Twitterを見ていると、試したくなるレシピツイートをしばしば見かけますが、なかには「レタスを1/4にカットして焼く」「ズッキーニを縦に切って焼く」「新玉ねぎと米を丸ごと炊飯器で炊く」といった、妙にダイナミックだけれどおいしそうなレシピも。

そんなツイートを投稿しているのが、旬の国産農畜産物に関する情報を発信する「JA全農 広報部」(@zennoh_food)の公式Twitterアカウントです。

現在は20万人以上のフォロワーがいる人気のアカウントですが、スタート時は暗中模索だったそう。しかしコロナ禍のとあるツイートをきっかけに、レシピや食べ方の豆知識を投稿するようになったと言います。さらにはこの6月には、食材のレシピや豆知識をまとめた書籍『JA全農広報部さんにきいた 世界一おいしい野菜の食べ方』(KADOKAWA刊)も発刊しました。

今回、JA全農広報部Twitterアカウントを担当している福田敦子さんに、なぜJA全農が国産農畜産物の情報を発信するのか、またTwitterを始めてどんな変化があったのか、お話を伺いました。

意外と身近!?「JA全農」のお仕事

――いつもツイートを見ては夕飯の参考にさせてもらっています。おいしそうな国産農畜産物を日々ツイートされていますが、そもそも「JA全農」さんは一体どのような組織なのでしょうか?

「JA全農(全国農業協同組合連合会)」は、JAグループの経済事業に携わっています。大きく分けると役割はふたつあり、ひとつは肥料や農薬、畜産の飼料、ビニールハウスといった資材など生産者の方が農業に必要なものを提供する仕事です。

もうひとつは農畜産物の流通や販売です。野菜を安定して市場へ流通させたり販売促進を行ったり、生産者と消費者のかけはしとしての役割を担っています。皆さんが食べているお米や野菜、お肉などの食材のどこかに、JA全農がかかわっていることも多いと思いますよ。

――Twitter以外にも、身近なところで関わりがありそうですね。広報部さんでは具体的にどんな取り組みをしているのでしょうか。

JA全農の組織全体の広報はもちろん、国産の農畜産物をより多くの方に食べてもらう取り組みもしています。TwitterやnoteといったSNSや、広報誌「Apron」の制作、この春からはグループ広報誌「みのりのおと」も手掛けています。

  • 社内報的な立ち位置のグループ広報誌「みのりのおと」。おいしそうな写真とともに、JA全農の仕事の幅広さに驚く

――様々な方法で発信をされていますが、なかでもTwitterはどんな役割があるのでしょうか?

自力で即時に投稿ができることがTwitterの強みですね。農産物は天候などにより市場に出回る量が左右され、出回り量が一気に増えると安くなってしまったりと、需給のバランスにより値段が上がり下がりしやすいものです。「いまこの野菜を買ってほしい! 食べてほしい!」と瞬間的な事態に対してすぐに情報を発信できるのは、Twitterならではだと感じています。みなさんのおかげでフォロワーさんも増えたので、「国産農畜産物を食べてほしい」という想いを広く伝えられるようになりました。

――確かにおいしそうなレシピツイートを見かけたら「夕飯に一品足そうかな」と買いたくなりますね。農畜産物の情報発信とTwitterは相性が良いのかもしれません。

ひとつのツイートでどれだけ消費量が伸びたかまでは測れませんが、何もやらないよりは1個でも2個でも多く食べてもらえるはずだと思っています。

――2019年7月のTwitterアカウント開設から現在3年目となります。企業アカウントとしては比較的最近スタートされていますが、開設のきっかけは?

情報発信をするにあたり、世の中的にSNSが重要、ということで遅ればせながら始めましたが、実際は上司の鶴の一声です(笑)。最初はゴールもはっきり決まっておらず、暗中模索でした。

――企業公式SNSにとってはあるあるなエピソードかもしれません。

何を投稿すればよいかも決まっておらず、最初の頃は新商品やイベントのお知らせをツイートしていたのですが、鳴かず飛ばずで細々と投稿し続けていました……。

「ラッシーを…作るのです…」コロナ禍でバズツイートが爆誕

――試行錯誤のツイートをするなかで、これは反響が出てきたぞ? というきっかけはありますか?

2020年4月に投稿した「ラッシーのつくり方」のツイートは大きな反響がありました。レシピや豆知識は反応が良いのかもと気づいたきっかけになりましたね。

――「(……きこえますか…)」と呼びかける、いわゆる「Twitter構文」も印象的なツイートです。このツイートを投稿した背景は?

2020年春に緊急事態宣言が発令された際、学校休業の影響を受けて給食向けの牛乳がキャンセルされるなど、牛乳の需要が大きく落ち込みました。一方、乳牛は春先が出産ピークで、生乳の生産が増えるタイミングです。乳牛の病気を防ぐためにも搾乳は続ける必要があり、生乳を廃棄する危機に陥りました。

廃棄を回避するために農水省では「牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費しよう」と呼びかける「プラスワンプロジェクト」も行っていました。私たちも牛乳を取り扱う組織なので、なんとか消費を喚起したい、どうしようかと考えていたところに、広報メンバーのひとりが「牛乳とヨーグルトでラッシーを作れるぞ」という豆知識を教えてくれたんです。

このレシピツイートは34万件以上のいいねと大きな反響がありました。今思えば当たり前かもしれませんが、そこからレシピやちょっとした豆知識の投稿を増やし始めましたね。

