異国エジプトで、ダブルワークならぬトリプルワークをこなす「おろぐちともこ」が、仕事を含む現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃない「エジプト」をご堪能ください。(毎週火曜更新予定)

【気軽に入れられるボディ・ペインティング】
皆さん「ヘンナ」というものを知っているでしょうか?

ヘンナ(ヘナ)とはエジプトやインドなどで古くから用いられてきたハーブの一種で、ボディ・ペインティングや髪染めなどに用いられます。日本でもヘンナ配合の髪染めシャンプーなどが発売されているので、知っている方もいらっしゃるかと思います。

エジプトでは、ヘンナを用いた肌に華やかな模様をペインティングする「ヘンナ・タトゥー」があります。模様の描き方は、ペースト状にしたヘンナを袋に入れ、先端に小さい穴を開けて、ホイップクリームのように絞り出すというもの。皮膚を彫って色を入れるタイプではないので、模様は1週間前後で消えます。そのため、「気軽にできるタトゥー」として楽しんでいる外国人観光客も見かけます。ヘンナ・タトゥーは手に描くのが一般的ですが、花嫁が結婚式前夜に体中に入れることもあるそうです。

ヘンナ・タトゥーは自分で描くこともできますが、エジプトにはそれを生業とする「ヘンナ描き屋さん」人がいます。基本的にその職に就いているのは女性のようで、男性は見たことがありません。私がよく行くカイロのオープンカフェの1つには、ヘンナ描き屋さんが営業に来るお店があり、お姉さんが現地人や観光客の手にヘンナを描いているのを見ることができます。

ヘンナ描き屋さん。すらすらと模様を入れていきます

ヘンナに挑戦するときの注意点は、描き手全員がうまいわけではないということ。「芸術的…!」とうっとりするほどすばらしく描く人もいれば、「正直私より下手じゃない!?」と思う人までいます。

ある日、友人とお茶をしていたときに声を掛けてきたスーダン人のヘンナ描き屋さん。ラッキーなことに、このお姉さんはとても上手な人で、慣れた手つきで繊細な模様をスラスラ描いていきます。私も友人の次に描いてもらうため順番を待っていたら、横からいきなり私の腕をつかむ人が!!

予想外の出来事に固まっているうちに、勝手にヘンナで模様を描いていく知らないおばちゃん…。それが上手だったら問題なかったのですが、仕上がりはお世辞にも「素敵~!」とはいえないクオリティです。その上染液の配合も間違っていたらしく、普通はペースト状なのに黒い水分が出てきて、滲んだ模様の出来上がり。「耳なし芳一」の体に書かれたお経みたいに、ちょっとホラーテイストなヘンナとなりました…。

いずれ消えるとはいえ、こんな模様を約1週間も腕に入れたままだなんて…ううう…。新手のいやがらせかと、激しく落ち込んだのでした。


おろぐちともこ
大学で古代エジプト史を専攻し、2011年よりカイロ在住。日々、エジプト人観察に励む。
現在はWebやエジプト人による日本語雑誌の漫画を執筆したり、デジタルアシスタントをしたりと、国境を越えて活動中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながらぼけっとお茶をすること。生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。