「学生向けでも純増数ナンバーワンになる」と語る孫正義社長

既報の通りソフトバンクモバイルは、小学校から大学・専門学校までの生徒・学生を対象に、ホワイトプランの基本料を3年間無料にすることなどを中心とする新たな料金制度「ホワイト学割」を、期間限定で実施する。従来、同社の浸透が進んでいなかった「学生層」からの需要掘り起こしとともに、ユーザー数全体をいっそう増加させることを図る。

今回、同社が実施するサービスでいう学生とは「小学校以上で連続12カ月以上の就学期間を要し、かつ入学・卒業が年2回以下で固定されているなど、当社が指定する条件を満たしている学校に在籍する」(同社)者と定義されており、年齢の制限はない。携帯電話機購入を伴うソフトバンク3Gサービス新規契約時に、同時に申し込むことが割引の利用条件となる。

ホワイトプランの基本料無料とともに、サービスの柱となるのは情報料無料(通信料は必要)で使えるコンテンツを集めた「コンテンツ学割クラブ」だ。さまざまな装飾をしているテンプレート素材やGIF画像の「マイ絵文字」素材など、「デコメール」に用いるための合計10,000点以上のメール素材をダウンロードできる「タダデコ」とともに、2,100本以上のコミックを読める「タダコミ」、1年後をめどに1,000本のソフトをそろえる「タダゲーム」、同じく日本の名作文学など500本を供給する「タダ本」などを用意している。

学生は3年間、ホワイトプラン基本料が無料に

デコメールの素材などさまざまなコンテンツも無料になる

孫正義社長は「携帯電話代を稼ぐために、学生があちこちでアルバイトをしなければならないというのは、ちょっとおかしいのではないかと思っていた。学生は最も頻繁に携帯電話を使っており、最も高価格の端末を買っている」と指摘、いわば"上得意客"である学生層を優遇することで「これまで、学生には弱いとされてきたソフトバンクを、一気に、学生に愛される事業者にしていきたい」と話す。

ただ、今回のサービスは、申し込み受付期間が2月1日から5月31日までという、入学・進学時期にあわせたキャンペーンとの位置づけで、新規加入に限られており、キャンペーン終了後の措置は「別途、検討する」(孫社長)としている。また、新規加入でない既存学生ユーザーへの対応は、4月1日に発表する予定であることを明らかにした。

同社は、旧ボーダフォンを買収して携帯電話市場に参入したとはいえ、その時点では先行する競合2社に水をあけられており、差を縮めるのは容易ではなかった。そこで、シェア拡大への特効薬として、次々に仕掛けが繰り出された。まず、月額基本使用料が980円で、1時から21時までの通話はソフトバンク携帯同士であれば無料の「ホワイトプラン」、次いで、「ホワイトプラン」プラス980円で国内通話料が半額になる「Wホワイト」、さらに、家族間での通話が24時間無料となる「ホワイト家族24」を打ち出した。これらの策は効果をあげ、同社の純増シェアは2007年5月から12月まで8カ月連続首位を続けている。「ホワイト学割」は、競争力ある料金プランでユーザーを吸引する、いわば「ホワイト戦略」の第4弾だ。

それにしても「ホワイトプランの基本料が3年無料」とは、たしかに他社に対する破壊力は大きいが、強力な砲弾を打つことによる自社への反動もまた大きい。孫社長は「学生1ユーザーあたりからの収入は間違いなく減る」と認める。さらに「学生向けに基本料3年無料というのは、私が発案した。社内では、減収分が多くなるとして、管理部門が猛反対したが、押し切った。とりあえずキャンペーンとしての実施ということで、コンセンサスを得た」(同)という。

内部からの反発を抑えてまで、孫社長がこの施策に踏み切った背景には「当社の累積ユーザーで見ると、学生のシェアは7%に過ぎない」(同)との事実がある。学生層のARPU(Average monthly revenue per unit: 1ユーザーあたりからの月間平均収入)が減少しても、現時点ではこの層の占めるシェアが小さいことから、相対的に事業全体への影響は比較的小さくなり、一方、このプランによるユーザー数増加が見込めることや、学生ユーザーの獲得加入をきっかけにその家族の加入につなげることなどで、同社は増収効果を期待している。

学生層は同社の累積ユーザーではわずか7%とはいえ、「もともと最もARPUが高い」(同)のも学生だ。ユーザー数がどのくらい増加すればその減収分を補えるのか。孫社長は「シミュレーションは何度もしたが、やってみないとわからないところもある」として、このプランが恒常的なものになるかどうかは「(申し込みが終了する)5月末までに、減収分などを検討して」(同)、定着化させるか、停止させるか判断するという。だが、孫社長は強気だ。「マーケットシェアはまだまだ少ない。ユーザー数を増やすのが先決」と語る。学生のシェアが7%だからこそできるともいえるこのサービス。5月末までにこの7%がどこまで拡大するかが、さしあたり、新たな「ホワイト戦略」の鍵となるだろう。

孫社長と、「ホワイト学割」のCMに出演する学生たち。主演はやはり、「お父さん」?