2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以降、欧米諸国を中心にロシアへの経済制裁が強化されている。

日本も米国と足並みをそろえる形でロシアへの経済制裁に踏み切り、日ロ経済の悪化は避けられそうにない。岸田政権もそれを覚悟の上で制裁強化に踏み切ったとみられる。

ロシアによる対抗措置

当然のように、ロシアも日本に対して対抗措置の構えで、例えばプーチン大統領は3月9日、ロシアが実効支配する北方領土へ進出する企業に対して20年間の減税など負担を軽減する措置を盛り込む法案に署名した。

プーチン大統領は長年北方領土の経済開発を重視しているが、経済開発をさらに進めるという意思を改めて示すことで日本をけん制する狙いがありそうだ。

回転寿司チェーンに大きな影響

しかし、その影響は既に我々の日常生活にまで及んでいる。1つが日本の水産業界への影響だ。近年、スシローやくら寿司など一皿100円を売りにする回転寿司チェーンの競争が激しいが、回転寿司チェーンの多くはカニやウニなどでロシア産に深く依存している。

今回の件でロシア産水産物の価格が上がっている。日本政府は地域経済に打撃が出る恐れを考慮し、ロシア産のカニやサケなど水産物の禁輸を見送ることを決定したが、今後も予断できない状況が続きそうだ。

また、日本ではノルウェー産サーモンの人気が高いが、欧米とロシアが双方の領空飛行禁止を決定し、現在日本へは迂回ルートを経由しての空輸を余儀なくされており(中央アジア上空を通過するなど普段より飛行時間がプラス2~4時間程度増えている)、運送費がかさみサーモンの価格が大幅に上昇している。

それもあって、回転寿司チェーンの中にはノルウェー産サーモンを提供できない店も出ているという。

国際郵便も制限が

また、国際郵便にも大きな影響が出ている。筆者は2月上旬にフランスの友人に小包を送るため近くの郵便局に行ったが、その時は侵攻前ということで通常通り航空便で輸送でき(費用3,000円)、1週間あまりでフランスの友人から届いたと連絡がきた。

しかし、3月下旬に再度その友人に小包を送ろうとした際、郵便局の職員から現在フランスへ航空便で配達できるのは手紙のみで小包は送れない、送る手段は船になると言われた。

日本とフランスを結ぶフライトでは、例えばエールフランスが4月末までパリ羽田便を停止、成田や関空を結ぶ路線は迂回ルートを余儀なくされており、こういった事情が国際郵便に制限を掛けている状況のようだ。

現在のところ、この問題が落ち着く兆しは見えない。ロシアが歩み寄りの姿勢を見せない限り、国際社会はロシアへの経済制裁を緩めることはないだろう。

経済への影響は短期的に終わるものではなく、中長期的に続く可能性が高いが、それによって我々の日常生活への影響がもっと拡大する恐れがある。今後の動向を注視していく必要があろう。