テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大氏が、「チームに成功をもたらす2つの要素」についてご紹介します。
書評家・ビジネスプロデューサーの徳本昌大です。
ベンチャー・スタートアップの取締役や顧問をしているため、どうすれば、経営者が成功を手に入れられるか?という質問を受けることがあります。そんな時、私は理論物理学者のアルバート=ラズロ・バラバシのアドバイスを伝えるようにしています。
成功のための5つの成功法則
『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』(光文社刊)には、アルバート=ラズロ・バラバシと研究者チームが明らかにした5つの法則が紹介されています。彼らが数年の月日を費やして、人間の功績にまつわる膨大な量のデータを集め、人が成功する仕組みを分析し、明らかにしたものなので、この法則には再現性があると私は考えています。
- パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す。
- パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。
- 過去の成功 x 適応度 = 将来の成功
- チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だ。しかし、功績を認められるのはひとりだけ。 誰の功績かを決めるのはパフォーマンスではない。社会がどう評価するかだ。
- 不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。
今日はこの中から、バランスと多様性について考えてみたいと思います。
著者の同僚で研究者のバラージ・ヴェデレシュは、ジャズのコラボレーションと成功の関係について研究を行いました。ヴェデレシュはジャズの歴史を調べ、1890年代から2010年までに行なわれた、10万回を超えるレコーディング・セッションを分析しました。彼は「アルバムの再販回数」を成功の測定基準に、アルバムづくりに参加した共同制作者の多様性と、成功との直接的な関係を発見しました。
今では音楽においては、共同作業が当たり前になり、ひとつの楽曲に様々な才能を持った人たちが加わっています。ヴェデレシュは、音楽によく似た力学をビデオゲームの開発でも確認しています。画期的な製品を生み出すために、彼らはチームメンバーを頻繁に入れ替えていたのです。音楽やビデオゲームの世界では、約束ごととイノベーションとのバランスを保つことで、ヒット作を生み出していました。
慣れ親しんだ要素がなければ、ユーザーはゲームでうまく遊べません。しかし、目新しさがなければ、ファンはすぐに飽きてしまい、やがて離れていきます。適度な新しさでユーザーを喜ばせ、大ヒットを生み出すために、ゲーム業界では多様なスキルをもった幅広い分野の人材を集めているのです。
チームがうまくいくためには、メンバーの何人かがすでに一緒に働いた経験が必要です。それによって、共通の体験や緊密な関係と多様性の両方を実現します。古いメンバーと新人、信頼できる仲間と初めて参加する顔見知りを混在させ、強いチームを作ることでヒット作が作られるのです。
効果的なチームづくりに必要な2つのこと
チームの多様性だけでは結果を残せないことも明らかになっています。そこに強い絆があることではじめて成果が得られます。リーダーには、多様な才能を掛け合わせ、メンバーがお互いに信頼できるような環境づくりが求められます。リーダーシップがない組織はいくら多様性があっても、ゴールに辿り着くことはできないのです。
著者は様々なチームを調査した結果、効果的なチームづくりのためには2つの要素が欠かせないと指摘します。
- バランスと多様性
- リーダシップ
『現代のようにチームがますます大きく、距離的に広がりのあるものになった時代に、チームサイエンスは、最大の成果をあげるための的確な助言を与えてくれる。すなわち「リーダーを信頼して、そのまわりに専門的で多様な支援体制を築く」ことだ。
ビジョナリーのリーダーがいなくとも、チームは仕事をこなせるかもしれない。だが、画期的なイノベーションを生み出し、プロジェクトが永遠の名声を残すことは難しい。 だが、リーダーの存在だけでは充分ではない。あるいはプロジェクトに多様な考えや経験や視点を持ち込む、適切な協力者の組み合わせだけでも充分ではない。その両方が必要なのだ』(アルバート=ラズロ・バラバシ『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』から引用)
集団的知性はチームプレイヤーの上に成り立ちます。彼らはビジョナリーとともに働き、意見を戦わせ、相手の考えに耳を傾け、多様な視点を提起します。
チームを集めてうまく運営することは、プロジェクトの成否を分ける難しい科学なのです。言い換えれば、チームを成功に導くためには"ベストプレイヤー"がいても充分ではありません。意外なことに、オールスターチームではプロジェクトはすぐに頓挫します。組織で重要なことは、メンバーが互いに信頼関係を築き、みなが平等に貢献できる機会をメンバーに与えることなのです。卓越したリーダーが必要な理由がここにあります。
『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』
著者:アルバート=ラズロ・バラバシ
出版社:光文社