テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、IT企業経営者としての経験も持つ弁護士・中野秀俊氏が「起業で成功する人の共通点」について語ります。
私は弁護士になる前に、システム開発会社を起業していました。一時期はうまくいっていたのですが、あえなく失敗。そこから司法試験に合格し、今では主にITスタートアップ・ベンチャー企業向けの法律事務所の代表をしています。また、それと同時に、社労士事務所、コンサルティング会社、シンガポール法人の代表もしています。
そんな中、たくさんの経営者や起業家の方にお会いするのですが、うまくいっている方には共通点があるように思います。
今回は、私が感じた「うまくいっている経営者・起業家の共通点」をご紹介します。
仲間の集め方が上手
「誰をバスに乗せるか」――これは、ビジネス書である『ビジョナリー・カンパニー2 - 飛躍の法則』(日経BP)の中に出てくる有名な言葉です。うまくいっている経営者ほど、“誰とやるか”を非常に重視しています。
私の顧問先企業の例では、CEOは将来のビジョン創りと対外的な交渉、COOは社内の組織を構築、CFOが資金調達と、役割分担ができています。
このように、誰と一緒にやるかを十分考えるというのは、役割分担を明確にするうえでも非常に大事です。私も弁護士として独立するときは、深く考えず友人と一緒に共同で法律事務所を起ち上げましたが、失敗に終わった経験があります……。
自分の足りないところをカバーできる人と一緒にやれれば理想的ですし、経営もうまくいく例が多いです。
分からないことを、人に聞ける
起業しようという方は、能力もある方が多いと思います。しかし、1人の能力というのは限界がありますし、自分の経験にも限度があります。
起業でうまくいっている人は、自分の分からないことを認め、分からないことがあれば、人に聞く、頼ることができる人が多いです。
起業・経営は、悩みどころの連続です。今までに経験したことのない問題にもよくぶつかります。例えば、法律の分野はその典型でしょう。また、社内にCFO的な存在がおらず、資金調達などの方法が分からないので事業にドライブがかからない、といったこともよく耳にします。
「社内にいないなら、外部に相談してみよう」といった具合に、外部の専門家を積極的に活用するなど、その道の専門家に相談し自社に取り入れるといった姿勢が必要なのかもしれません。
「なんか、危なそう……」という感覚を持つ
私は、弁護士として、多くの起業家や経営者の方とお会いしています。その中で、相談を受けた時点ですでに「なんで、この取引をする前にもっと早く相談してくれなかったんですか……」と思う場合が多々あります。
法律問題に限らず、起業・経営には、踏み越えてはならない一線みたいなものがあると思います。その一線を越えるか越えないかは、「この取引、なんか違和感がある」という感覚を持てるかどうかだと思います。
「なんか、ヤバそう」という感覚を持てれば、そこでとどまることができ、専門家の人に話を聞くこともできるでしょう。反対に、そこで一線を越えてしまうと、後から取り返しがつかないことになってしまう可能性もあります。
その感覚を養うにはどうすればいいのでしょうか。例えば、自分が知らない取引や事柄に関しては「即決しない」ことを徹底している起業家の方もいます。また、知り合いの経営者の方は、ネットや本(短時間で読める薄い本)などで、経営に必要な情報を事前に入れておくという方もいらっしゃいました。
以上が、私が感じた「起業・経営で成功している人の共通点」です。次回は、「起業で失敗する典型的なケース」をお話します。
執筆者プロフィール : 中野秀俊
グローウィル国際法律事務所 代表弁護士、グローウィル社会保険労務士事務所 代表社労士、みらいチャレンジ株式会社 代表取締役、SAMURAI INNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。
早稲田大学政治経済学部を卒業。大学時代、システム開発・ウェブサービス事業を起業するも、取引先との契約上のトラブルが原因で事業を閉じることに。そこから一念発起し、弁護士を目指して司法試験を受験。司法試験に合格し、自身のIT企業経営者としての経験を活かし、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動。特に、AI・IOT・Fintechなどの最先端法務については、専門的に対応できる日本有数の法律事務所となっている。