テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が、経理を外注するという選択をする際の注意点について解説します。
なぜ外注するのか?
スタートアップでも経理が重要であり、適時に会計情報が作成されている会社が伸びる会社の特徴であると第14回の記事でお伝えしました。それと一見反対のことになりますが、経理を外注する企業が増えています。
経理の外注と聞くと、
・面倒な作業を誰かにやってもらいたい
・経理担当が辞めたのでしょうがなく依頼した
・人を一人雇うより外注したほうがコストが下がる
というどちらかというと、「面倒」「生産性が低い」などマイナス点を補う事項として活用するイメージが強いのではないでしょうか。もちろんこういった側面もあるため、経理を外注する理由になります。
しかし、一方で
・適時に数字を把握する業務フローを確立する
・クラウド会計の機能等、最新のツールを使い効率的に経理を行う
・本部機能を小さくした上で会社を成長させる強い経理体制を作る
というような、経理を面倒なものや軽視している訳ではなく、"重要なものであるからこそ外注して仕組みを構築する"という、積極的な理由から経理を外注する会社が増えています。
理解しておきたい経理の本質
経理の本質は、適時に数字を把握し、経営情報に役立つ情報を提供することにあります。経営の根幹となる点であるため、処理という面では標準化させ、効率化させることが重要です。
一方で作成された経理情報から、分析を行い未来の情報に役立てる、未来の計画の数字を作成するというような経営者が欲しい情報の作成を行っていくことも重要です。
この本質を最初から意識し、会社の経理体制を構築していく際にそのノウハウのある外注先を利用するのは非常に有効となります。
上場をするような優良なスタートアップでも、多くの会社はスタート時点では小規模会社であり、この時点で外注先を利用することはコスト高になるかもしれません。しかし、後の成長を考えれば、最初から強い経理体制を構築することは重要です。
ここで勘違いしてはいけないのは、全て外注すれば勝手に経理体制を構築してくれると思ってしまわないことです。あくまで経理については、会社主体で考えることが重要であり、サポートしてもらうという考えでなければなりません。
次回は経理を外注する際の実際のやり方についてや、経理以外にも人事や総務を外注している企業の例を紹介していきます。
執筆者プロフィール : 岡野貴幸
ゴージュ株式会社 代表取締役、ゴージュ会計事務所 代表公認会計士
立教大学経済学部卒業。大学在学時に公認会計士試験に合格。大学卒業後、あずさ監査法人国際部に入社。上場企業の法定監査、国際会計基準導入支援業務を経験。実家は埼玉県で3代続く税理士事務所を経営しているが、ゼロから立ち上げ新しい会計事務所の形を作りたいと一念発起し、2014年に独立。岡野公認会計士事務所(現、ゴージュ会計事務所)を設立。同時にコンサルティング会社であるゴージュ株式会社を設立。成長する企業を会計面・資金調達面からサポートしたい想いから、スタートアップを中心にサービスを行っている。クラウドを駆使し徹底した経理の効率化、事業計画の作成、資金調達を得意とする。