歯列矯正に興味はあるけど、大人の矯正治療はお金もかかるし、虫歯でもないのに自ら歯医者に行くなんて……と思っている人、意外と多いのではないだろうか。歯並びの弊害や治療方法について、神奈川平塚市のホワイト矯正歯科・山田幸司先生にお話を聞いた。
歯並びが悪いと何が良くないのか
不成咬合(噛み合わせが良くない状態)は、いわゆる「出っ歯」や「受け口」などの見た目の問題だけでなく、様々なデメリットを生じさせる。
まず一つは、食物を十分に咀嚼できないために胃腸に負担がかかる、負荷が偏ったり十分に歯磨きできないためにむし歯・歯周病になりやすい、といった健康面の問題が挙げられる。よく聞く頭痛・肩こりの訴えは意外と少なく、同院では1割程度ではないかとのこと。
もう一つは、歯並びの悪さがコンプレックスで消極的な性格になったり、人前で話ができない等の精神面の問題。大人になっても悩みを抱えている人も少なくないそうだ。
歯並びが悪いとわかっていても慣れで無意識になりがちだが、自分が感じている弊害を改めて考え直してみる必要があるかもしれない。
大人になってからでも大丈夫?
矯正は一般的に、大人よりも子供の方が抜歯の必要なケースが少なく、治療が短期間で済むと言われている。歯の生え替わり時期や、骨格や筋肉が成長過程にある子供は、成長を促す方向での矯正が可能だからだ。代謝が早いため歯や骨が動きやすく、舌や頬の筋肉も変化に順応しやすいことも利点となる。
もちろん、成人してからでも決して遅くはない。むしろ弊害を自覚したり、"身だしなみ"としての歯並びが気になりだすのは、社会に出てからの方が多いだろう。また、骨格の成長が止まってからも歯は移動するので、成人してから歯並びが悪化するケースもあるそうだ。
大人の場合、子供より時間はがかかるが、歯茎や顎の骨が健康であれば十分に治療が可能だ。同医院では、60~70代の方の治療事例もあるそうだ。ただし、歯槽膿漏の症状がある場合は注意が必要なので、事前に歯科医に相談が必要だ。
矯正治療の進め方
では、実際にどのような治療が行われるのか、大まかな流れを見てみよう。
【1】検査
現在の歯や骨の状態を綿密に検査。それもとに現在の歯並びの状態を分析し、標準的な値と照らし合わせ、不正咬合の原因を検証する。
【2】治療期間
矯正装置を取り付ける。最も一般的に使われるのが、ワイヤーを使った矯正装置だ。「ブラケット」という固定具を歯に貼り付け、形状記憶ワイヤーをかけて、適切な方向に歯が動くよう力を加える。症状に応じてバンドやゴム製チェーン等の小さな部品が使われる。
現在は金属製と比べて格段に目立ちにくい透明のブラケットがよく使われるという。さらに人に気付かれたくないという場合は、歯の裏側から矯正するという方法もある。
従来の矯正装置。昔は矯正と言えばこれだった |
透明色のブラケットで、あまり違和感のないタイプ |
装着していることがほとんどわからないマウスピースタイプ |
裏側に取り付けるタイプ。適用できないケースもある |
治療期間は一般的に1年半~3年程度だが、症状・歯の動く速さ等の要因により個人ごとに異なる。この間、月に一度のペースでワイヤーの交換および調整を行い、少しずつ噛み合わせを確立させていく。
この他、最近では透明の樹脂でできたマウスピースを使う方法も用いられている。歯型の3Dデータから、現在より並びを少し矯正した形状のマウスピースを装着し、約3週間ごとに新しい型を作成しながら徐々に最終的な形状に近づけていく。目立たずに治療を行えるが、症状によっては適用できない場合もあり、一般的にはワイヤーを使う方法が主流だ。
【3】保定期間
矯正装置取り外し後、歯並びを安定させるための「保定装置」を入れる。期間は個人差があるが、約1年~3年で、この間の通院は3カ月に1回程度。歯が新しい位置に馴染んできたら治療完了となる。
次回後編は、歯科医選びや費用も含めた実際の治療体験についてレポートする。