テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が、税理士との上手な付き合い方について解説します。

  • 税理士との上手な付き合い方は?


会社と税理士の双方の思いとは

会社の成長を考えていく中で、税金をいかにコントロールしていくかは重要です。その上で、税理士と上手に付き合っていく必要がありますが、スタートアップの会社では税理士との付き合い方に悩んでいるケースをよく聞きます。税理士が思ったように対応してくれない、本当はもっと相談したいのにコミュニケーションがないと感じている方は多いのではないでしょうか。

よく聞く税理士に対する不満は下記の内容です。

・いつにどれぐらいの税金が発生するのか教えてくれない。
・決算後、申告書が出てくるまで売上や利益の金額が分からなかった。
・決算前に何か対策を行いたかったが、何の連絡もなかった。
・相談にのってもらえない、コミュニケーションがない。

そうそう、その通りと思っている方も多いのではないでしょうか。一方で、税理士側はというと、下記のようなことを思っています。

・報酬はあくまで記帳と税務申告のみの分となっている。
・報酬が低いのに、相談業務まで対応することが出来ない。
・資料が揃っていないので、決算前に数字を出すことが出来ない。
・社長側から連絡がなかったので、相談にのって欲しいという要望はないと思っている。

双方の言い分はさまざまですが、このようになった原因は社長と税理士側で、ミスコミュニケーションが起こっているからと言えます。これは契約当初に、サービスと報酬を明確にせずに報酬の取り決めを行うことが多いため、生じているのだと思います。

そのため、上記のようなミスコミュニケーションを生じさせず気持ちよく業務を行っていく必要があります。ポイントは2つです。

1.社長が税理士に期待していることを伝える。
2.サービス内容と報酬を明確にする。

社長が税理士に何を期待しているのか、しっかりと伝わっていないことは多々あります。コミュニケーションを取り、相談にのって欲しいのであれば、月に一度ミーティングを行い、はっきりと相談にのって欲しいと伝えるべきです。また、決算前に数字を出して欲しいのであれば、不足している資料はすぐに出すので、決算前に数字を出して欲しい、と伝えるべきなのです。

そして、報酬の決定に関しては、月に一度ミーティングを行う分報酬はいくら、またそれ以外にも給与計算までお願いする場合はいくら、帳簿作成以外の内部資料の作成を依頼する場合はいくらと明確にしていきます。

こうすることで依頼する業務と報酬が明確になり、お互いに気持ちよく業務を行っていくことが出来ます。

必要なことは何かを把握し、税理士に依頼しよう

もし社内でほとんどの経理、税金管理が出来ていて、申告を中心に依頼したいので税理士報酬は出来るだけ低くするというのであればそれで依頼すれば良いと思います。反対に、経理から税金管理や相談にものってして欲しいと思うのであれば、報酬も払い、税理士と会う頻度も高くしたほうが良いでしょう。

税理士と上手に付き合い、数字の把握、税金のコントロールをしっかりと行っていくことが会社の強みにもつながっていくと思います。

執筆者プロフィール : 岡野貴幸

ゴージュ株式会社 代表取締役、ゴージュ会計事務所 代表公認会計士
立教大学経済学部卒業。大学在学時に公認会計士試験に合格。大学卒業後、あずさ監査法人国際部に入社。上場企業の法定監査、国際会計基準導入支援業務を経験。実家は埼玉県で3代続く税理士事務所を経営しているが、ゼロから立ち上げ新しい会計事務所の形を作りたいと一念発起し、2014年に独立。岡野公認会計士事務所(現、ゴージュ会計事務所)を設立。同時にコンサルティング会社であるゴージュ株式会社を設立。成長する企業を会計面・資金調達面からサポートしたい想いから、スタートアップを中心にサービスを行っている。クラウドを駆使し徹底した経理の効率化、事業計画の作成、資金調達を得意とする。