NHK・高瀬耕造アナ、日本テレビ・水卜麻美アナ、テレビ朝日・大下容子アナ、TBS・安住紳一郎アナ、テレビ東京・松丸友紀アナ、フジテレビ・伊藤利尋アナ……まさに各局のエースが集結して5月3日のゴールデンタイム特番として放送された『アナテレビ』(NHK)。
そんな顔ぶれのガチンコ感に加えて、「普段あまり語らないアナウンサーがアナウンサーについて語る番組」というコンセプトのレア感が話題を集めていた。メディアもネット上の声もおおむね好評だったのは、各局のエースアナたちが本音で語っていたからだろう。
その彼らのコメントから、令和の今、アナウンサーに求められる資質のようなものが浮かび上がってきた。1953年のテレビ放送開始から70年を数える今、アナウンサーには何が求められているのか。テレビ解説者の木村隆志が探っていく。
■人気者だから番組と自分を守れる
最初のトピックスとなったのは、「アナウンサーとして心がけていること」。
高瀬アナが「正直でいること」と語り、時に制作サイドの意向に背を向けてでも、視聴者に向き合おうとしていることを明かし、ほとんどの民放アナが同調していた。公平公正の象徴的な立ち位置だからこそ、「報じ方が偏ることは避け、逆サイドの意見を拾わなければいけない」という意識が働くのだろう。
しかし、「出演者の1人であるアナウンサーが制作サイドに意見できるか」と言えば、簡単ではないはずだ。それでも制作サイドと視聴者の両方と向き合おうとする姿勢に、彼らが人気者である理由を感じさせられた。
2010年代に入った頃から「テレビ番組を見ながらSNSで発信する」ことが当たり前のようになり、「見ていない人も巻き込んで出演者が批判を浴びる」という流れが常態化。アナウンサーたちは「局を背負って出演している」一方で、「自分の身は自分で守らなければいけない」という状況に直面している。逆に言えば、視聴者を味方につけられたら制作サイドに意見しやすくなって自分の身を守れるだけに、この6人のように人気者になっておくことも重要なのだろう。
次のテーマは、「最近のテレビは自分の意見を出しづらい?」。水卜アナはかつて、「好きな歌手を言うことすら葛藤があった」ことを明かしたほか、ネット上でのバッシングを恐れていることも語っていた。ただ結果的に『スッキリ』で加藤浩次からうながされて「言ってみたら感触がよくて仕事の幅も広がった」ことも明かしている。
これは「好きな人に限らず、愛好しているものや趣味などへの思いを愛情たっぷりに語ることで親近感を与える」というイメージアップの一例だろう。各種の「好きなアナウンサーランキング」で上位に並ぶテレ朝・弘中綾香アナやフリーの有働由美子アナらを見ても、親近感が重要な様子がうかがえる。各局のエースにあたる今回の6人も漏れなく親近感を抱かせるタイプであり、「バラエティでも活躍している」というイメージもあるのではないか。
また、安住アナや水卜アナのように「視聴者と同じ目線で泣けるアナウンサーが支持を集めている」ことも時代の移り変わりを感じさせられる。これはアナウンサーという職業を以前より「雲の上の存在」ではなく、「同じ会社員」として見ている人が多くなったことの表れかもしれない。