コンセプトは"○○になくてはならない"
エプソンは、年末商戦向けのコンシューマプリンタ「カラリオシリーズ」の新製品として、複合機として5機種、シングル機として1機種、さらに、フォトプリンタの「カラリオミーシリーズ」を2機種発売する。
セイコーエプソンの羽片忠明取締役は、「プリンタは、心の敷居が高い商品。今回の新製品では、使用機会を増やし、お客様とカラリオの距離を近づけ、暮らしの中で、なくてはならない存在となることを目指した。必要なときにたまに登場する製品から、毎日の生活のなかに溶け込み、気軽に使うものへと進化させ、生活密着度を高めていく」と、新製品の開発コンセプトを示した。
今回の新製品では、無線LAN機能搭載機種を増やすことで、出荷台数の50%を無線LAN搭載モデルとするなど、「リビングでなくなはならない」というプリンタになことを目指すほか、カラリオミーで搭載したView&Print機能によって、デジタルフォトフレーム機能を実現。「仲間や家族とのコミュニケーションになくてはならい」といった使い方の定着を狙う。さらに、カラリオミーに搭載したハガキ作成機能によって「年賀状やハガキづくりになくてはならない」、A2対応モデルを新たな追加したプロフェッショナルモデルによる「作品づくりになくてはならない」といったように、数々のシーンでの「なくてはならない」という観点からの用途を提案していく。
セイコーエプソン 情報画像事業本部 遠藤鋼一副事業本部長は、「使いやすさの点や、暮らしになくてはならないという点では、まだまだ技術的に越えなくてはならない部分がある」として、今後は、プリンタの基本性能以外でも、技術進化を図る必要性を語る。
市場の拡大と競合との戦いに向けた年末商戦
国内のインクジェットプリンタ市場は、年々縮小傾向にある。エプソンの調べによると、2007年度は485万台の市場規模は、2008年度の470万台となり、2009年度は460万台とさらに縮小することが見込まれている。
エプソンの羽片取締役は、その理由として、「需要の一巡や、画質およびスピードなどの性能が充足し、技術的な成熟を迎えたことがし、販売数量の伸張が期待できない状況につながっている。また、PCの周辺機器としての成長に限界が生じており、新たな提案が求められている」とする。今回の新製品では、PCの周辺機器としての進化ではなく、プリンタが単独で動作し、新たな楽しみ方、使い方を提案できることを狙ったわけだ。
新提案によって市場拡大に挑む意欲は、エプソン販売の平野精一社長のコメントからも明らかだ。「予測値では市場全体の伸びはマイナス成長だが、今回の新製品によって、当社は前年比100%にまで販売台数を引き上げたいと考えている。また、 コンパクトブリンタ市場は、直近1年では約46万台の市場規模だが、まだ伸びしろは大きいと考えており、カラリオミーの新製品投入によって、市場全体を約51万台にまで引き上げる」とする。
また、シェア目標にも意欲的だ。2008年度はトップシェアを獲得した実績をベースに、2009年度も複合機でシェア50%以上、コンパクトプリンタシェアで50%以上、インクジェットプリンタ市場全体のシェアも50%以上を目指す。
これにより、エプソンの国内のプリンタ販売目標は、前年並みの240万台となる。また、海外にはおいては、1,450万台と前年比微増。世界シェアは前年度の18%から、19%へと引き上げる考えだ。
前年には、大幅なモデルチェンジを行ったこと、カラリオブランドのコンセプト変更を行った話題性もあり、エプソンのシェアは、一時期は54%にまで上昇。キヤノンに約12ポイントの差をつけてみせた。だが今年は大きなモデルチェンジもなく、キヤノン側も巻き返しに余念がない。実際、キヤノンは今年度前半からシェアを巻き返しており、年末商戦ではこの勢いに乗る考えだ。
キヤノンマーケティングジャパンの川崎正己社長は、「出荷台数では前年実績を上回っている。消耗品についても、市場全体の伸び率を上回っている」としながら、「今年度は家庭用プリンタシェアで50%を獲得する」と意欲を見せる。
キヤノンは、複合機が6機種、シングルプリンタで1モデル、ビジネス向けシングルプリンタが1モデルの合計8機種を投入し、「Webプリント」機能を訴求しながら、キヤノンの優位性を示す。
例年恒例となったエプソンとキヤノンのプリンタ市場における競合は、今年も激しくなりそうだ。