東京・目黒通りのデザインホテルとして知られるホテル クラスカがこのほどリニューアルし、複合文化施設「CLASKA(クラスカ)」としてオープンした。これまでのホテルとしての機能に和をテーマとした客室を新設した「Hotel CLASKA」、レストラン&バーの「KIOKUH(キオク)」、イベントスペース「Studio CLASKA」、さらにギャラリー&ショップの「DO(ドー)」を加えた。

多くのセレブリティに利用されてきたホテル クラスカが『クラスカ』としてリニューアルオープンした

ホテル クラスカと言えば、1960年代に建てられ地域のホテルとして親しまれてきたホテルニューメグロを、2003年にクリエイターたちの感性によってリノベーションを行い、空間デザインや家具、調度にいたるまで従来とは一線を画したホテルに生まれ変わらせる事で、国内はもちろん、世界的にも注目されるデザインホテルとして海外にもその存在感を知らしめてきた。また、さまざまなイベントやパーティ、クリエイティブな活動の拠点としても、多くのアーティスト、クリエイターが集まる場所として親しまれてきた。

今回、CLASKAの第2幕として、新たに"NIPPON"をテーマに、インテリアやエクステリアなどのデザイン面だけでなく、カルチャーを発信する場として、再始動した。CLASKAに新たな感性を注入するのは、統括責任者を務める大熊健郎氏をはじめとする国内外のクリエイターだ。大熊氏は2006年までイデーにおいて商品企画部責任者を務め、編集者、ライターとしても活躍する人物。大熊氏らのディレクションにより、CLASKAはさまざまなカルチャーが出会う装置として機能し、"コンテンポラリー・ジャパニーズ"を発信していく。

統括責任者の大熊健郎氏

代表取締役の木野村明廣氏

Hotel CLASKAに加わった新たな客室のテーマは"Tatami(タタミ)"。シンプルな畳とベッドをミックスしたスタイルで、和室の新しいスタイルを体現していると言えるだろう。白を基調に琉球畳を使いつつ、印象的な朱をアクセントに配しており、都会のただ中にいる事を忘れさせる落ち着いた空間を演出している。海外からのゲストにとっては、日本のリゾートにでもいるかのように感じるだろうし、日本人にとっては、いまの日本のモダンな暮らしの空間に近いイメージを持つかもしれない。空間デザインを担当したのは、イデーにおいてSputnik(スプートニク)のメインのデザイナーとして活躍し、現在はフリーでインテリアプロダクトのデザインを手がけている岡嶌要氏。タタミの新設により、Hotel CLASKAはこれまでのジャパニーズモダン、ウィークリーレジデンスにタタミの3部屋を加えた3タイプ、15室を提供して行く事になる。

タタミはひくく暮らす日本の文化をうまく取り入れた客室だ

ベッドもひくくふとんのイメージに近い

座卓は碁盤を想起させるデザインだ

朱のアクセントが日本のトラディショナルを感じさせる

ホテルとして重要な顔となる1Fのレストランには、これまでのカフェから一新し、季節を楽しむ"旬菜料理"と玄米を中心としたレストラン&バーKIOKUHをオープンした。「食」が五感にまつわる記憶である、という新しい切り口から、コンテポラリー・ジャパニーズ・ダイニングを提唱するもので、食材そのもののおいしさを大切に、体に優しいメニューを提供する。夜にはバーとしても営業する。KIOKUHには、表参道にあった自然食の飲食店「Kuh」を手がけてきた伊藤和江氏を飲食部門責任者として迎えており、今後、伊藤氏の料理教室なども開講する予定だ。

3Fには新たにレンタルスペースおよびレンタルスタジオのStudio CLASKAがオープンした。これまでも数多くの撮影が行われ、さまざまなイベントが行われてきたホテル クラスカだが、Studio CLASKAでは、より自由な発想でイベント、撮影、展示会、パーティなどを行う事ができる。3つのスペースが用意されており、その中にはキッチンを備えたスタジオも用意されている。オープニングには、クラスカとタニグチのコラボレーションにより、64台のスピーカーが奏でるクラシックオーケストラ「『音の森』Sympho Canvas R」が披露された。

広々としたStudio CLASKAではこれまでのようにさまざまなイベントやショーが開催されるだろう

クラスカが提唱するコンテポラリー・ジャパニーズの発信を中心的に担うのは、2Fにオープンしたギャラリー&ショップ「DO(ドー)」。ワンフロアを占有する広々とした空間には、毎回、オリジナルのプログラムによる企画展を展開していくとともに、国内外のクリエイターの手によるオリジナルやセレクトした製品を展示販売する。オープニングの企画として、第一回企画展「47」、ならびに「白~近江の麻布 江戸からいま」を開催している。

「白 ~近江の麻布 江戸時代からいま」

ギャラリーで開催されている「47」展で展示されているアイテムは販売されているものある

左の急須より右まわりに。リコルディアンドスフェラによる清水焼急須、ジャタマンシのシャンプーとリンス、陶芸家安倍太一氏のキャンドルスタンド、漆文庫 春慶塗、宮城県産雄勝石の硯灰皿、ポスタルコのトラベルウォレット、利休箸と箸袋のセット(箸袋はGRAPH北川一成氏デザイン)

「47」では47都道府県各地から集めた47のアイテムを展示している。地域の特質を活かした食材や職人の手技から編み出された工芸品だけなく、地域を代表する工業製品やソフトウェアなど、広く日本の物産を対象に紹介している。「白~近江の麻布 江戸からいま」は47アイテムのひとつとして、500年の伝統を持つ近江の麻作りで、江戸時代に使われた大麻を織り込んだ麻を麻布研究家・吉田真一郎氏の見立てにより展示している。

今後は、「矢倉理江「CARESSER LA MAISON(家をかわいがる)」」、「push me pull you 澄敬一の鳩時計」、「岡嶌要の縁起物展」、「クラスカの「紙」展」、「K氏の家具」などの展示会の開催を予定している。