東京オリンピックが終わった。今回のオリンピックでは日本がホームだったこともあるが、日本はこれまでで最多の金メダルを獲得し、オリンピック前の反五輪の声を打ち消した。
これまでのメダル獲得をみると、柔道や卓球などさまざまな競技で日本人が表彰台に上がったが、テニスや水泳、ゴルフや新体操、バトミントンや短距離などメダル獲得が期待されていた競技では思うような結果が出なかったとも言える。
中国における卓球の重要性
一方、来年2月に北京オリンピックを主催する中国は今回のオリンピックをどう報じたのだろうか。中国は東京オリンピックでは日本を上回り、参加国の中で最多の金メダルを獲得したが、国内でも中国人選手の出場する競技は毎日大々的に報道された。
特に、卓球競技は注目を集めた。中国は卓球大国と言われるが、これまでオリンピックではメダルを独占し、日本などが入る余地はほとんどなかった。しかし、男女混合の決勝で日本が中国を破ったことが報じられると、中国国内のネット上では「まさか負けるとは」「すごいショック」など驚きや悲観的な声があちこちから聞こえた。
その後の卓球競技では順調に中国が勝ち続け、そういった声は収まったが、中国にとってオリンピックの卓球がどれほど重要な競技かを示す出来事だったと言えよう。
中国が東京オリンピックを支持した3つ理由
中国は大会前から東京オリンピックの開催を強く支持していた。それには大きく3つの理由がある。
まず、純粋に東京オリンピックが終われば北京オリンピックへのカウントダウンが自然に始まるので、その勢いのまま来年2月につなげたいという理由だ。北京では既に冬季オリンピックに向けての準備が進み、開催施設などは完成し、市民の間でもオリンピック機運が高まっている。東京オリンピックが終われば、ムードがいっそう高まってくるだろう。
2つ目は、新型コロナウイルスの感染拡大だ。仮に、東京オリンピックが感染拡大により中止になり、来年2月にも世界的な感染が続いていれば、今後は北京オリンピックの開催是非が議論されることになるだろう。習政権は北京五輪の偉大な成功をノルマとしており、開催是非がトピックとなることを避けたい。
よって、コロナ禍の東京オリンピックの成功を強調することで、問題なく北京オリンピックを開催したいはずだ。それが、中国が今回のオリンピックを強く支持してきた狙いでもあろう。
また、欧米諸国と中国との対立も影響している。米国や欧州は春から夏にかけ、香港国家安全維持法やウイグル人権問題などを理由に、北京五輪の開会式や閉会式の際、各国に選手団以外の首脳や政府関係者の参加を見合わせる外交的なボイコットを行うよう呼び掛けた。
今後さらに対立が先鋭化すれば、北京五輪の政治化が進むかも知れない。米ソ冷戦の際、1980年のモスクワオリンピックを米国や日本などがボイコットしたことがあるが、中国はそういったボイコット論を何とか払拭したいはずだ。そのためにも、東京オリンピック支持のように、オリンピックへの真摯な姿勢をIOCや諸外国に示すことで欧米側の動きを打ち消したい狙いがある。
東京オリンピックが終わり、北京オリンピックへのカウントダウンが始まっている。今後の中国とオリンピックを巡る動向から目が離せない。