今回のITU Telecom World 2009は海外の大手ベンダーの多くが出展を取りやめており、参加企業は約450社であった。その中で目立っていたのが日本の通信事業者のブースで、最新技術や端末の展示が行われており高い注目を浴びていた。なお同時期に日本ではCEATEC JAPAN 2009が開催されており、重複する展示内容もあったが、海外の来訪者の反応は日本とはまた異なるものが多かったようだ。
NTTとNTTドコモ、共同で最新技術をアピール
NTTグループはNTTとNTTドコモが共同でブースを構え、LTEやNGNなど次世代技術の応用サービスなどの展示を行っていた。注目はNTTドコモブースのLTE対応の端末で、富士通製のExpress Card型端末、LG電子製のUSB型端末が展示されていた。どちらもモックアップであり動作はしないものの、NTTドコモのロゴが入っているなど2010年末の商用サービス開始が間近なものに迫っていることを感じさせた。また、NTTドコモと富士通、NEC、パナソニックモバイルコミュニケーションズが共同開発したLTEの共同プラットフォーム「LTE-PF」のチップセットのエンジニアリングサンプルも展示された。LTE-PFは日本国内だけではなく全世界にライセンス提供の予定で、本展示も海外への売込みを兼ねたものとなっている。
日本の最新サービスや端末の展示では、おサイフケータイを利用したNFCサービスやウェルネスサポートのデモに人気が集まっていたようだ。特に先進国では健康志向の高まりもあり、血圧計や万歩計から計測値を簡単に携帯電話に転送・管理できるウェルネスサポートは、エンターテイメント系のサービスよりも実用性の面で高い注目を浴びていた。
端末はビジネスやファッション、スタイルなどコンセプト別に展示。アクセサリや小物を一緒に配置して製品のイメージをわかりやすく伝えている点が好評だった。「ヨーロッパでこの端末を買うことはできないのか」「NTTドコモは端末の販売会社なのか」と言った質問も多く、日本の端末の海外販売を期待する声が多く聞かれた。
このほか、エコ関係の展示に高い関心が寄せられていた。特に太陽エネルギーの利用については、開発途上国の来訪者からの関心が高かった。電力インフラの整備されていない開発途上国にとって、太陽エネルギーの利用は重要な課題であり、導入コストが高くともランニングコストを低減できれば十分ペイできる太陽電池技術の導入は必須のようだ。太陽電池を利用した基地局や端末の展示コーナーでは熱心に説明を聞く来訪者の姿が多く見られた。
一方NTTはNGN(Next Generation Network)を見据えた将来のサービスデモを行っていた。ホームゲートウェイを使ったホームコントロールではNGN/LTEなど高速データ回線と組み合わせた複合的なサービスを展示。同サービスは、外出先から携帯電話を利用して室内の家電やカーテンの開け閉めといったリモートコントロールを実現。IPTVの番組を家庭ではTV、外出先では続きを携帯電話で視聴するといったシームレスな連携を実現する予定で、「通信インフラ先進国・日本」を大きくアピールしていた。
KDDI、データセンターや最新携帯端末を展示
KDDIは「TELEHOUSE」ブランドで海外展開しているデータセンターや日本のauの最新端末の展示などを行っていた。デザインに優れたiidaやスポーツ携帯などの海外には無いカテゴリの製品はやはり注目度が高く、日本のみの発売に落胆する来訪者の声が聞かれたほどだ。またSOLAR PHONE SH002も好評で、防水機能や太陽電池の充電時間に関する質問が多く、こちらも発展途上国の来訪者から「高価格でもよいのでぜひ販売してくれないか」といった声が多数聞かれた。日本ではアウトドア向けという印象の太陽電池や防水機能だが、発展途上国ではワンセグやおサイフといった機能以上に求められているようである。
他には日本でもサービスが開始されたUQ WiMAXやIMT-ADVANCED関連などの展示が行われており、次世代技術の導入や研究開発にも力を入れている点を大きくアピール。セルエッジでも転送レートを落とさず通信できるマルチサイトMIMO技術や、実空間透視ケータイ技術を利用した地球アルバムなどに注目が集まっていた。