JVC・ケンウッド・ホールディングスは9月30日、オーディオ、ビデオ、通信を融合した新商品として、Home AVC「RYOMA(リョーマ)」と、これに対応した新サービス「M-LinX(エム・リンクス)」を開発。来年春に、製品の発売とサービス開始を予定していると発表した。これを第1弾として、家庭向けおよびモバイル向けの新製品を順次投入していくという。

RYOMAはホームオーディオの復活を目指すという

M-LinXはインーネットと放送を融合した新たなラジオの楽しみ方を提案する

RYOMAの試作機。来年春に発売されるという

同社では、ビクターとケンウッドの映像、音響、無線技術のほか、放送を融合させることにより、多彩な映像コンテンツと音楽コンテンツを、「観る」「録る」「聴く」という観点からも1台で楽しむことができ、新たなAVライフを提案する、新コンセプトの商品およびサービスと位置づけている。まずは日本で製品、サービスを提供し、将来的には海外展開を視野に入れるという。

RYOMAは、業界で初めて、Blu-rayディスクレコーダー、HDD、デジタルハイビジョンチューナー、FM/AMチューナー、デジタルアンプを1台に集約。直感的にコンテンツを選択できるユーザーインタフェースを採用したHome AVC商品。ピュアオーディオで培ったデジタルアンプ技術を活用することで、入力した音楽信号に悪影響を与える干渉やノイズを排除。高精度な信号増幅を実現した。

「テレビでラジオを聞くことはできない。また、家のなかにラジオがなくなっており、サザンオールスターズのラジオでの中継をするのに、車で首都高を回って聞いていたという話も聞くほど。RYOMAは、これを直感的なインタフェースで切り替え、ラジオも手軽に聞くことができる。これによって、失われていたホームオーディオの復活目指したい」(JVC・ケンウッド・ホールディングス 執行役員常務 新事業開発センター長 前田悟氏)とした。

RYOMAに用意されたリモコン。大きな「A」と「V」のボタンで切り替える

テレビでラジオを楽しむというのは、いまのテレビではできない

価格や具体的な仕様については未定としたが、「価格については、HDDレコーダー+α程度で提供したいと考えている」とした。

一方、M-LinXは、同社が独自に開発したインターネットを活用した放送サービス地域特定技術により、電波障害などの難聴取地域でもクリアなラジオ放送が楽しめるサービスで、双方向機能を持つほか、付加データを活用した新たな楽しみ方を提案できるという。

通常のラジオ放送とともに、テレビ画面にアナウンサーの喋っている様子や、関連する動画や静止画、ニュースや天気予報、アーティスト新譜情報などの文字情報を表示することが可能で、「ラジオのリスニングスタイルが大きく変化する」としている。ラジオでもテレビのような視聴が可能になるといえよう。また、インターネット網を利用した双方向機能によって、リスナーの趣味嗜好、番組内容に連動した広告展開、情報が行えるという。

M-LinXのサービスについては、有料/無料の双方を想定しており、広告手数料などを通じたビジネスモデルなども検討している。ラジオ放送の動画コンテンツの提供については、TOKYO FMのほか、複数のパートナー会社と話し合いを開始している。

また、地域を特定する技術を採用することで、ネットを通じたラジオ放送の受信についても、首都圏地域では首都圏で聴取が可能なラジオ局の放送だけが受信できるようにしている。

難聴取地域でもラジオを楽しむことができる一方、ラジオの聴取エリアを越えない技術を採用している

ラジオの音声とともに、各種の映像を見ることができる。DJの様子も伝えられる(動画(QuikTime)はこちら)

さらに同社では、既存のテレビやビデオなどのAV機器に接続して、M-LinXを利用できるコンパクトAM/FMチューナー「M-LinX Tuner Box」を開発。同じく来年春に製品化する計画を明らかにした。同製品、手のひらサイズのコンパクトさを持ち、HDMI出力、コンポジット出力に対応している。この技術は、技術ライセンスあるいはOEMによる展開も計画しているという。

前田氏は「AV機器は"AV危機"の状態にある。テレビ事業では赤字となっているメーカーが多いし、大手メーカーが出す製品は右ならえの状況で、価格競争に陥り、日本企業から新規商品が出ない。RYOMAおよびM-LinXは、あらゆるものに満足を感じているユーザーに対して欠乏感を与える商品であり、価格競争に走りがちな売り切りビジネスからも脱却できる製品と位置づけている」と語る。

「AV機器はAV危機」と語る、JVC・ケンウッド・ホールディングス 執行役員常務 新事業開発センター長 前田悟氏。AV機器業界に新たな市場を作り出すことができるか

前田氏はソニー出身で、ロケーションフリーなどの製品開発を指揮してきた経験を持ち、新たな領域の製品開発における実績では、業界でも高い評価がある。今回の新製品も、「カタ破りをカタチに。」をキーワードに、新たな領域への取り組みを打ち出したものといえよう。「私は、2年前に入社したが、弱者連合に入ったと思っている。だが一方で、大手メーカーも苦労している。コモディティの分野で戦えば体力が必要だが、新たな領域での展開という点では規模の小さい/大きいは関係ない。この製品は来春まで各社はできないし、パテントもあり、簡単に他社が入れないと考えている。プロダクトプランニングとしては、まだ紹介ができないサービスもあり、引き続き、機動力を持って先駆けて取り組んでいく。こうした新たな市場創出への取り組みが家電業界の復活につながる」とした。