OSPをはじめ、ドコモとのパートナーシップを強調していたKevin Lynch氏。昨秋行われた米国でのMAXにおいても、日本の携帯市場の先進性を高く評価していた

--Adobeが進める「OSP(Open Screen Project)」は現在どのような状況にありますか。

OSPは大画面、セットトップボックス/TV、PCから携帯デバイスまで、ありとあらゆるスクリーン上でFlashやAIRアプリケーションを同じように動作させるという試みです。

デバイスごとのランタイムの細分化が進みすぎて…という問題はたしかにありますが、コンテンツやアプリケーションの制作者に対し、デバイスの仕様をできるだけ公開していく、これがOSPのポリシーです。オープンにすることでベンダやキャリア間で問題点を共有していくことが可能になるからです。とかく、デバイスの仕様はクローズドになりがちですが、あえてこれをオープンにしていく - もちろんAdobeだけではできませんから、ドコモ、Verizon、Intelなど多くのパートナーに協賛してもらっています。

個人的には、情報端末としてはPCよりも携帯端末の普及のほうがはるかに進んでいることを考えると、「大きな画面→小さな画面」ではなく、「小さな画面→大きな画面」といった流れを重視したほうがよいと考えています。つまり、まず小型スクリーンで動くコンテンツ/アプリケーションを開発するという方向です。そういう意味では、携帯コンテンツの制作レベルが高い日本は、非常に進んだ市場といえるのではないでしょうか。

--昨年正式リリースされたAIRの展望についてお聞かせください。

AIRはまだ出たばかりの、アーリーステージにある段階のプロダクトです。それでもすでに1億ダウンロードを超え、さまざまな使われ方をしています。eBayはかなり早い段階からAIRを導入していましたし、面白いところではNASDAQのMarket ReplayでもAIRが使われています。これはAmazonのホスティングストレージサービス上で動いています。また、私の好きなアプリケーションに「TweetDeck」というTwitterのメッセージングサービスがあるのですが、これは会話中のキーワードを示すことができたりします。AIR Market PlaceにはさまざまなAIRアプリケーションが登録されていますので、ぜひ見てみてください。

AIRの開発方針としては、どんなデバイス上でも動くということを最重要視しています。実は一時、(AIR専用の)独自Webブラウザの開発を考えたことがありました。しかし、やはりそれでは市場へのリーチが足りなくなると判断し、そのアイデアはお流れになりました。

今後は携帯端末への展開を積極的に進めていく予定です。また、AIRアプリケーションとUSBデバイスとの互換性を強め、PCや携帯端末へのコンタクトをしやすくすることも考えています。開発者に向けての機能強化、たとえばドラッグ&ドロップ機能の向上なども積極的に図っていきます。

AIRの方向性と顧客の方向性が一致すること、これをつねに意識して開発を続けていくつもりです。

--携帯デバイスといえば、AppleのiPhone上でFlashが動くのはいつになるのでしょうか。

その質問は多方面からよく訊かれます(笑)。iPhone対応は最も多いリクエストではあるのですが、結論から言うと(対応を)手がけ始めています。ただし、技術的な課題がまだ多く、何よりFlashをiPhoneで動かすにはAppleの了承が必要です。iPhoneは"誰でもOK"的なオープンなデバイスではありませんから、いろいろとハードルはあります。個人的な意見を言えば、「期待はしています」というところですね。