テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大氏が、「スタートアップが"小さなマーケット"を狙うべき理由」についてお話します。

  • スタートアップが狙うべきマーケットとは?


書評家、ビジネスプロデューサーの徳本昌大です。今日はスタートアップが小さなマーケットを目指すべきだという話を書きます。参考にしたのは、セス・ゴーディンの「THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす」です。

  • 『THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす 』(セス・ゴーディン著、あさ出版)

セス・ゴーディンは世界で最も人気のあるブロガーで、マーケティングにおける第一人者としても知られています。スタートアップは技術力が優れていますが、マーケティングに弱い会社が多いので、セスのメッセージを読んでいただき、まずは小さなマーケットを掘り起こしてください。

マーケティングの5つのステップ

「マーケターは、変化を起こすことでものごとを改善し、変化を起こす存在だ」とセス・ゴーディンは言います。マーケティングとはより良いものをつくるプロセスの共有であり、実は誰にでもできることなのです。 文化が頻繁に変化するように、マーケティング手法も過去のものとは変わっています。以前はTVを活用したマスマーケティングが効果を上げていましたが、いまやマーケティングは共感と貢献に頼っています。

マーケターは常にアイデアが人から人へ広まる手助けを行い、変化を起こしながら、仲間を巻き込んでいく必要があります。消費者の生活をよりよくし、その人が望む自分になることを手伝いましょう。 そのために、セス・ゴーディンは以下の5つのステップを踏むべきだと指摘します。

・第1ステップ
価値のあるものをつくること。それも誰かに伝える価値のあるストーリーを備え、伝える価値のある社会貢献ができるもの。

・第2ステップ
少数の人が恩恵を受け、その人たちが気に入る設計や構築を行うこと。

・第3ステップ
プロダクトやサービスと、ごく小さなグループ・つまりもっとも小さくて成長する市場の夢とマッチするストーリーを語ること。

・第4ステップ
みんなにワクワクしてもらうこと。その結果、情報が広まる。

・第5ステップ
何年間も(定期的に、一貫して、十分に)注目を集め、変化を起こしながら自身を体系化し、導き、築いていくこと。顧客にフォローアップする許可をもらい、自分の考えを教えるために熱狂を起こす。

スタートアップは人に共感を与え、長年語り続けられるストーリーを作るべきです。自分たちのプロダクトやサービスの開発ヒストリー、それを磨く行動や顧客の体験を語るようにしましょう。

マーケターは誰を最初に喜ばすかを考えるべき

マーケターはストーリーを語ることで、消費者を今いる場所から新たな場所へ連れて行けます。大胆にプロダクトを語り、顧客を幸せに。また、他社ができない強みを語り、顧客を味方にできるのです。製品のスペックや性能ではなく、顧客のために役立つストーリー語ることで、顧客の課題解決ができることを示しましょう。

マーケターは変化を起こす。人の感情を別の感情に変化させる。彼らを変化の旅に連れて行き、その旅で、少しずつ、夢見ている自分になれる手助けをするのだ。

大きなマーケットを最初から狙うのはやめた方がよいとセス・ゴーディンは言います。小さな社会に影響を与えたい人たちが挑むべきは、「マスマーケット」ではなく「マイクロマーケット」なのです。

マスマーケットを相手にすると、大勢の人を喜ばせようとして、自分を曲げてしまいます。自分がいなくなれば困る50人、あるいは100人のファンは必ずいるはずです。少数を大切にし、彼らをファンにしたほうがはるかに生産的でしょう。

ファンとのつながりを作ることが成功への最善の道なのです。ファンが積極的にストーリーを語るようになれば、プロダクトは売れ始め、それが世の中に広がります。マーケターが語るストーリーを通じて、顧客が変化を起こすことで、やがてそのプロダクトやサービスを使うことが文化になっていくのです。

つまり、マーケターは世の中に変化を起こし、文化を創造する存在です。まずは、目の前の顧客をファンにすることから始めましょう。

アップルもパタゴニアも自社商品に共感してくれる熱狂的なファンを見つけることで大きな第一歩を踏み出しました。彼らはファンの口コミによって、大きく成長できたのです。

優れたマーケターは、自分が提供する変化を望んでいる人を探して熱狂を起こし、変化を望む人たちどうしをつなぐ。こうして起こった変化こそ、マーケターが求めるものだ

スタートアップは新しもの好きのネオフィリアを相手に、魅力的なストーリーを語り、彼らをファンにすることから始めるべきです。彼らは自分が見つけたプロダクトが良ければ、勝手に口コミをしてくれます。なぜなら、周りの人たちに、自分が見つけた真新しいプロダクトを紹介することが、ネオフィリアの喜びだからです。

時代と共にマーケティングも変わります。膨大な広告予算をかけられないスタートアップは時代にフィットした施策で、小さなマーケットを獲得することから始めましょう。自社のファンになる人は誰かを問いかけることが重要です。

執筆者プロフィール : 徳本昌大

書評ブロガー・ビジネスプロデューサー
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在は、ベンチャー企業の取締役や顧問として活躍中。インバウンド・海外進出支援サービスなどを提供するEwil Japan取締役COO、IoT・システム開発のビズライト・テクノロジー 取締役、みらいチャレンジ ファウンダー、他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。書評家としても活動中。