――「作りました!」という声もリプライで続々と寄せられていました。発信する内容は、どんなことを心掛けているのでしょうか。

一番は、読んだ人がすぐ試してみたいと思ってもらえる内容にしています。今もどうすれば試してもらえるのか模索している状況ではありますが、材料がシンプルで簡単なレシピは反応が良いのかなと感じています。また味もゴテゴテせず、素材の味を楽しめるレシピが受けるようですね。

――レタスを四等分して焼いたり、ナスをホットサンドメーカーで焼いてみたり、料理ってこんなにシンプルでもいいんだと試したくなるレシピも多いです。

「いつも焼いてばっかじゃないか」と言われることもありますが、美味しく食べられればいいかな! と思っています。

――レシピのポイントを押さえた写真も、これならチャレンジしたいなと思っちゃいますね。

レシピの要所要所を撮影して、「これでみんな作っているところを想像できるだろう」と信じて4枚選んでいます。料理を作りながらきれいに撮影するのも意外と大変で……トースター使ったら中が汚かった、とか(笑)。夕ご飯を作りながらチャチャっと撮影、とはなかなかいかないものなので、日々頑張っています。

――投稿されているレシピや情報は、広報部の皆さんが企画しているのでしょうか?

広報企画課のメンバー7人で企画しています。またJA全農にはお米や野菜、肉などを扱う多くの部署があり、そこからもオススメの情報を聞いてアピールできそうな投稿を考えています。

――アカウントを運営する中で大変なことはありますか?

どの企業のTwitter担当さんも苦労されていることだと思いますが、業務の合間を縫ってなんとか細く長くやりつつ、常にネタは探しています。また今となっては組織内で存在が認知されるようになりましたが、フォロワーさんが増える前は「そんなに頑張ってどうなるんだよ」という目線を感じたり、肩身の狭さはありましたね。

――最初は肩身が狭かったとのことですが、Twitterを始めたことで、組織内外での変化はありましたか?

まず組織内では、アカウントのフォロワーさんが多くなってから「投稿してほしい」と情報が集まるようになりました。対外的に情報を発信できるツールだということが組織内で認知されるようになったのは、ここまで成長できたからだなと感じています。

組織外については、Twitterのフォロワーさんやツイートを見た方が寄せてくれる「こうやって食べていますよ」という声や、食材のイメージに関するリプライや引用リツイートは勉強になっていますね。私たちはある意味野菜を知りすぎちゃっているので、一般の方々が農産物に抱くイメージがわからないところもあります。「その野菜ってそう見られているのか」「ここが使いにくいのか」といった発見もあります。

またTwitterでアンケートをやってみたり、直接声を聞けるツールがあるのは強いですね。アカウントに関連して、広報部が取材を受ける機会も増えました。

――レシピツイートは、このアレンジもおいしいよ! と皆さんがリプライで盛り上がることもあります。

シンプルなレシピなので、みなさんのアレンジしてみたい欲や誰かにシェアしたい欲を刺激しやすいのかもしれません。そしてアレンジのコメントは目を皿のようにして読んでいます。

去年「柿は焼いてもうまい」というツイートをしたのですが、この投稿、実は「柿を生で食べたらおいしい」とつぶやいたところ、リプライで「焼いて食べるとおいしい」と教えてもらったことがきっかけでした。

――このツイートも大きな話題になりました。レシピは広報部のみなさんで考えられたのですか?

リプライを見て「焼き柿がおいしいらしい」と部内で話したところ、「広報誌『Apron』で紹介しているよ」と教えてもらいました。すでに組織にレシピがありましたね……。

――周囲に野菜や肉のプロがいて、知見やレシピの情報が蓄積されているのもJA全農さんならではですね。

JA全農広報部さんにきいた、夏にオススメの野菜は?

――さて、6月には書籍『JA全農広報部さんにきいた 世界一おいしい野菜の食べ方』(KADOKAWA刊)も刊行されました。こだわったポイントはありますか?

ただのレシピ本ではなく、野菜の豆知識+情報を組み合わせた書籍です。今夜のおかずを作るのに役立ててもらうことはもちろん、野菜に対して愛着を持ってもらえるような本にできたかなと思います。冷蔵庫のあの野菜使い切りたいな……という時にもぜひ使って欲しいです。

――これから7月~8月の時期にオススメの野菜はありますか?

トマトやキュウリはこの時期鉄板ですね。書籍でも様々なレシピや、買う時の選び方、保存方法などを紹介しています。

  • 書籍『世界一おいしい野菜の食べ方』より抜粋

それから過去にツイートでも紹介しましたが、トマトだったら卵炒めとか、意外とお味噌汁の具にするのもおすすめですよ!

あと、夏はオクラやナスもおいしいですね。焼きびたしにしてお酒のつまみにもぴったりです。

――最後に、Twitterのフォロワーさんをはじめ、ツイートや書籍を読まれる方に向けてメッセージをお願いします。

Twitterや書籍を読んでいただいて、リプライや反応をいただいて担当者一同嬉しい気持ちで読んでいます。そういった声を励みにこれからも国産農畜産物の情報を発信していくので、たまに読んでいただけると嬉しいです。

書籍『JA全農広報部さんにきいた 世界一おいしい野菜の食べ方』

さっそく今日の献立にも使える!野菜の便利帳。大人気公式Twitterの食材豆知識をもっと詳しく!

  • キャベツは刻まず4分の1カット蒸し
  • 小松菜は凍らせて調理するのが便利
  • トマトはお尻においしさの秘密あり
  • ブロッコリーは丸ごとチン!
  • にらは醤油に漬けて白飯のお供に…etc.

農産物のプロJA全農 広報部(@zennoh_food)直伝! 今すぐ使える野菜のティップス。