連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。
小規模宅地等の特例とは?
「小規模宅地等の課税価格の計算の特例(以下、小規模宅地等の特例)」とは、前回述べたように被相続人(亡くなった方)が住んでいた土地や事業を営んでいた土地は、そのまま相続税の計算がされると、多大な相続税が課され、相続人である配偶者や子供は住んでいた家や事業用敷地を手放さなくてはならないケースも生じます。これを避けるための特例です。
下記の表のように特定の条件を満たせば、課税割合が1/5に圧縮されます。特定事業用宅地(≦400平方メートル)と特定居住用宅地等(≦330平方メートル)については、平成27年1月1日改正後は、合わせて730平方メートルまで適用できるようになります。その他の異なる区分の小規模宅地等を併用することもできますが、区分ごとに細かい案分計算が必要です。
特定居住用宅地等とは~配偶者が取得する場合は無条件で20%まで圧縮~
被相続人の居住の用に供されていた宅地等(一つに限る)の評価は、下記の(1)または(2)の要件を満たす場合は、課税割合が20%になります。
(1)配偶者が相続
(2)次のイからハのいずれかを満たす被相続人の親族が相続等により取得した場合
イ 被相続人の親族が、相続開始直前にその宅地等の上にある被相続人の居住用家屋に同居していた者で、申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その家屋に居住していること
ロ 上記(1)または(2)-イに該当する者が存在せず、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した親族が、相続開始前3年以内にその者又はその者の配偶者の所有する家屋(相続開始直前に被相続人が居住していた家屋を除く)に居住したことがない者であり、かつ申告期限まで引き続きその宅地等を所有していること
ハ 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等で、被相続人の親族が申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること
二世帯住宅と小規模宅地~相続が"争続"に! 二世帯住宅の難しさ~
二世帯住宅は相続時にトラブルになりやすい危険を孕んでいます。日本人の財産の中で居住用財産は大きな部分を占めます。子供が複数いる場合は、二世帯住宅に居住している子供以外の子供に配分する応分の資産がないと揉める原因となります。その子供が正当に権利を主張した場合、その子供に分配する財産、又は二世帯住宅を受け継ぐ子供が、他の子供に相続財産の代わりになる資産を提供できない場合は、二世帯住宅を売却換金して分配しなくてはならないケースも考えられます。
しかし二世帯住宅は売却しようとしても、需要の関係で有利な条件では売却できないケースが少なくありません。二世帯住宅は相続が"争続"にならないように、計画するときから相続のことも合わせて考えておくことが大切です。平成27年1月1日改正後は、完全分離タイプの場合にも小規模宅地等の適用が可能になります。
(※イラスト画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。