3月に大きなニュースが飛び込んできた。若い世代なら誰もが使っているLINEで、LINE利用者の個人情報やメールのやり取りが中国国内で閲覧できる状態になっているというのだ。
LINEは8,600万人が日常的に使っていると言われ、携帯の電話番号を介さずに家族や友人と連絡を取り合っている人々も多い。LINEは60代以上でも使用する人が増えており、日本人には欠かせない連絡ツールとなっている。その日々のやり取りが中国国内でアクセスできる状態になっていると聞くと、ゾッと身が震える思いをする人も多いことだろう。
LINEは既に中国からアクセスできない状態にし、今後防止策を徹底すると発表したが、ユーザーにとっては信頼が揺らぐ事態となった。
身近に感じる中国からのアクセス
今回のLINEの事態は大きくメディアでも報じられたが、何もこれはLINEに限った話ではない。
近年、中国からのサイバー攻撃やハッキングなどが増えていることは有名な話だが、中には、中国から非通知設定で個人の番号に電話が掛かってきたり、留守電に北京語のメッセージが残されていたり、ヤフーメールやGメールに不正アクセスがあったりすることも珍しくない。
筆者の携帯にも非通知設定で3分近い北京語のメッセージが残されていたこともある。こういう経験をした人も決して少なくないことだろう。
筆者はサイバーセキュリティの専門家ではないので詳しいことは分からないが、おそらく今回のLINEのような形で中国国内から不正にアクセスされ、個人情報が漏洩し、それが上記のようなことの背景にあると思われる。
スパイ天国化する日本
今回のLINEのこともその1つだが、日本は中国やロシアなどからするとスパイ天国と言える。日本には防衛駐在官といって中国やロシアの軍や情報機関のメンバーが滞在し、日本の政治・安全保障上の機密情報を握ろうと関係者たちへ接近することがある。
具体的には、防衛や安全保障のシンポジウムや研究会などに参加し、積極的に名刺交換をしては流暢な日本語で話しかけ、食事会に誘ったり手土産を渡したりするなどして、親しくなっては重要な情報を入手しようとする。こういったことについて日本では全く規制する法律がなく、前回紹介した不動産の安全保障を巡る情勢と似ている。
身近に潜む安全保障リスク
中国では、国家が必要に応じて企業や市民が持つ情報を強制的にコントロールすることも珍しくない。憲法の上に共産党があるのだから驚くことではないかも知れないが、LINEが中国からのアクセスを遮断する前に個人情報が当局に渡っている恐れもある。
米中対立がいっそう激しくなる中では、中国が米国の同盟国である日本のあらゆる情報にアクセスしようとすることは決して不思議ではない。今回はLINEがその対象だったかも知れないが、手段はLINEだけではなく、今後もあらゆる手段を駆使した中国による情報戦が続くことだろう。
今回のLINEの件を受け、日本の行政機関は次々にその使用を停止した。それだけ国や地方自治体も情報が盗まれることを警戒しているということだが、日本人一人ひとりが日常の平和を当然のことと思わず、危機管理意識を高めていくことが今後より重要となる。