中小ベンチャー経営者の「4つの仕事」とは?

テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、中小ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める高森厚太郎氏が、「中小ベンチャー経営者の4つの仕事」について語ります。

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経営者の仕事は4つ。理念・実務・リソース・渉外

数字とロジックで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする、ベンチャーパートナーCFO・高森厚太郎です。

前回の記事「ベンチャーの悩みに答える社外CFO業」について、ふとした疑問をいただきました。

「外部から経営管理に参画って言ってるけど、そんなことできるの? ニーズあるの?」

この疑問に答えるには、クライアントである「中小ベンチャー企業の経営って何なの?」を考える必要があります。

中小ベンチャーの経営者の仕事。私の理解では“4つ”と考えています。1つ目は、経営の「理念」、それをつくること、浸透させること。2つ目は、「実務」を回すこと、監督すること。3つ目は、「リソース」の調達、配分。そして最後に、「渉外」活動。

会社の仕事は、スタート時は経営者1人しかいないので、当然経営者がすべてを回すことになります。会社が大きくなっていく中で、営業なり、開発なり、さまざまなスタッフを雇っていく。経営者がやっていた仕事をどんどんスタッフに任せていくことで、組織は大きくなっていきます。

ただ、上記の4つに関しては、最後までスタッフに任せることができないと考えています。任せてもうまくいかないというか、自らでやらないとガタガタになってしまう。吹けば飛ぶような中小ベンチャー企業はなおさら。

例えば、採用をスタッフに任せても、なかなかいい人は取れないですよね。ブランドや報酬で惹きつけられないのなら、経営者の魅力や熱意で惹きつけないと。逆説的に言えば、この4つをスタッフに任せている、自分がやらないというのは、経営が経営の仕事をしていないということになるのではないでしょうか。

ではここからは、「経営者の4つの仕事」をひとつずつ見ていきましょう。はじめに「1. 経営理念の作成・浸透」。

成長するために、ビジョン・ミッション

企業を経営していくとなると、大それた野望や目標はないにしても、現状ですべて満ち足りているということはなく、大なり小なり何らかの問題、課題があったりするものです。つまり、どんな会社でも何らかの成長を目指していくことになります。

では、どこを目指して成長させていくのか。その目指すところを示すのが、ビジョン・ミッション、いわゆる経営理念というものです(後述の行動基準も経営理念に含めて語られることが多いです)。

ビジョンとは見えるもの、つまり会社の目指すところを示します。3年後の目指すところだったり、5年後の目指すところだったり。

ミッションは果たすべき使命。どうしてそのビジョンを目指すのか、会社のWhyを示すことになります。使命となると、それは理屈で決まる世界ではありません。経営者、いや、創業者が決めるべきもの。誰かと議論して決めるものではありません。ビジョンは成長に応じて変わることがあっても、ミッションは基本的に変わるものではないと言えます。

ビジョンを実現させる、戦略・組織・行動基準

ビジョンの実現に向け、やるべきことをやっていく。その大きな方向性が経営戦略となります。全社レベルの経営戦略に対し、機能別に落としたものが、マーケティング戦略だったり、財務戦略だったりします。

戦略を現実化していくには当然、経営者1人だけでは足りないので組織が作られます。組織は人の集団なので、どうしても人の思考様式、行動様式、思惑、そういったものに会社運営は影響を受けます。明文化されているいないにかかわらず、会社の中でスタンダードとなっている価値観や行動様式が、行動基準、ウェイというべきものになります。

経営理念の作成・浸透は、経営者の仕事

まとめると、企業経営では、ミッションを踏まえたビジョンを実現すべく戦略がつくられ、行動基準に沿いつつ、組織化されます。

これら、ミッション・ビジョン・戦略・行動基準・組織が作成されていなかったり、浸透されていなかったりすると、どうしても組織でやっていることがぶれてしまったり、徹底できなくなってしまいます。成長を阻害してしまうわけですね。

だから、ミッション・ビジョンなど、経営理念を作成し、浸透させていく必要があるわけです。そして、それは経営者の仕事なのです。

残りの「経営者の4つの仕事」は、また次回お伝えします。