連載コラム『美人すぎる公認会計士がこっそり教える、やわらかマネー知識』では、公認会計士の平林亮子氏が、その豊富な経験を生かした「お金」に関する知識を、分かりやすく説明します。あなたの人生を変えるような、とっておきのマネー知識が得られるかもしれません。


公認会計士になった理由、「費用対効果が高かったから」

公認会計士になって17年が過ぎた今でも、「どうして公認会計士試験を受けようと思ったのですか?」というご質問を良くいただきます。このご質問に対する一番の理由は、「食べていくための資格が欲しかったから」ですが、数ある資格の中で公認会計士を選択した理由は「費用対効果が高かったから」です。

公認会計士試験の勉強をするため、私は大学に通いながら専門学校にも通うといういわゆる「ダブルスクール」を2年と少し続けました。

専門学校の授業料はトータルで約70万円。当時、司法試験のための専門学校に通ったら倍はかかると言われていましたから、非常にリーズナブルでした。

しかも、もしも資格を取れたら、監査法人という公認会計士ばかりがあつまる企業に就職することができ、当時の初任給は年収約500万円。

つまり、公認会計士試験は70万円を払うことで500万円のリターンを得ることができる投資だったのです。

こんなに費用対効果の良い投資がほかにあるでしょうか。

これが、最終的に公認会計士の資格を目指した理由です。

公認会計士試験は、合格できれば資格取得に必要な支出を1年で回収可能

とはいえ、この数値関係だけで費用対効果の良い投資と結論付けるのは、さすがに少し乱暴です。

そもそも専門学校に行かず、一般企業に就職しても給料を得ることはできます。

たとえば、資格がなかった場合には年収300万円を得ることができたとしましょう。そうなると、資格を取ることによって増えた収入は200万円ということになります。

つまり、70万円の支出で200万円のリターンを得ることができる投資だと考える方がいくらか厳密です。

さらに、70万円を支出したからといって、資格が取れるとは限りません。より厳密に考えるためには「期待値」でも使うのが適当でしょうか。

  • 200万円の収入増加が見込める可能性=合格率

と考えると当時の合格率は7%でしたから、

  • 200万円×7%=14万円

がこの投資に期待できるリターンと言えるかも知れません。

……数学や統計の得意な方、くれぐれも、厳密さに欠ける上記の話の展開の粗雑さを指摘しないでおいてくださいね。

要はそんなことを考えて、公認会計士試験に臨むことに決めた、ということを申し上げたいのです。

さて、公認会計士試験は、合格さえできれば資格取得のために必要な支出70万円を1年で回収することができ、おつりが来ます。

「初期投資をどれだけ早く回収できる」かが、ビジネスにおいて重要な視点

このように、何かを得るために最初に必要になるまとまった支出のことを「初期投資」と言いますが、初期投資をどれだけ早く回収し、それを上回る収入をどれだけ得ることができるかは、ビジネスにおいても非常に重要な視点です。

ところが、この計算をせずに投資をしているケースを意外と良く見かけるのです。

  • 「店舗の内装を良くすればお客さんが増えるから」

  • 「あのソフトを導入すれば作業が楽になるから」

といった、なんとなくの投資効果については考えているようなのですが……。

内装が良くなればお客さんは増えるかもしれませんが、本当に、その金額に見合うだけ増えるでしょうか?

作業が楽になることが、ソフトの導入費用を上回るほどのコスト削減につながるでしょうか?

もちろん、公認会計士試験に合格できるかどうかわからないように、未来のことはわかりませんから、投資の効果は最初の段階で確定できるわけではありません。効果のすべてが金銭で測定できるものとも限りません。

でも、だからこそ、

  • 「なんとなく良くなるから」

で済ませてしまっては危険なのです。それは「投資」という言葉で飾り立てた「浪費」であるかもしれないのです。

計算してみた上で、それでも投資をすると判断したのであれば問題はありませんが、

  • 「この投資、何年で回収するつもりだったのですか?」

という質問に言葉を詰まらせる経営者さんがいらっしゃることも事実です。それは投資と言えるでしょうか。

「自分への投資」も、本当に意味があるかを最初に考えてみる

「自分への投資」もしかり。

たしかに、自分への投資をしたことによる効果は金額で計算できないことも多いでしょうから、投資を回収できるかどうかの判断は難しいものです。

でも、どんな効果が得られるのか、それが得られる可能性はどれくらいなのかなど、本当に意味のある投資なのかを最初に考えてみる価値はあると思います。

人生において費用対効果ばかり計算していては味気ないのも確かですが、あまりに考えなかったために、お金も時間も浪費ばかりしていたとしたら、もっと味気ない人生になってしまうかもしれないということです。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。