23日、『第74回NHK紅白歌合戦』で司会を務める有吉弘行が、同番組で藤井フミヤと共演し、「白い雲のように」を歌うことが発表された。同曲は有吉がお笑いコンビ・猿岩石のときにリリースされ、藤井フミヤが作詞、弟・藤井尚之が作曲。有吉は司会に加えて歌手としても出演することになり、ますます注目度が高まっている。

有吉はNHK総合と民放主要5局で冠番組を持つ業界トップのMCでありながら、いまだに毒舌のイメージが強く、さらに音楽番組との接点も少なかったことから、これまでは「さすがに『紅白』司会はないだろう」と見られていたいた。なぜ有吉はこれほど局を超えてテレビの作り手たちから求められ、『紅白』司会にまでのぼり詰めたのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 『第74回NHK紅白歌合戦』の司会を務める有吉弘行

    『第74回NHK紅白歌合戦』の司会を務める有吉弘行

■「飽きた」を避けるポジショニング

まず、現在レギュラー放送されている有吉の出演番組をあげていこう。

『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』(NHK総合)、『有吉ゼミ』『有吉の壁』(日本テレビ)、『マツコ&有吉 かりそめ天国』『有吉クイズ』(テレビ朝日)、『櫻井・有吉THE夜会』『ジロジロ有吉』(TBS)、『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ)、『有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?』『有吉の世界同時中継 ~今、そっちってどうなってますか?~』(テレビ東京)。すべて冠番組であり、加えて『有吉の夏休み』『有吉ダマせたら10万円』『有吉弘行の脱法TV』(フジ)などの冠特番もある。

冠番組だけで主要局を制覇している上に、昼、ゴールデン・プライム、深夜と放送時間帯も幅広く、番組のジャンルとテーマも多彩。間違いなく芸能界の最高峰なのだが、お笑いBIG3のタモリ、ビートたけし、明石家さんまや、その下のダウンタウン、とんねるず、爆笑問題らと比べると、それほど“司会者然”としたところを感じさせない。

少なくとも視聴者にそう感じさせない独自のポジショニングが「出すぎ」「飽きた」などの印象を避け、「起用したいタレント」の理由となっている。例えば、『有吉ゼミ』は企画重視、『有吉の壁』は芸人若手重視、『櫻井・有吉THE夜会』は週替わりのゲスト重視、『有吉弘行くんの正直さんぽ』は訪れる店重視で、有吉自身が前に出て目立つようなシーンは極めて少ない。

このあたりは再ブレイクのきっかけとなった『内村プロデュース』(テレ朝)のMCであり、恩人の内村光良を彷彿させるが、「どんなにMCを務めても有吉自身が消費されない最大の理由」と言っていいだろう。

また、『マツコ&有吉 かりそめ天国』『櫻井・有吉THE夜会』という番組名を見ると、「芸能界の後輩にあたるマツコ・デラックスと櫻井翔の名前を自分よりも前に出す」という配慮を超えたしたたかさも感じさせられる。いい意味で露出しすぎず、企画や出演者を前に出し、自分が出るタイミングでは短い言葉で笑わせるというスタンスが貫かれている。