テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、中小ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める高森厚太郎氏が、ミーティングを活性化させる「論点整理」のスキルについて語ります。
CFO8マトリックスで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO、高森厚太郎です。
今回は、前回取り上げた「ミーティングを活性化させる、論点整理スキル」に有効な、「4つの論理思考ツール」について詳細を説明したいと思います。
論理思考のツールで、論理的に考えるスピードと精度が上がる
論理思考のツールとは、複雑な事象を正しく捉えるために、事象を構造化するための型になります。論理思考のツールという型に沿って考えることで、論理的に考えるスピードが上がりますし、正しく考えるための型で考えることから論理思考の精度も上げることができます。代表的な論理思考ツール4つは次の通りです。
1.MECE
事象を整理するために、全体をモレなくダブりなく切り分ける考え方が、「MECE」(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)です。MECEを使うと、重要な点の見落とし(モレ)がないか、あるいは同じことをダブって考えていないかをチェックできます。「論点整理」では基本となる論理思考のツールです。
上の図に示したものの中には、厳密な意味ではMECEでないものもありますが、こだわりすぎる必要はありません。実践性を考慮すれば、8~9割の精度で使用に耐えれば十分(むしろ効果的)なことが多いものです。
2.ロジックツリー
全体をとらえつつ、MECEを意識しながら構成要素に分解していくための思考ツールが、ロジックツリー(下図)です。全体像を網羅的に把握するときに有効です。
ロジックツリーは、主に2つの場面(下図)で使われます。「論点整理」では、議題としてあがった問題の原因追及や解決策を出す際に使うと良いでしょう。
ロジックツリーで考えるメリットとして、以下の3点があげられます。
(1)システマティックに分解できることにより思考や議論のスピードアップが期待できる。
(2)全体像をとらえることを意識づけられる。思考の幅の広がりを担保し、思考や議論での見落としを防ぐことができる。
(3)システマティックな分解であることから、第三者への説明、後での振り返りがしやすい。ナレッジがたまり、再現・再活用しやすくなる。
ロジックツリーは「論点整理」のみならず、仕事で常に格闘することとなる問題解決の局面で幅広く使える本丸のツールになります。ロジックツリーを使いこなして、論点整理や問題解決を効率的に的確に進めていきましょう。
3.マトリックス
MECEの切り口で事象を2軸で図表化したものを、マトリックスと呼びます。マトリックスには、テーブル型とポジショニングマップ型の2つのタイプがあります。
「論点整理」では、ホワイトボードで図を使って議論を整理することが多いと思います。マトリックスの2つのタイプを意識して整理すると、わかりやすく議論が整理でき、とても有用です。
4.フレームワーク
MECEの切り口の中でも、3Cや4P、バリューチェーンなど汎用的によく用いられる切り口は「(ビジネス)フレームワーク」と呼ばれます(下図はビジネスで良く活用されるフレームワークの例)。
フレームワークをうまく用いることで、大きな視点を見失わず、見落としを防ぎながら、効率よく「論点整理」を行えるようになります。
例えば、自社の事業の仕組みを分析し、どこに改善の余地があるか見つけようとすることがミーティングの議題だった時、「バリューチェーン」という事業分析の枠組みを知っていれば、効率は大きくアップします。また、有名なフレームワークで物事をとらえることは、第三者とコミュニケーションする際に、フレームワークについて説明が省けるというメリットもあります。
前回も述べた通り、目に見えない議論の交通整理を、その場の当意即妙でできるというのは、かなりの高等技術です。今回上げた4つの論理思考ツールは、目に見えない議論の交通整理をできるようにする格好のツールです。
ファシリテーターはぜひ4つの論理思考ツールをマスターし、駆使して、論点整理と議論の見える化で、議論の活性化にチャレンジしてください。