バルト三国の1つリトアニアが中国への警戒感を強めている。リトアニアの国防省は9月下旬、国内各地で出回っている中国製スマートフォンに検閲機能が内蔵されているとして、国民に対して買わない、もしくは、既に所持していたら処分するよう呼び掛けたのだ。
シャオミ製品への危惧
同国が今回指摘したのは、中国の大手家電メーカー「小米科技(シャオミ)」が販売する5Gスマートフォン「Huawei P40 5G」、「Xiaomi Mi 10T 5G」、「OnePlus 8T 5G」など。
それらのスマートフォンには「Free Tibet(チベットに自由を)」や「democracy movement(民主化運動)」、「Long live Taiwanindependence(台湾独立万歳)」など中国共産党が神経を尖らす言葉を検出、検閲する機能が備え付けられ、利用者がそれら言葉を含むコンテンツをダウンロードしようとすればそれを妨害できるようになっているという。
また、保護された利用者の個人情報などが遠隔操作で外国のサーバーに送信されたことを確認済みだともしている。この件でシャオミは異議を唱える声明を発表しているが、ドイツの連邦情報セキュリティー庁もシャオミ製の携帯電話に対する調査を開始したとみられる。
中国と距離を置くリトアニア
なぜ、リトアニア国防省はこの時期にこういった発表を行ったのか。その背後にはリトアニアの中国離れがある。
リトアニアは2012年に発足した中東欧16ヶ国にギリシャを加えた中国中東欧首脳会議(17+1)に参加してきたが、思ったように経済支援が受けられないことや、ウイグル人権問題や新型コロナを巡る中国の姿勢に懸念を強め、今年になって17+1から離脱した。
そして、リトアニアの姿勢は中国離れに留まらず、台湾接近を加速化させている。リトアニアは8月、首都ヴィリニュスに事実上の大使館になる台湾の名称を冠した代表機関を開設することを発表するだけでなく、6月には台湾へ新型コロナウイルスワクチン2万回分を提供するなど、中国側の反発も一層強まっている。
中国は8月の件で、在中国のリトアニア大使に対して中国を離れるよう要求し、在リトアニアの中国大使を召還することを決定した。リトアニアの中国離れ、台湾接近は今後も続くことだろう。
日本にも広まるシャオミやファーウェイの製品
日本でもシャオミやファーウェイ社の製品は市場に多く流通している。中国製の製品は欧米製よりはるかに安価な値段で手に入ることから、その値段に魅了されて購入する人々も決して少なくない。
しかし、今回のリトアニアのケースのように、他の中国製スマートフォンや電気機器製品にそういった機能が内蔵されている可能性は決して否定できないのが現実だ。
また、リトアニアの中国離れ、欧米と中国との対立が今後さらにエスカレートする恐れがある中では、双方の間で経済的な摩擦(輸出入制限や関税引き上げなどの制裁措置)が深まるだけでなく、各国内で出回っている中国製品を利用した検閲、情報収集といったことがもっと日常的に行われる可能性もある。
今後の米中対立の行方は日常生活を営む我々にとって決して対岸の火事ではない。対立が激化すれば、経済的な領域から我々の生活に何らかの制限が加えられる。それがリトアニアのケースから我々が学ぶべき教訓だろう。