大谷翔平選手、山本由伸選手が出場する「MLBワールドシリーズ」が盛り上がりを見せている。
両選手が出場する今年は全戦をフジテレビが生中継。日ごろメジャーリーグの中継は主にNHK BSが行い、世界一を決めるポストシーズンの試合も同様だが、現在は最後の戦いが地上波で放送されている。
特筆すべきはフジが午前9時8分開始の試合に合わせた生放送だけでなく、夜のゴールデンタイムにもダイジェスト版で再放送していること。しかも今年はプロ野球の日本シリーズと7戦すべての日程が同じであり、夜の再放送によって2つの野球中継が競合している。
野球中継が「朝も夜も」「夜に2つも」という状況に賛否の声が錯綜。野球ファンを中心に好意的な声がある一方で、「やりすぎ」などの批判も少なくない。中には「大谷ハラスメント」などと選手個人を批判する声まであがり始めている。今回の1日2回にわたるワールドシリーズ中継は何を物語り、どんな今後につながっていくのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
「午前の生放送」に明確なニーズ
ワールドシリーズを日本の民放局が放送するのは、ひとえに視聴率獲得が期待できるという理由にほかならない。
実際、ここまでの視聴率は第1戦が個人7.1%・世帯12.7%、第2戦が個人8.1%・世帯13.9%だった(ビデオリサーチ調べ・関東地区、以下同)。NHK BSでも生中継していたことを踏まえると十分な結果と言っていいのではないか。
ちなみにポストシーズンの地上波中継を振り返ると、NHK総合が放送した12日の「ドジャース×パドレス」のナ・リーグ地区シリーズ第5戦は個人11.3%・世帯20.3%。14日のナ・リーグ優勝決定シリーズ第1戦「ドジャース×メッツ」は個人10.3%・世帯18.5%だった。
両試合はNHK BSでの放送がなかった上に、ドジャースの大谷選手と山本選手に加えて、パドレスのダルビッシュ有選手やメッツの千賀滉大選手が出場したため、ワールドシリーズ第1・2戦の視聴率を大幅に上回ったことが推察される。
ワールドシリーズは十分に高視聴率であり、フジテレビとしては上々のスタートと言っていいのではないか。ちょうど第2戦の生放送中にフジテレビを訪れていたのだが、局内の各所から活気が感じられた。中継の高視聴率に加えて、大谷選手や山本選手を扱う報道・情報番組への好影響もあるからだろう。
ワールドシリーズの期間中、午前に放送されている番組は休止となるが、ほぼ情報番組で占められているためか、ここまであまり批判的な声はあがっていない。少なくとも午前の生中継に関しては「ワールドシリーズを見たい」というニーズのほうが勝っているのではないか。