ロシアによるウクライナ侵攻から4ケ月が過ぎるが、それによる経済への影響も大きく広がった。世界的な企業であるマクドナルドやスターバックス、ナイキなどは既にロシアからの完全撤退を発表し、日本企業の間でも撤退や縮小、現状維持など迷走が続いている。
岸田政権は侵攻当初からバイデン政権と同じように率先してロシアへの制裁を強化しているが、日本企業の中には経済を軽視しているのではないかと懐疑的な見方をする経営者もいるかも知れない。特に、ロシア依存が強い企業ほどそういった考えを持つことだろう。
ロシア以上に深刻なチャイナリスク
しかし、世界情勢は流動的に変化し、今後の日本企業へのリスクを考慮すれば、ロシア以上に深刻なリスクをここで紹介しないといけない。ずばり、それはチャイナリスクだ。
チャイナリスクといっても、労務リスクや法務リスク、環境リスクや政治リスク、そして、最近では上海でのロックダウンなどいわゆるゼロコロナ対策など多岐に亘り、企業によって直面するリスクも違う。
また、チャイナリスクは長年言われるイシューで今に始まったことではない。では、なぜ今それを改めて警告しなければならないのか。
その原因は、流動的に変化する大国間の政治関係にある。近年、貿易戦争という形で米中対立が激化してきたが、バイデン政権以降米国と欧州の結束が深まり、大国間関係は欧米VS中国の構図に変化している。
そして、ロシアによるウクライナ侵攻により、欧米VSロシアの構図も先鋭化し、中国ロシアの接近もあり、今日、欧米VS中露の構図が表面化してきているのだ。
そのような中、岸田政権以降、日本はこれまで以上にロシアや中国と距離を置く姿勢を鮮明にし、米国との結束を強化している。要は、欧米VS中露の構図の中で、日本は欧米陣営へ深入りし、欧米日本VS中露のような構図に変化しつつあるのだ。
中国による経済での報復対応
当然ながら、国際政治的な対立構図に介入すればするほど、返ってくるリスクは重い。
例えば、台湾やオーストラリアはこれまで日本より中国と対立的な立ち位置にあったが、中国は台湾に対して台湾産パイナップルの輸入禁止に踏み切り、オーストラリアに対しては豪産ワインや牛肉の輸入停止に踏み切るなど、経済を報復の手段として活用してきた。
そして、日中間においても、2010年9月、尖閣諸島で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突して中国人船長が逮捕されたことをきっかけに、中国は対抗措置として日本向けのレアアースの輸出規制を行った。
2012年の日本政府による尖閣諸島国有化宣言の時には、中国各地で反日デモが拡大し、パナソニックの工場やトヨタの販売店などが放火され、日系のスーパーや百貨店などが破壊や略奪の被害に遭った。
今後、欧米日本VS中露のような構図がより一般的になれば、中国側が日本を政治的に揺さぶるため、再び経済を報復の手段として活用することだろう。
不当拘束や出国拒否などの人権、尖閣諸島周辺をパトロールする海上保安庁の船舶への攻撃など、国際的非難を浴びやすい手段は中国としても最大限避けるだろうが、要は、その分経済や貿易が攻撃手段となる可能性が高く、日本企業としては経営面におけるチャイナリスクを現実の問題をして今のうちから考えておく必要があろう。