テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、業務可視化組織改善ツールを提供するQasee代表取締役CEO村田敦氏が、コロナ禍で一層進んだ企業の「働き方改革」の2極化について語ります。
企業のコロナ禍での働き方が2極化してきていることをご存知だろうか。
緊急事態宣言の解除から約5カ月が経過し、ビジネスの現場において中小・大企業ともに、テレワーク勤務や時差出勤勤務など働き方に関する取り組みの成果にはっきりと明暗が分かれてきている。
組織業務改善システムの開発ベンダーとして、多くの経営者やマネジメント層の声を聞いてきた筆者が、ビジネス現場の今を紹介しよう。
働き方の"当たり前"が変化
カオナビHRテクノロジー総研が9月に発表したアンケート結果によると、5月時点では「毎日リモートワーク」もしくは「出社とリモートワークを併用」している企業は35.5%であったのに対し、8月時点では23.7%と、11.8%減少している(出典:カオナビHRテクノロジー総研 対象者20代~60代の自由業を除く有業者9,816人)。
筆者が思うに、10月時点では、より低くなっているものと推察され、これこそ現在の日本のビジネス現場における、大きな課題を露呈していると言えるだろう。
実際、企業のマネジメント層は、従業員の働き方に「疑心暗鬼」の念を抱き始めている。これまで日本の多くの企業では業務管理を、日報や朝礼・終礼、タスク管理ツールなどのアナログな管理方法に頼ってきた。
しかし、これらの報告方法は、全て報告者の伝達能力に情報が依存している。そのため、それを受けるマネジメント層は、その内容の正確性を計り知ることはできず、これまでの経験等、主観や感覚を持ってマネジメントを実施せざるをえない。
また日本では長い間、年功序列や終身雇用が当たり前とされ、残業が美徳とまで言われてきた。働き方においても、日本の企業はメンバーシップ型がほとんどで、世界で注目されているジョブ型に意識が向いている企業が多いとはお世辞にも言えない。
このような、今まで当たり前とされてきた考え方や業務管理方法が、コロナ禍でのテレワーク等働き方変革において、マネジメント層の従業員に対する「疑心暗鬼」という形でのしかかり、対応に苦慮している企業が増えている。
これまでのオフィス業務とは異なり、マネジメント層と従業員とが離れた場所で仕事をすることになるテレワーク。この目の前で働いている姿を確認しづらい点が、マネージャー層の「しっかり仕事しているかな?」とか「さぼってないかな?」という「疑心暗鬼」の負の感情を生んでしまうのだ。そしてこのマイナスな感情こそが、これまでいかにマネジメント層が主観や感覚に頼って業務管理を行ってきたかということを如実に表していると言えよう。
一方、このコロナ禍でうまく対応し、採用を加速し、企業の競争優位性を高めている企業も存在する。マネジメント層の「疑心暗鬼」を生まないために監視管理を徹底しているかというとそうではない。
テクノロジーをうまく駆使し、時代の変化に対応しようとしているか、それともリスクが先行し、対応が後手後手になってしまっているかの違いだろう。
最新のテクノロジーをうまく活用している会社では、緊急事態宣言化の早いタイミンでZoomなどオンラインツールの導入や、テレワーク時の就業規則の見直しを行った。また、業務管理方法や業務コミュニケーションに至るまで意識が働き方全体に向いていたように思う。
しかし、多くの中小企業では、現状の売上減等の対応に追われ、業務プロセス等の働き方の根本に意識が向いていないのが現実だ。
コロナ禍での売上減で目先の対応に追われるのは仕方がない。とはいえ、働く人々の意識がコロナ禍で変わったように、企業側も業務プロセスやこれまでの旧来型のマネジメント方法についても問題意識を持たなければならない。なぜなら、この代償は数カ月先に顕著に表れ、今よりもさらに生産力の高い企業と低い企業の2極化が進んでしまうからだ。
今まさに、このピンチをチャンスと捉え、これまでの旧来型の仕組みやプロセスを見直し生産力を上げ、日本全体の活発な経済活動が行われることを、筆者自身も経営者のひとりとして切に願う。