テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大氏が、成功するために知っておきたい"ビジョナリーがもつ能力"についてお話します。
ビジョナリーの能力とは
書評家・ビジネスプロデューサーの徳本昌大です。「ビジョナリー」と言われる成功者と私たちの脳は何か異なる点があるのでしょうか。
『なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす 」(集英社)の著者エリック・カロニウスは、「ビジョナリーとは普通の人が見落とすものを見つけられる人だ」と指摘します。
彼らには「発見力」「想像力」「直感」「勇気と信念」「共有力」「運が良い」という共通点があります。この6つの要素を取り入れることで、脳のつながりが変わり、より良い結果を得られるようになるのです。脳はトレーニングできると捉え、ビジョナリーの行動を真似することで、成功確率を高められます。
また、ビジョナリーは頭の中で視覚する(想像する)ことで、新しいアイデアを次々に生み出します。そして、それを現実世界で使えるようにするために、自ら経験を繰り返し、アイデアの質を高めていくのです。
インスタントカメラを発明し、スティーブ・ジョブズも尊敬していたと言われるエドウィン・ランドは空想と現実を行き来することが重要だと言います。
いつも最初は空想から始まる。空想するときは、まず完成した状態を頭に思い描くといい。それから空想と現実を行き来しながら、細かい部分を仕上げていく(エドウィン・ランド)
ランドにはポラロイドカメラの完成品が、ジョブズには最初からマッキントッシュの完成品が見えていたのです。
ビジョナリーは、自分の直感を信じ、圧倒的な行動力で、失敗など存在しないかのように、世の中を変えようとします。自らの夢を人々に熱く語り、共感力で周りを巻き込んでいくのです。それだけでなく、彼らは運の力で成功を手に入れていきます。
ジャーナリストの著者は、スティーブ・ジョブズやリチャード・ブランソンなどの取材を通じて、彼らの「脳力」を探り、それを私たちに伝えてくれました。
では、運とは何なのでしょうか? 運が良くなるために、ビジョナリーは何をしているのでしょうか?
ビジョナリーがしていること
多くのビジョナリーは偶然の力をものにし、成功を手に入れています。アンドリュー・カーネギーは、ドイツの鉄鋼業界に革命を起こした新型溶鉱炉の記事を目にしたから、その後鉄鋼王になれたのです。カーネギーホールがあるのも、この記事がスタートラインになっています。
ウォルト・ディズニーがカンザスシティで興したアニメーション制作会社が、倒産せずにそこそこの成功を収め、そのまま中西部にとどまっていたなら、もしかするとディスニーランドは生まれていなかったかもしれません。
時代が過ぎ去り、そのディズニーを首になったジョン・ラセターを、エドウィン・キャットムルがルーカスフィルムに引き入れることで、ピクサーのタネが生まれました。優秀なラセターが来なければ、ディズニーはピクサーとの関係に悩まずに済んだかもしれないのです。
私たちの身に起こることの多くは、スキル、準備の賜物ですが、偶然の力によって、結果が左右されることを忘れてはいけません。様々な偶然に翻弄されながら、それにどう対応するかで、結果が変わります。偶然の力が大きいと知っているビジョナリーは、好機を逃すまいと常に気を配っているのです。
スティーブ・ジョブズは、電子機器を自宅のガレージで開発する父親が多く住むエリアで育ったために、スティーブ・ウォズニアックや優秀な開発者に出会えたのです。自分が欲しい人は、実は自分の近くにいるのです。彼らの才能を見逃さないことも、強運な人が持っている能力なのです。
また、タイミングも幸運の重要な要素になります。最適なタイミングに最適な場所にいることがヒット商品を生み出すためには、必要です。その時が来るまで、ビジョナリーはあきらめません。打席に立つ回数が増えれば、機会が増え、より多くのチャンスを生み出せるようになります。
ジョブズは、アップルを去った後も、様々なチャレンジを続けました。そして、ルーカスフィルムからピクサーをM&Aし、苦闘しながら、ついにはピクサー株をIPOさせることに成功したのです。
当初、ピクサーをハード会社だと誤解し、危うくその資産をマイクロソフトに売るところでしたが、彼は最後の最後にコンピューター・アニメーションの未来に気づきます。本当に大切な価値を見落とさなかったことで、彼は再び資産家に戻り、アップルを強者に変える道を歩み始めたのです。ピクサーとの偶然がビジョナリーを復活させたといえるでしょう。