――そのほかの曲を眺めますと、今回のラインナップはElements Gardenの歴史の中でも最近の曲が多いかなという印象があります

「やはり、最近の曲のほうが作っていた時期の熱い記憶が強いので、メンバーたちもそういったところから選びたくなるんだと思います」

――まさにElements Gardenの現在を表しているといった感じでしょうか

「そうですね。そういったところを特に見せたいとは思っています。ただ、本当は全部入れたいんですよ。全曲を毎回毎回(笑)。でも、CDの容量を考えると、やはりこのあたりが限界なんですよね。なので、ふるいにかけて選ぶのは本当に大変です」

――そんな中でも、上松さんが作詞、作曲、編曲のすべて手がけている4曲目の「星☆に願いを」はかなり初期の曲ですよね

「これは僕のわがままで入れた曲なのですが、Elements Gardenにとって、PCゲームという括りの中では一番最初に請けた歌モノの曲だったんですよ。会社を立ち上げたばかりで、機材などを揃えるのも必死だった時期なので、すごく思い出が深い曲ですね。最初なので、全部自分でやりたいという気持ちがあったのと、とにかくElements Gardenというものを打ち出さなければいけないという気持ちが強かったんですよ。なので、その曲をぜひとも入れておきたいと思いました」

――上松さんが作曲を担当されている7曲目の「Try on!」は、「星☆に願いを」と同じNANAさんがボーカルですね。曲を作る際はやはりボーカリストを意識しますか?

「かなり意識しますね。やはり、その方のための曲でもあると思っていますから、得意なところを活かしつつ、苦手なところをできるだけ避けたりすることもあります。でも、その人が苦手でもこれはやっておいたほうがいいんじゃないかなって思うときは、強引にやったりもします」

――作曲と編曲を担当なさっている8曲目の「Tears in snow」は佐藤ひろ美さんがボーカルですね

「"佐藤ひろ美"の名前がボーカルにあるときは、けっこう互いに言い合って作っています。佐藤の曲を作るときは、必ず佐藤に相談するんですよ、『これでいいかな?』って。 そうしたら『だめじゃない?』とかいわれて、『ああ、そうか』みたいなときもあるんですけど(笑)、必ず切磋琢磨をする感じでやっています。僕のデビューの曲を彼女に歌ってもらっているというところもあるので、そういった関係を大事にしています」

――9曲目の「超新生 -スーパーノヴァ-」はちょっと異色ですね

「これは『電撃大王』という雑誌のテーマを作ってほしいといわれて作った曲なのですが、けっこう面白い企画だなって思いましたね」

――曲自体もかなり弾けた感じです

「そうなんですよね。まず媒体さんのテーマソングというのが面白かったので、これは入れてみたいなって思ったんです。あと、ボーカルがたかはし智秋さんだったというのも大きかったですね。基本的にはゲームソングという括りでアルバムを構成しているので、アニソンを入れるとやっぱり違和感があると思うのですが、媒体さんの曲ならアリかなって思って入れました(笑)」

――Elements Garden最初期の「星☆に願いを」が入っている一方で、15曲目の「STAR LEGEND」はかなり最近の曲ですよね

「そうですね。このゲームのメーカーさんはすごく面白くて、今回はスタジオを借り切って、みんなで記者会見のようなことをしたのが印象的でした。昔はよくあったことで、Elements Gardenの前身のfeelの時代には、そういった露出も多かったのですが、最近では非常に珍しくて新鮮でしたね」

――最近、上松さんは表に出てこないという印象もありますが

「そういうつもりはないのですが、あまり最近はそういった場がないですね。声をかけられたら、うちはいくらでもやりたいぐらいなのですが、やはり基本はメーカーさん主導になりますから。なので、久しぶりだったこともあってとても面白かったです。あと、統率が取れているメーカーさんだなっていう印象もありますね。コンセプトにブレがなくて、作るものが明確なんですよ」

――ということは曲も作りやすかったですか?

「すごく作りやすかったですね。狙いどころがわかりやすかったですから」

――ちなみに、上松さんは曲を作る際に、どういったものを参考になさいますか?

