Z世代のお金の悩みに、節約アドバイザーの丸山晴美さんが答えます。今回は、奨学金の返済について考え方を教えていただきました。
Q. 社会人になって奨学金を返済しています。生活と奨学金返済のバランスと注意点を教えてください。
奨学金には「給付型」と「貸与型」があり、返済義務があるのは「貸与型」です。「貸与型」の奨学金を借りて大学などを卒業した場合、社会に出たと同時に奨学金の返済がスタートします。
4年生大学で奨学金を借りた場合は、14~20年ほどの返済期間となり、長期間に渡って返済が続きます。そして「貸与型」の奨学金にも、無利息の「第一種奨学金」と、利息が付く「第二種奨学金」があり、平成19年4月以降に奨学生なった場合は、利率算定方法が選択制になっています。
貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される「利率固定方式」と、返還期間中、おおむね5年ごとに見直される利率が適用される「利率見直し方式」です。利率見直し方式の方が固定方式に比べると利率は低くなっていますが、現状の利率固定方式は、0.15~0.3%、利率見直し方式は0.002~0.005%ですが、どちらを選択していたとしても、かなり金利が低く、同じく金利が低い住宅ローンの変動金利でも0.4%前後であることを考えると、毎月確実に返済をするものには違いありませんが、返済の優先度としては低めです。
奨学金以外の借り入れがある場合は、金利が高いものから返済することでかかる利息を減らす効果があります。リボ払いやキャッシング、分割払いなど金利が高い借り入れがあれば、それらを優先して返済しましょう。
奨学金の返済と住宅ローンの頭金どちらを優先すべき?
Q. これからとにかく早く返済することを目指すべきですか? 住宅購入などを見据えて現金を温存しておいた方がよいですか?
もし仮に今まで奨学金の延滞があるのであれば、奨学金の完済をおすすめします。その理由は、日本学生支援機構で借り入れをしていて、延滞3カ月以上の場合に「個人信用情報機関」に個人情報が登録されます。つまり個人信用情報機関に延滞者として登録されると、その情報を参照した金融機関がその人を「経済的信用が低い」と判断され、住宅ローンだけではなく、クレジットカードや自動車ローンなど各種ローンが組めなくなる可能性があります。また、延滞を解消しても一般のクレジットカードと同様に約束どおり返済している人の情報として登録され続け、返済完了の5年後に削除されます。
つまり一度でも延滞を3か月以上したことがある人は、信用に傷が付いている状態です。そしてその信用を取り戻すためには、完済してから5年かかるため、住宅購入などでローンを組むことを想定しているのであれば、住宅の頭金の前に完済を目指し、完済後5年間で住宅ローンの頭金を貯める必要があるでしょう。
奨学金があると住宅ローンが組めない?
奨学金があるからと言って、住宅ローンが組めないというわけではありません。まずは、きちんと延滞なく支払いを続けていることが大切です。そしてまた、借入状況を申告する欄に記入する必要がありますので、必ず申告しましょう。たとえ無利息の奨学金であったとしても、借り入れには変わりがありません。お金を借りることは金融機関との信頼も大切です。書類に記載をせずに、審査で奨学金が発覚した場合は、審査が打ち切られることもあるので気を付けましょう。
奨学金は返せるときに返すべき?
いくら借り入れ金利が低い奨学金とは言え、いつかは完済すべきものです。そしてまた、返済期間が10年以上の長期間に渡るためその間、失業や転職など収入が不安定になる可能性がゼロとは言い切れません。
また、子育てや住宅購入などお金がかかる時期の奨学金の返済は負担になりがちです。もちろん、傷病や失業など経済的に返済が困難になった場合は、返還期限の猶予を申請することで、一定期間返還期限を延期することはできます。
返済をするかどうかのポイントは、ご自身が繰り上げ返済をして一日も早く自由の身になりたいと考えるかどうかではないでしょうか。
同じ100万円でも、引越し費用や転職など他にお金が必要であれば、そちらにお金は優先的に使う必要がるでしょう。また、100万円あれば、投資運用したほうが繰り上げ返済をするよりも利益が出せるというのであれば、それもまた一つの考え方でしょう。ボーナス分を奨学金の繰り上げ返済や完済に充てて返済期間を短くしてもいいでしょう。また、無利息もしくは利息が低い奨学金なのだから、気長に毎月返済し続けて別途、結婚資金や住宅購入の頭金を優先して貯めたい。これらどの考え方も正解と言えるでしょう。
大切なのはご自身の今後のライフプランを考えながら、貯蓄と返済計画を両立させていくことです。