外国人による北海道や国境離島などでの不動産購入が問題となるなか、政府はついに、外国人による不動産購入に制限を加える方向で動き出した。

自民党のワーキンググループは2月、原発や自衛隊基地など安全保障上重要な施設付近で外国人による不動産購入の一定の規制を掛ける法案「重要土地等調査法案を承認し、今後国会に提出され可決される見込みとなった。菅首相も3月5日、国会答弁の中で何としても法案を可決したいと意気込みを示した。

  • 外国人による不動産購入の問題

重要土地等調査法案とは

この法案を簡単に説明すると、安全保障上重要な施設の周辺1キロを「注視区域」に、自衛隊司令部や国境離島など特に重要とされる区域を「特別注視区域」に指定し、国は必要に応じて不動産所有者の名前や住所、国籍や使用状況などを調査できる。

そして、所有者や賃貸者に対して使用停止などを要請でき従わない場合には2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を科すことが可能となる。また、特別注視区域では、所有権を変更する際、当事者たちに名前や使用目的などを明記した届け出が義務付けられる。

実効性のない外国人土地法

この法案を聞いて、日本は外国人の不動産購入にまったく規制を掛けてこなかったのか! 遅すぎる! と思う人々も多いことだろう。実際その通りだったと言っていい。

日本では1925年に外国人土地法という法律が施行され、「政令で外国資本や外国人の土地購入を制限できる」と明記されているが、その政令は終戦直後に廃止され、現在まで実効性を失っている。要は、法律はあるものの全く規制されておらず、自由自在に外国人が不動産を購入できる状況だ。

この状況を今の日本を取り巻く安全保障情勢に照らし合わせると、他国からは日本人は平和ボケしていると思われることだろう。バイデン政権になっても米中対立は依然として続いており、中国の海洋覇権や北朝鮮による核ミサイル開発など日本周辺の国際情勢は厳しさを増している。

最近では、2月に中国で海警法が施行され、中国船による武器使用が可能となり、日本固有の領土である尖閣諸島周辺で中国船が日本船に武器を使用することが非常に懸念されている。

高まる安全保障上のリスク

しかし、そのような中でも日常生活の中で我々の危機意識は依然として低いが、安全保障上のリスクは尖閣諸島だけでなく、北海道や長野の森林地帯、また都心にある自衛隊施設や政府関連施設、住宅地に囲まれる米軍施設などより身近なところにも迫っている。

例えば、自衛隊施設や米軍基地付近で通信傍受が行われて機密情報が他国に盗まれたり、原発がドローンによって攻撃されたりすれば、それが与える社会的損害は測り知れない。中国人ハッカーが日本の民間企業へサイバー攻撃を仕掛けるように、土地や住宅というより身近なものからも安全保障について考える必要がある。

米国やオーストラリア、韓国などでは、既に軍事施設周辺の土地利用に制限が加えられ、有事など防衛目的の際には国が私有地を収用することが可能となっている。日本もこれについて真面目に国民が考え、真剣に動き出す時が来た。