テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、業務可視化組織改善ツールを提供するQasee代表取締役CEO村田敦氏が、これからの戦略人事に欠かせない"データを活用した優秀な人材発掘の必要性"について語ります。

  • これからの戦略人事 - データを活用した優秀な人材発掘の必要性

企業が優秀な人材の発掘に苦戦する理由

日本国内における労働者の人口不足により、新規採用の難しさやコスト増を感じる企業は、規模や業種業態を問わず多いのではないでしょうか。そういった状況で、退職者を抑止すべく自社内のエンゲージメント(従業員満足度)に気を配り、自社内から優秀な人材を見つけ出すことに本腰を入れる企業もあります。しかし、従業員のエンゲージメントを高めることも、ましてやその中から優秀な人材を見つけることも容易ではなく、ほとんどの会社が苦戦しているように感じます。

ではなぜ、苦戦するのか。

様々な企業からヒアリングをすると、とあるシンプルな理由が浮かび上がってきました。それは「優秀な社員の評価方法」に問題が潜んでいる、ということです。

まず「優秀な社員の定義」とはなんでしょうか。「仕事がはやい」「専門的なスキルを身につけている」「ミスがない」「前向きである」「時間の使い方がうまい」「成果を出している」「いつも努力している」「成長意欲がある」等々、もちろんこれ以外にも会社ごとにに様々な定義があると思います。

こういった「優秀な社員の定義」を元に、どのように会社が社員を評価しているかというと、多くの企業は定量的に判断すべきところを主観で判断してしまっているのです。

例えば、「成長意欲がある」「前向きである」「いつも努力している」などはある程度主観で判断できるとしても、「仕事がはやい」「専門的なスキルを身につけている」「ミスがない」「時間の使い方がうまい」「成果を出している」といった部分は定量的に判断する必要があります。

ですが、実際のビジネスの現場においては、明確かつ定量的に評価がなされず、マネジメント側の主観で判断をしてしまっているケースが散見されます。

さらに、定量的かつ公平な評価ができそうな「成果」も、その裏側のプロセスが無視されるケースは少なくありません。誰かが成果を出せている一方、日の目を見ない誰かが犠牲になっているということです。このような主観だけの評価、あるいは成果の数字だけを切り取った評価では、健全な組織とは言えないのではないでしょうか。組織全体のエンゲージメントを高め、そのなかから優秀な人材を見つけるためには、主観での評価を可能な限り排除し、数値を元にした定量的な評価に切り替えることが今後はより求められていくはずです。

終身雇用が当たり前ではなくなった昨今、自身の能力をしっかり評価してもらえる企業が従業員にとって魅力的に映ることは当然です。また、企業側にもメリットがあります。定量的なデータを元にした評価を実施することで、これまで気づけなかった逸材が見つかる可能性が格段に上がるでしょう。

こうした適正な評価と、ひとりひとりの能力値を考慮した効果的な業務運営がなされれば、組織全体のパフォーマンスの最大化に繋がっていくのではないでしょうか。