9日夜、『ブラタモリ』(NHK総合)のレギュラー放送が予告なく終了し、ネット上には「早すぎる」「聞いてない」「ショック…」「寂しすぎる」などと惜しむ声が次々にあがった。

タモリへの愛情の深さを感じたのはそれだけではない。2月に大学教授による「『高齢男性が若い女性に蘊蓄(うんちく)を垂れる』という『マンスプレイニング』の構図だけは、ずっと気になり続けていました。次は、女性が男性にこんこんと説教する番組をやったらいいと思います。それでバランスが取れます」という投稿が報じられると、すぐにネット上は擁護の反論で埋め尽くされた。

今春はビートたけしが『奇跡体験!アンビリーバボー』(フジテレビ)のストーリーテラーを、関口宏が『サンデーモーニング』(TBS)の総合司会をそれぞれ卒業。さらに、草野仁が長年番組の顔を務めた『世界ふしぎ発見!』(TBS)がレギュラー放送を終了するなど大物司会者に動きがある中、タモリに対する「ロス」の声は際立っている。

なぜタモリは今なお愛され続けるのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • タモリ=「第39回ATP賞テレビグランプリ」受賞式(2023年7月6日)にて

    タモリ=「第39回ATP賞テレビグランプリ」受賞式(2023年7月6日)にて

人柄がにじみ出る“終活”

タモリと言えば、現在も『笑っていいとも!』(フジ)をイメージする人が少なくないだろう。同番組は31年半にわたって放送されたが、2014年春に惜しまれつつも終了。「タモロス」という言葉が飛び交ったものの、視聴者にはまだ『ブラタモリ』とテレビ朝日の『ミュージックステーション』と『タモリ倶楽部』が残っていた。

つまり視聴者には「ほぼ毎日見られなくなったが、金曜・土曜には見られる」という安心感を残しておいたことになる。その後、2023年春に『タモリ倶楽部』が終了し、そして今春に『ブラタモリ』が終了。どちらも「局が打ち切りにした」というムードはないだけに、「段階を経て1つずつ減らしていく」という流れは、タモリの芸能人生における終活のような感がある。

この「段階を経て1つずつ減らしていく」という流れは、加齢や時代の流れに身を任せているのか。それとも「ショックを与えすぎないように」という視聴者への配慮なのか。いずれにしても泰然自若なタモリの人柄がうかがえるところであり、人々から愛される理由の1つとなっている。

実際、『ブラタモリ』は「最後のレギュラー放送」という告知すらなく通常通り放送され、タモリは何のメッセージを発さなかった。一方、NHKは番組ホームページに「今のスタイルでの放送は3月9日の回をもって、いったん区切りをつけることになりました」というコメントを発表。その歯切れの悪いコメントに「レギュラー放送の終了ってそんなに重要なことなの?」「またやれるかもしれないし、やれないかもしれないから、約束しないほうがいいんじゃない?」というタモリらしい良い意味でのローテンションを感じさせられる。

冒頭にあげた「『ブラタモリ』はマンスプレイニングではないか」という指摘に反論が相次いだのは、このようにタモリの人柄がそれとは真逆だからだろう。知識はあるけど、「教えたい」「力を見せたい」「尊敬されたい」という気はさらさらない。そのことを知っている人々が多いから、「黙っていられない」という反論があふれたのではないか。