ついにアフガニスタンから米軍が完全に撤退した。依然として、数百人の米国人が現地には残るというが、バイデン大統領は今回の撤退劇を成功と位置付けた。

この件について、撤退のタイミングを批判する声は内外から多く聞かれるが、結果として印象強かったのは、米国の国益を第一に考えるバイデン大統領の想いだった。

  • 日米同盟の関係は変わる?

バイデン大統領とトランプ氏は同じところもある

バイデン大統領は7月、米国最長の戦争となったアフガニスタンでのテロとの戦いで駐留米軍の撤退作業を8月末までに完了させると発表したが、その際の演説では、「アフガンの国家建設はアフガン国民の権利と責任である」、「次世代の米国人をアフガンには送らない」、「米国は中国など新たな脅威に対応する必要がある」、「米軍撤収はもっと早く実施されるべきだった」などと米国の国益を第一に考える発言が相次いだ。

今年初めに就任する前から、バイデン大統領はアメリカファーストのトランプ氏を痛烈に批判し、自国第一主義から同盟国や友好国との協力を重視する国際協調主義を内外に強調した。

しかし、対中国への厳しい姿勢においては両者のスタンスはほぼ変わらず、バイデン大統領は欧州や日本などの同盟国と協力することで中国に対抗する姿勢を強調している。

バイデン大統領は中国に言及する際、「中国に競争では負けない」、「中国の脅威から米国の国益を守る」と指摘し、正にバイデン流のアメリカファーストがそこにはある。それは、今回のアフガニスタンからの米軍撤退劇でも如実に現れている。

米軍は日本を去るという憶測

そして、日本人の中にはこのアフガニスタン情勢を日本に置き換えて考える人が決して少なくない。何を連想するかというと、ズバリ、日米同盟においても米国は国益重視から徐々に日本から撤退するのかということだ。

インターネット上では、「アフガニスタン情勢が大変なのに米国は去っていた」、「国益に合わないと思ったら米軍はアフガンにように去っていくのか」という声も上がっていた。

一部の専門家は、アフガニスタン情勢は日本にとっても他人事ではないと懸念を示したが、これについてはそこまで心配する必要はない。アフガニスタンと日本の置かれる地政学的環境はまったく違う。

特に、米中対立がこれまでになく高まり、中国の海洋進出を強く警戒する米国にとって、その最前線となる日本、日米同盟は米国の国益を守る意味で極めて重要となる。

今の米国には、中国との競争で負けないためにも日本が重要だとの決定的な認識があり、米国がアフガニスタン情勢のように日本から撤退することはまずないだろう。だが、それは我々が安心していいこととは別問題である。

日本の国益を守るのは日本人

日本人はどうしても戦争となれば米国が守ってくれると思いがちだが、当然ながら日本の国益を守るのは日本人の役割である。例えば、尖閣諸島で何かしらの有事が発生しても、まずはそこで最前線に立つのは自衛隊であり、米軍が自衛隊より前に行って犠牲になるなどのシナリオは非現実である。

米中の経済力や軍事力が年々拮抗し、2030年~2040年にはそれが逆転すると言われるなか、日本として主体性を持って米国や中国に接していく姿勢が今後さらに求められる。