パリ五輪が開幕し、日本人選手の活躍が報じられているほか、X(Twitter)のトレンドにも常に多くのランクインを果たすなど、序盤からネット上は盛り上がりを見せている。
その一方で、前回の東京五輪がコロナ禍で開催されたことや、汚職・不祥事などが報じられたこともあったからか、「興味がなくなった」「見るつもりはない」などのネガティブな声も少なくない。
コロナ禍を経た令和の今、五輪はどんなポジションのコンテンツなのか。また、五輪のテレビ放送にはどんな価値や未来があるのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
スポーツ好きほどTVerを選ぶ必然
連日、日本選手のメダル獲得が続いているほか、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど多くの人気チームスポーツが出場していることもあって、メディアもSNSもパリ五輪が最大の話題となっている。
なかでも目立つのは、「起きててよかった」「これ見てた自分は勝ち組」などと興奮気味のコメント。開催国フランスとの時差は-7時間あるだけに、深夜帯にかかる競技が多く、前回の東京と比べると、見る人の絶対数や視聴率という点で難しいのは当然だろう。「深夜帯だからこそ見ている人のテンションが高く、ネット上の書き込みが活発になりやすい」というメリットがあるくらいで、現実的には「翌日のハイライトで十分」という人が多くなる。
ちなみに次回2028年の開催地はアメリカ・ロサンゼルスで、時差は-16時間、次々回2032年はオーストラリア・ブリズベンで時差は+1時間。エンタメや趣味が多様化する一方であり、東京五輪が終わって“オリンピック熱”がひと段落ついたあとだけに、2大会連続で大きな時差のある開催は興味関心や影響力の低下が懸念される。
そしてパリ五輪におけるトピックスとして大きな意味を持っているのが、TVerの「ほぼ全競技配信」。五輪における民放配信サービスがついに一本化され、しかも地上波では放送されない種目のライブ配信も行われるほか、ハイライトやインタビューなどのサイドコンテンツなども充実している。
つまり、五輪を見たい人に「テレビかTVerか」のわかりやすい2つの選択肢が与えられたことになる。しかし、中継競技の多さ、見る競技を自分で選べる、試合後の情報が充実している、開催時間がかぶった競技などの見逃しにも対応できるなど、スポーツ好きにとってはTVerを選ぶ材料が多い。
また、タイパ重視の人も「10秒進む・戻る」「3段階の再生速度アップ」などの時間調整に加えて、ハイライトで効率よく情報を得られるTVerを選ぶだろう。