新型コロナウイルスの世界的な感染拡大から1年が過ぎるなか、日本でもワクチン接種が始まろうとしている。

今後日本では、安全で有効なワクチンが承認されて供給可能となった場合、今月半ば以降から医療従事者に接種が開始されるように準備が進められている。

そして、医療従事者から高齢者、基礎疾患を有する人などの順に接種が進められる予定だが、高齢者でも早くても4月1日以降になるとみられ、一般的な国民の接種までにはまだ時間が掛かる見込みだ。

  • 新型コロナワクチンの接種はいつ?

新型コロナワクチンの接種状況

日本で接種が遅れている理由の一つとして、国内のワクチン産業の弱さ、また韓国や台湾のようにサーズなどを大きく経験していないことから、パンデミックへの備えが十分でなく、国産のワクチン開発の遅れにつながったとも味方もある。しかし、世界では既にワクチンの接種と開発競争が加速化している。

例えば、イスラエルでは1月下旬までに国民の3割にあたる約276万人が接種を完了し、UAEやバーレーンなどでも接種率が高くなっている。一方、被害が深刻な米国で約6%、イギリスで約11%などとなっている。

新型コロナワクチンを巡る競争

世界ではワクチン開発や供給を巡る競争が激しくなっている。新型コロナウイルスの発生源とされる中国は、ワクチンの無償提供などいわゆるワクチン外交を活発化させている。

今年に入って、中国の王毅外相はインドネシアとフィリピン、ミャンマーとブルネイの4ケ国を歴訪し、中国国営製薬会社シノファームのワクチンを提供支援することなどを約束し、2月7日には、カンボジアの首都プノンペンに中国が提供したワクチンの第一陣が到着し、8日にもラオスの首都ビエンチャンに同第一陣が到着した。

セルビアの首都ベオグラードにも1月、シノファームのワクチン100万回分が到着し、同国のブチッチ大統領が中国からの要人がいないにもかかわらず空港でワクチンを出迎える姿があった。他にも、チリやブラジル、エジプトやバーレーン、ヨルダンやUAEなどが中国製ワクチンの導入を決定している。

日本では米国や英国のワクチンが注目されているが、欧米諸国のワクチンと比べると安い値段(無償もある)で手に入る中国製ワクチンは発展途上国にとって魅力的であることは間違いない。各国とも早急に手に入れたいことから、ワクチンを巡る競争では中国の存在力が現在まで目立っている。

中国が積極的なワクチン外交を展開する背景には、各国の対中不信の払拭したい狙いがある。新型コロナウイルスの感染源が武漢とされることから、習政権には同感染拡大によって各国で高まる対中不信を和らげ、自らの影響力を維持・拡大させたい狙いがある。

ワクチン外交をインドも強化

一方、新型コロナウイルスの感染拡大以降、中国との関係が悪化するインドもワクチン外交を強化している。インドの累計感染者数は米国に次いで1,000万人を突破しているが、インドも国産ワクチンの開発を強化し、今ではバングラデシュやブータン、モルディブなど周辺諸国への無償提供を開始している。

インドの周辺地域では近年中国が影響力を高めようとしていることから、インドはワクチン外交を強化することで中国に対抗する狙いがある。日本国内に中国製やインド製のワクチンが入っていることは今のところないが、世界ではワクチン開発と提供を巡る大国間の競争が激しくなっているのだ。

ワクチン外交という世界では、米国はワクチン開発と提供を進めているが、中国ほど存在感があるとは言えない状況だ。今後もワクチン接種を舞台とした国家間競争がいっそう激しくなりそうだ。