上アナログ」「地上デジタル」「BS」「CS」となっていたのだが、新モデルでは、「地上デジタル」「BS」「CS」「アクトビラ」となっていて、「地上アナログ」のボタンは省かれている。アクトビラを選択すると、「アクトビラを起動しています」と表示され、10秒程度の待ち時間の後、アクトビラの画面が表示される。

アクトビラを利用するには、XMBの右端にあるネットワークから「アクトビラ」を選ぶか、リモコンの「アクトビラ」ボタンを押す

アクトビラへの切り替えには、10秒程度の時間がかかる

BDZ-RX100では、ダウンロードも含めたアクトビラの現時点での全機能を利用可能だ

BDZ-RX100では、現時点でのアクトビラのフル機能が利用可能だ。アクトビラを起動してからは、BDZ-RX100の操作ではなくて、アクトビラの操作になってしまうので、ここでは省略する。アクトビラは、個人的な意見としては、ビデオを見るのも便利だが、それに加えて、情報ページの出来もなかなかだと思う。各放送局が行っている、データ放送の5~6ch分の情報量という印象だ。ただ、アクトビラを起動することで、それまでの操作体系とは変わってしまうということを意識しておく必要はあるだろう。システムが違うのだから仕方がないことだが、例えば、BDZ-RX100でアクトビラを起動した状態で、「戻る」ボタンを押しても、アクトビラを起動する前の画面には戻らない。前の画面に戻るのには、もう一度アクトビラボタンを押すという操作を行う必要がある。

新高画質回路の「CREAS2」に魅力を感じている人もいるかもしれない。CREAS2は、従来から搭載されているCREASの機能向上版。CREASは、各色8bitの映像を、各色10bitにまで拡張する「HDリアリティエンハンサー」と、その拡張された階調を、低bitのパネルでも表示できるようにする(14bit相当に拡張するといわれている)「Super Bit Mapping Video」(SBMV)を大きな特徴とする。CREAS2では、このSBMVの部分が拡張されており、使用しているモニターの種類に合わせたパラメーターを選択することが可能となっているというものだ。CREAS2のモニター別プリセット機能では、「液晶テレビ(明るい部屋)」「液晶テレビ(暗い部屋)」「有機ELテレビ」「プロジェクター」「プラズマテレビ」という5種類のモニターを選ぶことができる。

モニタープリセットの変更方法はこのようになる。まず、なんらかの映像を表示中に、リモコンの「オプション」ボタンを押す。画面の右上にある「画音設定」を選んで決定ボタンを押す

ここでは「画質設定」を選択

画質メニューが半透過状態で表示される。ここの「おすすめカスタム値(モニター別)」を選ぶと、モニターの種類を選択できるのだが、デフォルトの状態では、この項目を選択することはできない。「おすすめカスタム値(モニター別)」を選択するには、画質モードを、「スタンダード」から「カスタム」に変更する必要がある

「おすすめカスタム値(モニター別)」の項目を選ぶと、このようなメニューが表示され、使用しているモニターに合ったプリセットを選択することが可能だ

2008年のCEATEC JAPANの同社ブースでのデモ。2つの画面を同時に見比べることができれば違いが比較しやすい

さて、今回、BDZ-RX100とBDZ-T75という2台のブルーレイレコーダーを同時に動かして比較している。となると問題になるのが、リモコンでの操作だ。最初にBDZ-RX100を接続して電源を入れた際に、それと同時に、BDZ-T75の電源もオンになった。2台のリモコンのどちらを使っても、両方が動作する状態だ。このままでは不便だが、同社のブルーレイレコーダーはリモコンモードを3種類持っている。複数のレコーダーを使用する場合には、これを切り替えることで、混乱をなくすことが可能だ。その手順は、まず、XMBの「設定」にある「リモコンモード」を選択。すると、画面右側に、リモコンモードの一覧と現在のモードが表示される。モードは「BD1」「BD2」「BD3」の3種類があり、BDZ-RX100とT75は、デフォルトではどちらもBD3に設定されていた。BD3にあるカーソルを別のモードに動かして、決定ボタンを押すと、リモコンモード変更の操作に入り、画面指示に従ってボタンを押していくと、リモコンモードが変更できる。レコーダーを買い足しする際も、問題なく設定できるので心配はない。

さて、短期間ながら新モデルBDZ-RX100を使用してみたが、今までリリースされてきた同社のレコーダーのなかでも、完成度の高い一台だという印象を受けた。DVDにハイビジョン記録ができない(AVCRECに非対応)という弱点もあるが、実際のところ、BDのメディア価格は急激に低下してきており、DVDとの容量あたりの価格差も縮まってきている。メディアの枚数が少なくて済むというメリットも考えると、それほどのビハインドとはならないだろう。操作性に関しては、XMBを採用する同社製のレコーダーは、現時点で一歩抜きん出ているという印象を筆者は持っている(この評価に関しては、実際に自分で所有しており、日常的に使用しているという慣れの問題もあるので、多少割り引いて受け取ってもらってもかまわないが、快適なのは確かだ)。

そういった点を踏まえて考えると、同社の新ラインナップは、今まで同社のレコーダーを使用してきたユーザーの買い換え/買い足しだけでなく、アナログ時代のレコーダーからの乗り換えユーザーなど、比較的オールマイティに進められるモデルに仕上がっていると、筆者は思うのだがどうだろうか。