テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、インドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、コロナ情勢が続くいま求められる「無形資産」の価値について語ります。
無形資産とは
「無形資産」は、いま注目されているキーワードのひとつです。『無形資産が経済を支配する:資本のない資本主義の正体(ジョナサン・ハスケル+スティアン・ウェストレイク著、東洋経済新報社)』という本の中でも、無形資産の重要性について書かれています。
本の中で、無形資産の一例として
・スターバックスの店舗マニュアル
・アップルのデザインとソフトウェア
・コカ・コーラの製法とブランド
・マイクロソフトの研究開発と研修
・グーグルのアルゴリズム
・ウーバーの運転手ネットワーク
などが挙げられています。
企業でいえば、特許や著作権、商標権、企業文化、企業理念、技術、ノウハウ、経営管理プロセス、業務フローなどが無形資産。個人でいえば、家族や友人、人間関係、知識、スキル、健康、愛情、幸福感などが無形資産と言えるでしょう。
一方、「有形資産」とは、家や土地、車、腕時計などの形ある資産のことです。お金という尺度で測りやすい資産なので、数値化しやすい資産とも言えるかもしれませんね。
ウィズコロナ・アフターコロナ時代、私たちの働き方や生き方はどう変わるのか
新型コロナウイルスの世界的な流行により、企業はテレワーク・リモートワークの導入をせざるを得ない状況になりました。予期せぬ形で働き方改革が実現しつつあります。
働き方が変われば、自ずと生き方も大きく変わります。「遠隔で行えば良い業務(生産性や効率化を重視)」と、「直に会ってする仕事(創造性や充実感を重視)」の選別が進むでしょう。
生産性や効率化が重視される業務は、AIやRPA、ロボットによって、やがてはほぼ自動化されていくはずです。これは、「仕事を奪われる」とネガティブに捉えているわけではなく、むしろポジティブに考えています。
AIもRPAもロボットも、しょせんはツールですから、ワードやエクセル、パワーポイント、イラストレーター、ファイナルカットなどの数多くあるソフト同様、使いこなせば良いだけです。
一方で、創造性や充実感が重視される仕事は、今後も残り続ける仕事かもしれません。
AIやRPA、ロボットを使いこなせる人材になるか、創造性や充実感を提供できる人材になるか、どちらも生き方次第ですし、自分に合う働き方を選択すれば良いと思います。仕事に優劣はないですから。
創造性も充実感も、どちらも数値化しにくいものです。総資産額のように数字で表せるものではなりませんが、こちらを充実させる方が、豊かさに直結する気がしますね。そう考えると、有形資産にこだわるお金至上主義やGDP至上主義は時代遅れなのかもしれません。
誠実さや信頼など見えないモノが価値になる
「ニューヨークやシリコンバレーでは、ランチに数千円はかかる。シンガポールやタイも価格が上がっている。それに比べて日本はデフレで……」というのは、私の周囲でよくされる会話です。
日本の物価が相対的に安くなっているのは事実ですし、このままでは今は新興国と呼ばれている国が経済成長して先進国になり、日本が新興国(衰退途上国?)になるのではなかろうかと感じることもあります。
ですが、海外の一部の経済力の差と日本経済の衰退を憂いていても何にもなりませんよね。前述のお金至上主義やGDP至上主義のような、時代遅れで古臭い見方だと思います。
お金という単一の尺度で、人や国、企業に序列をつけて、その結果に一喜一憂しても価値がありません。日本はすでに成長社会を脱し、ポストモダン、成熟社会にシフトしています。時代が違うのに、高度成長時代の尺度で測っても意味がないと思うのです。
今の時代は、功徳を積んで評価資産という無形資産を充実させた方が、結果的に良質な時間やモノを手にしやすいと感じています。
「この人は信頼できる」
「この人と一緒に仕事がしたい」
「この人と時間や空間を共有したい」
重要なのは、相手にそう思ってもらえるかどうか。では、どうすればそんな人になれるのでしょうか?
その答えはシンプルで、目の前の人やことを大切にし、真摯に誠実に対応することだと思います。日本人は本来的にこの精神を持っており、その精神は道徳という言葉で表せるかもしれません。
新型コロナショックで世の中は大変な状況ですが、無責任な正義感でフェイクニュースを拡散したり人や企業を叩いたり、不景気に便乗している投資話の勧誘にそそのかされたりしてないで、真摯に目の前の仕事に集中した方が良いでしょう。
次回以降も、実体験をベースに、起業や副業・複業、海外進出、テレワークなどをテーマに役立つ情報をご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solution(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。