女優・森川葵の存在感が業界と一般人の両方で急速に高まりつつある。
今夏に帯ドラマの『褒めるひと褒められるひと』(NHK総合)で地上波プライムタイムの初主演を飾ったほか、28歳の誕生日には初の写真集を発売。さらに、11月28日放送の『それって!?実際どうなの課 ゴールデン2時間SP』(中京テレビ制作・日本テレビ系)では、スポーツスタッキングのアジア大会に出場し、3種目で金・銀・銅のメダルを獲得する快挙を見せて話題を集めた。
インスタグラムのフォロワー数を約58万人までジワジワと伸ばしているほか、ネットニュースに取り上げられる機会が増えるなど、インフルエンサーとしての注目度も上がっている。ただ、ネットメディアは金・銀・銅メダルを獲得した『どうなの課』の「ワイルド・スピード森川」というキャラクターをフィーチャーしがちだが、森川が業界内で評価されているのは決してそれだけではない。
では、どんなところが評価されているのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
■撮影現場で確立された確固たる評価
芸能界デビューのきっかけは、『Seventeen』の専属モデルオーディション「ミスセブンティーン」。15歳で三吉彩花らとともにグランプリに選ばれ、専属モデルとして活動しながら、2012年に映画『LOVE ToRain -ラヴトレイン - 』で女優デビューを飾る。女優デビューながら映画初出演・初主演であるところに期待の大きさがうかがえた。
連ドラでは『35歳の高校生』(日テレ)、『ごめんね青春!』(TBS)、『She』(フジテレビ)、『表参道高校合唱部!』(TBS)らの学園ドラマに連続出演。それほど目立つ役柄ではなかったものの、菅田将暉、高杉真宙、野村周平、山崎賢人、広瀬アリス、新川優愛、重岡大毅、小関裕太、白洲迅、黒島結菜、川栄李奈、成田凌、松岡茉優、中条あやみ、清水くるみ、志尊淳、泉澤祐希、芳根京子、萩原みのりら同世代俳優との共演が森川の財産となっていく。
ただ、同じ学園ドラマというジャンルでも深夜帯では真逆の役柄を演じていたのが森川の強み。『監獄学園-プリズンスクール-』(MBS制作・TBS系)では暴力をふるう上に放尿シーンなどがある役を、『賭ケグルイ』(同)ではクラスメイトを家畜のように扱うなどプライドの高い役を演じるなど、思い切りのいい演技を見せていた。
さらに、映画では早くからハードな役のオファーが多く、映画『渇き。』では薬物中毒でピンク髪の女子高生、『チョコリエッタ』では母と愛犬の死から生きる意味を失い「犬になりたい」と思う女子高生、『おんなのこきらい』ではかわいさにこだわり過食症を患う性悪OL、『A.I.love you』ではイケメンシェフとA.I.との三角関係に揺れるヒロインに挑んだ。
出演経験を重ねる積極性に加えて、清純派の美少女からエキセントリックな悪女まで演じ分ける器用さと集中力、丸刈りにしたときに「ラッキー」と言い切ったたくましさなども含め、撮影現場で森川への評価が確立されていった。
しかし、あまりに役の振り幅が大きいほか、作品ごとに髪の長さ・色やメイクなどを変えるからなのか、彼女を見て「森川葵だと気づかない」という人が多かったのも事実。業界内やドラマ・映画好きからの支持を得ながら、その器用さと集中力が裏目に出た不運さもあって、「実力の割にはなかなか知名度が上がらない」というジレンマがあった。