「必ず見るのは企画書ですね。企画書には、そのメーカーさんが一番いいたいことが詰まっていて、大事なことは絶対にそこに書いてあるんですよ。逆にそれ以上のことは見ないようにしています。あまり入り込むと、曲が作品にハマりすぎてしまうんですよ。ハマりすぎるときって、意外と面白いことが起こらなくて、ちょっとぐらいはズレているほうが、作品自体の枠を広げてくれると思っています。ぱっと見のインスピレーションで作って、ちがっていたら先方がちがうといってくれるので、そこからすり合わせていく方法をとっています。先方が想像している以上のことをやるためにも、まずは裾を広げようと思って作っています。ただ、これは僕だけのことで、資料すべてに目を通してから作るメンバーもいると思います。僕としては、紙っぺら1、2枚というのが一番作りやすいですね」

――なるほど。この曲は中山さんが編曲を担当なさっていますね

「中山は天才肌なので、すごく面白いんですよ。必ず一歩先をいった編曲をしてくるんですよね。もちろん、荒削りなところもあるので、そこはちがうんじゃないのっていうところもあるのですが、意外と曲げないんですよ(笑)。なので、じゃあちょっと任せてみようと思って作ったのがこの曲なんです。以前は、中山だとこうなんだろうなっていうのがあったのですが、最近それを裏切ることが増えてきているので、殻を一枚破ったんじゃないかなって思っています。最近だと、Elements Gardenの曲にはブラスの曲が少ないと思ったらしく、けっこうブラスをいっぱい入れた曲を作り始めたりして、意外と枠を広げてくれています」

――やはりElements Gardenの場合、弦楽器を使うことが多いですよね

「そうですね、うちの代名詞でしたから」

――そこにこだわっているわけではないのですか?

「最初はもちろんこだわっていました。いろいろな曲を作れるだけではユーザーには見えないので、とにかく最初の時期は何か代名詞となるものが欲しかったんですよ。ちょうどそのころは、弦のサウンドを高速でレコーディングするという文化がなかったんですね。弦のサウンドは、譜面を書くのも、レコーディングをするのも難しいので、そういった意味でも、技術屋としての我々にうってつけだと思ったんですよ。あと、必ず流行るという確信もありました。弦のサウンドは、切なくもできるし、壮大にもできるし、攻撃的にもできる。さらに、12人ぐらいで一斉に弾くので、演奏者の思いがすごく曲に詰まるし、人数感もあって、曲を聴く人にも伝わりやすいんですよ。そういったこともあって、最初のころはElements Gardenイコール弦楽器というイメージをつけたのですが、我々もやはり進化しているところなので、今ではあくまでも選択肢のひとつとして考えています」

――弦楽器だとやはりオーケストラのイメージもあって、聴く人にもかなり壮大に響きますよね

「そうなんですよね。だから今でも僕は好きですよ。やはり弦楽器は、演奏している空間がそのまま曲に乗り移るので、奥行きや深さが曲に加わりますね」

――スタジオはかなり大きなところが必要になりますよね

「そうなんですよ。だから、コストがね……。僕は経営者でもあるので、いつもそこの戦いなんですよ。でも結局は音楽を選んでしまうので、あまり会社にお金を残せなくて(笑)」

――最後の「祝福のカンパネラ」は上松さんが作曲、菊田さんが編曲、そして佐藤ひろ美さんが作詞という構成ですね

「ういんどみるさんは、付き合いの長いメーカーということもあって、気合の入れ方もちょっとちがうんですよ。キャラクターソングなども含め、依頼をいただく曲数が多いということもあるのですが、打ち合わせにはElements Gardenのメンバー全員が参加するような感じで、すごく気合を入れて作った覚えがあります。菊田はういんどみるさんの中では、編曲の代名詞になっているので、もうこの布陣は最初から決まっていました」

――この曲は佐藤ひろ美さんとNANAさんのツインボーカルですね

「これはメーカーさんのアイデアだったんですよ。パワーのある、ほかにはない曲にしてみたいということで、それならボーカルを増やしたらどうなるだろうというところからだったのですが、メインボーカルが2本だと、やはり掛け合いが面白いんですよね。だから僕も曲作りを楽しめました」

――やはりツインボーカルだと曲作りも変わってきますか?

「もう全然違いますね。一人が上で伸ばしているときに、もう一人が下に入ってきたり、二人でハモったりと、いろいろなことができるので本当に面白いですよ。じゃあ5人いるとどうなるんだって話になるのですが、そうなると難しくなりますね(笑)」

(次ページへ続く)