4月下旬、レストランなどでの食べ残しを禁止する「反食品浪費法」が中国で可決された。今後、中国では外食時に過剰にオーダーしたお客に対して店側が食べ残した分の費用を請求できるようになるだけでなく、店側も大量に注文させた場合には最高で約16万円の罰金が科される。
また、最近中国で流行する大食いの動画や画像の配信も禁止対象となり、違反者には最高で160万円あまりの罰金が科される。
習政権が懸念する食糧問題
中国では、お祝い事の席で食べ切れない量の食事でもてなす独自の慣習があるが、習政権はそれを強く懸念している。習政権が懸念する背景には幾つかの理由がある。
まず、今年に入って長江流域で大規模な水害が発生し、同流域で作られる穀物に大きな被害が出ている。また、米国との関係悪化と貿易摩擦もある。バイデン政権になり欧米と中国との経済、貿易上の対立が激しくなっているが、中国の食糧安全保障上、米国が重要な貿易相手であることに変わりはない。
習政権には、米国との関係がさらに悪化して国内が食糧不足に陥ることへの懸念もある。
日本は世界有数の残飯大国
日中関係は依然として難しいものがあるが、今回の反食品浪費法は我々も是非ともお手本にするべきだろう。テレビでもよく大食い番組が放映されているように、我々日本人はどこにでも食べ物はあると無意識のうちに思い込んでいる。
どこに行っても24時間オープンのコンビニがあり、どこを歩いていても自動販売機があり(筆者はこれまで何十ケ国も訪問しているが、日本ほど自販機がある国はない)、あまり食品ロスの問題はピンと来ない人が多いはずだ。
しかし、日本は世界でも有数の残飯大国なのだ。例えば、国民1人当たりの食品廃棄量において、英国や米国、フランスやドイツ、オランダなどに次いで日本は世界ワースト6位で、アジアでは韓国や中国を上回ってワースト1位なのだ。
しかも、日本は賞味期限に非常に厳格で、実際全く食べられるのに賞味期限が近い、切れたという理由で簡単に破棄されるという大きな問題を抱えている。
食糧問題は今後大きな課題に
一方、5月10日に放送された『ONE MORNING』(TOKYO FM)で紹介されたアンケート調査によると、中国の反食品浪費法についてどう思うかとの問いに対し、やり過ぎではないと答えた人が77%に達し、しかも53%の人が日本でも導入するべきだと答えたという。
近年、日本でも食べ放題の店などでは"取り過ぎ注意"や"過剰な食べ残しはお金を取る"との案内を掲げている店も見かけるが、今後はこういった店が増え、食品ロスへの危機感を世論で高めていくべきだろう。
先月、筆者は昆虫食の記事をここで紹介したが、国連機関が昆虫食の推進を提案するように、食糧問題は今後さらに大きな地球課題となる。今後急激に世界人口が増加するなか、食糧問題は温暖化や気候変動によって深刻化し、食糧を巡る人類、国家間の競争がいっそう激しくなるとの見方も根強い。
日本は資源に乏しく、食糧の多くを海外に依存し、国内でも農業人口が激減している。要は、世界で食糧問題が深刻になれば、日本は大きな影響を受けることになる。
今回の中国の食べ残し禁止法を1つの模範として、今から我々は食品ロス、食糧安全保障の問題を日常生活の中で考えていく必要があろう。