連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。
支援制度活用のポイント - 耐震診断は信頼できるところに!
高齢者世帯などの被害が多い悪徳リフォームの事例として、補強金具の類が意味のない位置に、意味のない形で取り付けられているケースがよく報道されていました。耐震補強金具は取り付ければよいというわけではなく、有効に働くように建物全体のバランスを見て、正しい位置に、正しい方法で取り付けなければ意味がありません。取り付け位置や方法によっては、意味がないどころか、全体のバランスが悪ければ、建物にいびつな力が働き、地震への対応力を弱めて結果になりかねません。無駄なお金を使わないためにも、いきなり耐震工事をするのではなく、しっかりとした耐震診断を依頼してください。できれば工事会社と診断会社は別の方が公平を期待でき、安心です。
耐震リフォームの支援制度は、情報・補助金・融資・税制などがあります。どうすれば安心できる耐震改修リフォームとなるのか、先ずは情報収集から利用しましょう。大半の都道府県は耐震診断・改修設計・改修工事すべてに支援制度を設けていますが、改修設計や改修工事については支援を行っていない都道府県もあります。詳細は管轄の地方自治体へ問い合わせください。また、住まいが幹線道路等に面している場合は、耐震診断が義務付けられている場合があり、支援も別途設定されています。
耐震改修補助金制度 - 耐震改修事例を多く入手しよう
管轄の市区町村で、耐震診断や工事の依頼先がリストアップされています。診断方法や耐震設計、耐震改修工事の実績などを担当者に相談してください。建物の設計図などを持参すると相談しやすいと思います。最初の診断の相談の時に設計や工事までの流れと仕組み等を一気に把握することをお薦めします。どのような診断をして、どのような工事を行うのか。おおよその費用はどの程度かなどを把握し、補助金制度の有無と併せて、支出しなければならない費用を算出します。補助金の割合は下記の表となっています。詳細は地方自治体にお問合せください。
融資の支援制度 - リフォーム融資の制度は耐震リフォームが要
住宅金融支援機構の業務は、一般の住宅ローンについては「フラット35」のように民間住宅ローンを証券化する役割となっていて、支援機構自体は直接の融資を行っていません。しかしリフォーム等については独自の融資制度があります。一般的な改修工事も融資の対象とはなりますが、必ず耐震改修工事を併せて行う必要があります。
(※参考:その他に、返済が利子相当分だけで済む高齢者向け返済特例制度もあります。詳しくは住宅金融支援機構にお問い合わせください。『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』でも解説していますので参照ください)
税制上の優遇制度 - リフォーム減税制度のメインは耐震改修
政府が設けている制度は、当然ながらその目的や狙いがあります。住宅の分野の政策は、住まいが衣食住のひとつで生活上必要なものであること、金額が大きく関連産業の裾野も広いことなどから、経済の活性化の目玉として位置づけられてきています。それに加えて耐震リフォームは、生命と財産を守るという役割の大切さや、一旦地震が発生したならば、二次災害を含めて被害は膨大になり、国の支出も膨大に膨らむことから一般のリフォームやバリアフリー、省エネリフォームよりも重要な位置付けにあり、優遇制度の要となっています。
(※参考:リフォームに関する減税制度については、『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』を参照ください)
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。