映画やテレビ番組顔負けのハイクオリティな映像演出と、先が読めないドキュメンタリータッチの企画で人気急上昇中のYouTuber「だいにぐるーぷ」。10月7日時点で登録者数は76.3万人に達している。
中学時代からの友人6人で結成され、年齢は全員が22~23歳。登録者76万人超を誇る気鋭のクリエイター集団だ。特に人気が高いのは、心霊スポットや樹海村、無人島などで生活を送る「1週間」シリーズ。海外サスペンスドラマのように、一度見始めたら最後まで目が離せない中毒性を持っている。
どの作品も最高に面白いのだが、個人的には「1週間心霊スポット生活」「無人島からの脱出」「1週間逃亡生活 in アメリカ」「樹海の奥地にある、少し不思議な村で1週間生活してみた。」が特におすすめだ。この記事を読む前でも読んだ後でも構わないので、ぜひ視聴してみてほしい。
今回、そんなだいにぐるーぷのメンバー6人にインタビューを実施できた。だいにぐるーぷ結成当時の話や動画制作の話はもちろん、YouTuberという「仕事」にどう取り組んでいるのかについても深く聞くことができた。
勤務体系(そもそもYouTuberに"勤務"という概念があるのか? )や収益の話、変化の激しいYouTube業界でどのような生存戦略を練っているのかなど赤裸々に話してもらった。
■中学の同級生で結成した動画クリエイター集団
山田井 : 「だいにぐるーぷ」はどのように結成されたのでしょうか?
岩田 : 僕らは全員、中学時代からの同級生なんです。ただ、高校卒業後は進路もばらばらで。このまま離れてしまうのもな……と思って、僕から「YouTubeやってみよう」と皆に声をかけました。
山田井 : それに対して皆さんの反応は?
岩田 : 「いいよ」って感じで。反対もなかったですね。……なあ、加藤?
加藤 : オレは乗り気じゃなかったですよ!(笑)
もともと、オレはここ(スタジオ)に住んでいたんですけど、当時ゴミ屋敷だったんですよ。そこに岩田がやってきて、急に掃除を始めたんです。それで掃除し終わってから「YouTubeやろうぜ」って言われて。掃除してもらった手前、断れなくて泣く泣く……。
岩田 : ピザまでおごりましたからね! 人生で始めて友だちを接待した夜でした(笑)。
加藤:まんまとやられましたよ(笑)。
山田井 : それまで皆さんは個人で動画制作や投稿をしていなかったのですか?
岩田 : まったくなかったですね。全員、そういうのにはわりと疎いほうで。
飯野 : 僕はたまにしょうもない動画を作ったりしていたので、YouTubeに抵抗はなかったです。面白そうだなって。
■「1週間シリーズ」のヒットで大きく方向転換
山田井 : 現在の登録者は76万人超です。今のような状況を想像していましたか?
土井谷 : まったく想像していなかったです!
岩田 : 当時のYouTubeは今よりも素人の投稿が多くて、自分たちもいけるんじゃないかっていう思いはありました。最初は仕事というよりも趣味で、とりあえず1年やってみようか、くらいの気持ちでしたけど。
山田井 : 最初の頃と現在では動画のスタイルも大きく違います。最初はYouTuberらしい企画動画が多かった印象ですが、心霊スポットや樹海村で過ごすドキュメンタリー系の「1週間シリーズ」で大きく路線が変わりました。
土井谷 : 最初の頃は、よくある感じのYouTuberのイメージでやっていこうとしていたんですよ。
岩田 : 1年ちょっとやってきたところで、それまでとまったく別のスタイルの動画がヒットして、今後どうするのかを考えました。日常系のスタイルに戻るのか、1週間シリーズのような路線を進むのか、皆で議論したうえで大規模な企画やリッチなコンテンツを極めていこうという方向性に決まったんです。
■最初の1年半はアルバイトをしながら無給で動画を作っていた
山田井 : 最初は趣味だったということですが、現在はYouTubeが仕事になっているわけですよね。
土井谷 : そうですね。最初は皆、バイトしながら活動していました。
岩田 : 今はもう加藤以外はバイトしていないです。
山田井 : それくらいの収益が出るようになっていると。
岩田 : ぎりぎりバイトしなくてもいいかなくらいの収益は出ていますね。まあ、最初にヒットした「1週間心霊スポット生活」の収益はぜんぶ次の企画に使ってしまったので実入りはなかったんですけど……。
山田井 : だいにぐるーぷのように複数人でYouTubeを始める場合、友だちやカップルであることが多いと思いますが、一方で喧嘩別れして空中分裂してしまうリスクもあります。
岩田 : たしかに友だちと起業すると揉めてトラブルになるなんて話も聞きますね。でも、YouTubeは逆に友だちと始めるほうがいいと僕は思っています。
山田井 : それはどうしてですか?
