「Skype」でテレコム業界に革命を起こしたSkype Technologies(米eBay傘下)の共同設立者Niklas Zennstrom氏が9日、ハンガリー・ブダペストで開催された技術イベント「ETRE 2007」でスピーチを行った。Zennstrom氏はここでSkype CEO退任の背景、そして自身の今後について語った。
「後悔はしていない」- JoostのCEOとして登壇したZennstrom氏は、繰り返しこう述べた。eBayは1日、2005年に買収したSkypeのCEOの退任、それにSkype買収金額の引き下げを発表した。eBayはSkypeに関して合計10億500万ユーロの減損処理を行う。
今回のスピーチは、Zennstrom氏がこの発表の後にはじめて公の場で行ったものだ。
Zennstrom氏はまず、SkypeのCEO辞任は自らの決断であると述べた。「会社にとって正しいことをしたいし、その必要がある」とZennstrom氏。「これは自然のプロセスであり、買収されたときからいつかは引き渡すつもりだった。まだ会社が強いポジションにある今辞任すべき、と今回判断した」と語る。
eBayについては、「eBayのSkype買収金額は高すぎた」と認めた。また、「売上に変えることを急ぎすぎた気もする」とも述べる。だが、Skypeに批判はあるものの、同社は順調に成長していることも強調する。ユーザ数は2億2,000万人に達し、第2四半期の売上高は前年同期比100%増の9,000万ドル。米Microsoftらが同様の音声通話サービスを提供する中、「順調にシェアを広げている」とZennstrom氏は言う。製品開発プロジェクトも進んでおり、すでに発表した「Skype Prime」「Skype Find」などのほか、シード段階のプロジェクトもあるという。
2005年にSkypeを売却しなければ、いまごろはGoogleやFacebookのような存在になっていたのではないか? という質問に対し、Zennstrom氏は「可能性はある」「2年前にeBayによる買収を受けることを決定したとき、早すぎるかとも思った」としながらも、「後悔はしていない」と語る。
Zennstrom氏は今後、Skypeを共同で創業したJanus Friis氏と再度組んだインターネットTVサービスのJoost(オランダ)にフォーカスする。この日は自身とFriis氏のもう1つのプロジェクトAtomicoを紹介した。Atomicoは投資会社で、リスクキャピタルグループ。すでにFON(スペイン)、米Technorati、英Last.fmなどに投資している。
Atomicoの立ち上げは、41歳のZennstrom氏にとって個人的な願いが込められているようだ。Skypeをスタートした当初、「資金調達がものすごく難しかった」とZennstrom氏。欧州は起業家と投資会社を結ぶネットワークがなく、雇用も難しい。スウェーデン出身のZennstrom氏は、欧州の起業家を育成したいと語る。だが、投資に関しては経験が少なく、アマチュアと認める。「起業家が起業家に投資する」とZennstrom氏。現在、毎月1社の割合で投資しており、投資先は約20社を数えるという。
Zennstrom氏はファイル共有ネットワークKaZaAを共同で設立、Skype、そしてJoostとPtoP技術をコアに企業を立ち上げてきた。自身のこれまでを振り返り、成功した理由について「強い決意、粘り強さ、タイミング、よいチームの組み合わせ」と分析する。中でも、タイミングとよいチームは重要と言う。「資金調達に苦労したが、自分がやっていることを信じていた。Skypeでは特に、少人数のものすごくよいチームに恵まれた」(Zennstrom氏)。
今後、技術/ビジネス業界から引退するかどうかについては、「まだ決めていないし、いまではない」というが、同氏は現在、Joostでは執行的役割を執っていない。