異国エジプトで、ダブルワークならぬトリプルワークをこなす"おろぐちともこ"が、仕事や現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃないエジプトをお楽しみください。(毎週火曜更新予定)

【行き先は…?】

エジプト南部には、"アスワンハイダム"などで知られる「アスワン」という町があります。このエリアには古代エジプトの時代からヌビア人が多く住んでいて、彼らが操るファルーカという白い帆かけ舟が有名です。アスワンはナイル川の上流域に当たるため、水がとても澄んでいて美しく、ファルーカでのクルージングを楽しむのにぴったりなのです。

同居人と一緒にアスワンへ旅行へ行ったときも、ナイル川をファルーカに乗って楽しむことに。目的地は彼女おすすめの「サヘイル」という島。ちょっと遠いのですが、ファルーカでゆっくりと島へ向かうことにしました。

そうと決まればまずは乗る船探しです。川沿いを歩きながら「適当に船頭さんと値段交渉すればいいかな」と思っていたら、ヌビア人のおじいちゃんが「ファルーカはどうだい? 乗らないかい?」と声をかけてきました。

試しに英語とアラビア語でサヘイル島へ行きたい旨を伝え、値段交渉に入ったらびっくりするくらいの安さ。え? 本当にわかってる? 不安になるほど安い値段設定です。しかし、何度確認してもおじいちゃんは「わかっている。わしにまかせろ」と言います。

アスワンのファルーカ。風を受けて走ります

じゃあこのファルーカに乗るか、ということでとりあえず出発したものの、しょっぱなから近くに停泊していたクルーズ船に激突。船の上から見ていたエジプト人、爆笑です。おいおい…大丈夫かな…。

そんな不安は即的中。おじいちゃんは体勢を整えてファルーカを進め始めたのですが、船は行きたい方向とは真逆に突き進んでいきます。どこへ連れて行く気…!?

「そっちじゃない!」「行きたいのはこっち!」と指を指しながら、「サヘイル島」と連呼したら、ようやく理解したおじいちゃん船頭。「サヘイル島は遠いから追加料金じゃ!!」と言いだします。「だから最初から『本当にわかっている!? 大丈夫!?』って再三確認したのに!」と怒りたくなる気持ち、おわかりいただけますでしょうか…?

こうして船上で交渉(説得?)を繰り広げた末に、何とかそのままサヘイル島へ到着することができた私たち。島はもちろんすばらしかったのですが、その感動よりも「おじいちゃん、船頭の仕事からもう引退した方がいいんじゃ…?」という気持ちの方が強い旅となりました。


おろぐちともこ
大学で古代エジプト史を専攻し、2011年よりカイロ在住。日々、エジプト人観察に励む。
現在はWebやエジプト人による日本語雑誌の漫画を執筆したり、デジタルアシスタントをしたりと、国境を越えて活動中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながらぼけっとお茶をすること。生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。