独ケルン・メッセで開催中の「photokina 2008」(フォトキナ)において富士フイルムは、新たな撮像素子「スーパーCCDハニカム EXR」を公開している。同センサーは、「ノイズの少ない高感度」「豊かな階調を実現するワイドダイナミックレンジ」「高解像度」の3つの目的を1つのCCDで達成することを目指したものだ。
技術の肝は、新たな配列のカラーフィルターと、「Pixel Fusion Technology」「Dual Capture Technology」「Fine Capture Technology」という3つの技術を投入した点だ。
スーパーCCDハニカムは、フィルターをハニカム配列に並べているが、EXRでは新たに、斜め方向に隣り合った画素を同じ色にした。この配列にすることで、2つの画素を使って1つの画素へ補完することで感度が2倍に(画素は半分に)なり、高感度で低ノイズの画質が生成できるという。画素混合で隣り合った画素を使っているため、偽色が発生しにくいのだそうだ。「解像度よりS/N比を取る」(ブースの説明員)ことで、解像度は半分になるがノイズの少ない明るい画像が撮れるという。これが「Pixel Fusion Technology」だ。
Pixel Fusion Technologyの概略。従来はRとBの画素は1つずつ並んでいたが、これを2つずつに変更。この2つを1セットとして画素混合を行う。隣り合っているため、偽色が発生しづらいという |
Dual Capture Technologyは、上記の隣接する同色の画素それぞれが異なる露光時間の画像を同時に撮影、異なる明るさの画像を合成することでダイナミックレンジの拡大を狙ったもの。同社では従来、スーパーCCDハニカム SRとHRという2つの方式のCCDを使い、SRで2つの画素を使い、HRでは一定以上のISO感度時においてダイナミックレンジの拡大を実現していた。今回のEXRでは、同じ色の画素を2つ使うことで、ISO感度に依存せずにダイナミックレンジを拡大できるようになった、という。
Fine Capture Technologyは、全画素をフル活用して解像感の高い画像を生成するという技術。細かいディテール再現に威力を発揮するという。
この3つの撮影方法をシーンに応じて切り替える、というのが今回のEXRの大きな特徴。ブースの説明員によれば、技術的な開発に加え、同色の画素を並べるという「発想の転換」(同)が開発のポイントだったらしい。基本的には「コンパクトデジカメで有利な技術」(同)であり、「FinePix S5 Pro」のようなデジタル一眼レフカメラ向けの撮像素子にも同センサーを採用するかどうかはまだ検討課題だという。
ただ、EXRによってコンパクトデジカメの画質はこれまでのFinePixシリーズ以上に美しくなる、とブースの説明員は話していた。来年初頭にはこれを採用したカメラが登場してくる予定だ。
また、3D写真が撮影できる独自の「3Dカメラ」も参考出品されていた。これは画像処理エンジンの「RP(Real Photo) Processor 3D」が2つのレンズと2つのCCDから得られた情報を混合し、1つの画像として表示することで3D表示が実現できるというもの。
さらに液晶にも「光の方向をコントロールするモジュール」が組み込まれ、右目と左目の方向に光をコントロールする、のだということだが、詳細は明らかにされなかった。いずれにしても、この技術によって画面の3D表示が実現されている。
実際に撮影してみると、特にスピードとしては違和感なく撮影が行われ、3D画像が表示される。デジカメへ搭載する独特の機能として、面白い取り組みだといえるだろう。