暖かいと思えば、めちゃめちゃ寒い今日このごろですが、いかかお過ごしでしょうか? 私の周りでは、「仕事もプライベートもやる気が起きない」なんていうお友達がちらほら。はたまたショックなどん底から少し時間が経ったお友達は、住む場所も仕事もこれから再出発。なにもないところから始めるにあたって、「あれやろうかなぁ。ココ行こうよ! 新しく始める前にひとり旅でもしてこようかなぁ」なんて話しているのを聞いて、不思議だなと思ったのです。

両者を客観的に見てみて、「仕事もプライベートもやる気が起きない」方のほうが一見恵まれた環境に見えるんです。仕事もちゃんとあって、プライベートも自分のおこづかいを自由に使える環境。かたや、やる気満々のお友達は、時折は不安だと言ってみたりもするけれど、恵まれた環境にいたころよりも今の彼女のほうがいろんな意欲が湧き上がっていて、行動力もある。人間の「火事場の馬鹿力」なのでしょうか。

辞書でこのことわざを調べたところ、「人間はある差し迫った状態に置かれると、普段なら到底考えられない、とんでもない力を発揮するもの」だということ。普段なら到底考えられない力が出るもんなのですね。あまり差し迫った状態に置かれたくないですが、恵まれた環境にいるときこそ、そういう気持ちを忘れないでいたいなと思いました。

で、私で言う「差し迫った状態」に先週末、置かれました(笑)。このお仕事は(みなさんのお仕事も、もちろんそうでしょうけど)、ある意味、差し迫る状態が多い気がします。よくコラムでも書きますが、格闘技のリングに上がって試合する機会が多い=毎回ビビる(が試合はする)。そして先週末の試合は「英語でも歌うレコーディング、オーケストラ50人」でした。オーケストラの方々が50人も生演奏するレコーディングと聞くだけでも、「えぇ!! 今どきマジィ!!」であり、「っていうかオーケストラで歌うっていうのは、ず~っと夢だったんですけどぉ」ということもあり、横山先生(『聖闘士星矢』の音楽監督でもある大先生)の指揮棒を振ってレコーディングされている貴重な姿をスタジオから見ながら、感動と緊張。

プロの方だから当たり前なんでしょうが、みなさん「せぇ~の」で、誰も間違えない=録音するための音の調整に1回、レコーディングに1回、はい、お疲れさまぁ。「えぇ! 楽器版美空ひばり?」。そうなんです。横山大先生のスケジュールを見ると、歌録りに「1時間30分」しかとっていないんです。今回は日本語と英語のレコーディング。私の中では、日本語に1時間(ほんとは1時間30分)、英語に2時間(ほんとは3~4時間?)というより、英語の仮歌もないまま、果たして大丈夫なのだろうか? そう思いながら、このスケジュールで見ると、オーケストラの方々のように「チャッチャッと歌う」というのが求められているようです。

そして今回の音楽は「今まで一度も歌ったことがないような音楽」でありまして、いつも「新しい歌です」なんて言っていますが、ポップスとか歌謡曲とか、そういうものの次元とは違う新たな音楽でしたので、どう表現して歌うかということもありました。そこへきて「英語でしょ~!!」デス。必死に目で追い、歌ってみても、ひとつの音符になんだか発音しなくてはいけない言葉が3つも4つも……頭クラクラ、大先生も途中、匙を投げたのか? プロデューサー席から離れて、ジャンパーを着だしたそう(広いレコーディングスタジオだったので歌うブースからスタジオは見えず、後にマネージャーから聞きました)。

ほかのスタッフの方や通訳の方もいらっしゃったので、「ここもうちょっとSをちゃんとつけてくださぁい」とか言われながら必死のレコーディング。ようやく1時間も押す少し前に歌い終わり、みんなで聴いてみる。

「んー。いいけど、小学生みたいだな。悪くはないけど……」

そんな感じでありました。一応、完成はしているから好きなように、できればもう少し大人っぽく歌ってみて、ということで再度歌のブースへ。「やばい。時間もない! もう一応完成している歌があるから、好きなように歌おう!」。そう心に誓い、歌い始めました。そうしたら不思議、ツルっと歌えてスタジオからは「すごいよ! 別人みたいだよ!」とのお褒めの言葉が。

由美「あ、そうですか?」
スタジオ「いや、もうちょっと喜んだほうがいいよ! 大丈夫、ちゃんと大人っぽくなったよ」

と言ってもらえました。その歌録りのとき、ジャンパーを着て、プロデューサー席から離れた大先生が、歌が変わったからなのか? またプロデューサー席に戻ってこられたそうです(マネージャー談)。そんな差し迫る状況の中で、念願のオーケストラの音楽を堪能する余裕もまったくなく、無事レコーディングは終了したわけです。今回の音楽もぜひみなさんに「火事場の馬鹿力」ではないですが、聴いてもらえたらなと思っています。実は"フランスで発売されるCD"なのですが、詳しい詳細はまたお伝えしますので、お楽しみに! ではまた次週お会いしましょう♪
See you soon love xx.

横山先生とフランスのジェラルドさん。レコーディング終了後、素敵な中国料理店に行きました