岩田 : YouTubeはいきなり収益が出るわけじゃなくて、僕らも最初の1年半は無給でやっていたんですよ。それでも続けることができたのは、僕らがもともと友だちだったからです。
初対面で集まってYouTubeチャンネルを作っても、なかなか難しいと思います。最初はいいけど、ちょっとつまずくと関係性にヒビが入ってすぐやめてしまうんじゃないですかね。
山田井 : たしかに収益を目的にして始めたのに1年半も無給というのは辛そうです。別のモチベーションが必要ですね。
岩田 : それが「楽しむ」ってことだと思います。もちろん、収益は活動のモチベーションになるので大事ですけど。
■勤務時間は13~22時、遊びと仕事を行き来するYouTuberライフ
山田井 : 皆さん普段はどんな働き方をされているのでしょうか? 撮影の時期はロケ地でずっと撮影に集中されていると思いますが、それ以外の時期は?
岩田 : だいたい、このスタジオで作業していますね。立場としてはフリーランス的な感じですが、一応スタジオに出勤することにしています。時間は13時から22時で休憩は1時間。かなり夜型です。
山田井 : きっちりされているんですね。
岩田 : 出勤はしてもしなくても良くて、各々が担当している仕事の納期を守ればどこで作業しても構わないんですが、やっぱり皆もいるし、機材もそろっているので、わりとスタジオに来ますね。
山田井 : YouTuberの働き方については、もっと自由気ままなイメージを持っていた方も多そうです。
岩田 : 僕らの場合は友だちですからね。仕事が終わった後はそのままゲームすることもあります。皆で遊びに行ったり旅行したりすることもあるし、遊びと仕事を行き来しているような感覚なんです。
出勤って言うと会社っぽいですけど、中学からのメンツなんでストレスもないんですよ。
須藤 : ゆるキャラを集めてスポーツ大会をやった動画の後は皆で焼き肉を食べに行ったよね。
西尾 : あの撮影は楽しかったな。いつも撮影はめちゃくちゃ大変なんで直帰なんですけど(笑)、あのときは早く撮影が終わって余裕があったから。
山田井 : いいですね。楽しそうです!
岩田 : ただ、やっぱり友だちだからこそ、なあなあになってしまう部分はあるなと思っています。そこはもう少し気をつけようって、昨日皆に言ったばかりです(笑)。
全員 : (笑)
岩田 : 僕らの関係は上司部下じゃなくて友だちだから、何かミスをしても「ごめん」と謝れば通ってしまう部分があります。
だからこそ、仕事仲間なんだという自覚を持って取り組まないといけないし、それでこそ良い仕事ができると思っています。ストレスフリーなのは大事ですが、甘えない環境を作ることも大切なんです。
中学時代からの友人同士で結成され、登録者76万人を超える人気を得ただいにぐるーぷ。インタビュー第1弾となる今回は、現在までの軌跡やYouTuberという仕事への向き合い方について聞いた。
次回は動画制作の具体的な流れや役割、ヒットする動画を生み出す技術について深堀りしていく。